イタチごっこ

ブロワーに落葉の右往左往かな
ブロワーに追はれ落葉の相寄りぬ

第五回目のワクチン日。

みなさんコロナ馴れしたせいだろうか会場には長い列もできず、受付からスムーズに運んであっという間に経過観察の15分も過ぎた。
自宅から10分ほどの距離なので歩いても行けるが、万一のことが頭にあって車で行くこととした。当然ここも空いていて拍子抜けすることとなった。
会場の公民館、町民ホールが付属する体育館施設ががらんと広くみえる接種者が少なく、スタッフの姿だけが異常に多いというのが第一回目、第二回目の頃とくらべて全くちがうところである。
BA4、5型対応ということだが、この冬はまたその変異体の何たら型であるらしく、ワクチンと変異のイタチごっこのようなものである。弱毒化しているようでもあり当初ほど怖れる必要はないようなので、いつまでこんなことをしているのかとは思うが、やはりもしものことが頭にあるので今回も受けることにしたのだが、さて。
会場の周囲は春の桜が見事だが、桜紅葉も終盤にさしかかって道路やアプローチにはしきりに落葉が降る。インフルも本番のようである。

旧参道

旧かなの路標かたぶき冬ざるる

雨に閉じこめられた一日。

十一月の雨はときに冷たいものがあるが、今年はどういう関係だろうか意外に暖かい雨が多い。
今日も朝の冷え込みがやわらいだせいか、昼間の気温がたいして上がらなくても寒く感じることはなかった。
暖房することなく普段着で過ごせるのはいいが、ここのところ秋の季題ばかり詠んでしまうのも季節感がすこしずれてきていることもあろうか。
信貴山旧参道にある今にも傾きそうな古家の角に、これまた傾いた古い道標がある。曲がりくねりながら徐々に登ってゆく旧道は道幅も狭くてレトロな佇まいはそのままである。その街道を囲むようにある新興住宅地の明るさと比べ、その落差の大きさにかえって旧道が冴え冴えとしてくるような気がするのである。

雨上がり

人肌にふれて綿虫大往生

戯れでつかまえようとしてはいけない。

帽子で取ろうとして起こした風は、人間でいえば風速40メートルくらいの衝撃を受けてしまいそうにか弱い。両手で捕まえれば時速100キロくらいの車でぶつかれたような衝撃が走りそうである。
まして、両手などに受けて人の体温に触れようものならそれはもう火傷するにちがいない。
実際に、つかまえたときにはすでに死んでいた経験がある。
ほんとにはかない生きものである。だから風のある日に目撃することはまずない。
雨上がりの今日、夕方になってはじめて綿虫が浮遊するのを見たが、数は多くなかった。

モンベル恐るべし

重ね着の電池をまとふ中着かな

外で仕事する人たちに人気が根強いとか。

とくにガッテン系の人には必需品であるとも。
首、肩、腰のあたりをバッテリーの熱で温める電熱ベスト、ヒーターベストのことである。
アウターの下に着ればそんなに厚着しなくても動きやすくて快適に過ごせるアイテムだ。
夏は夏で、ベストと体との間をファンが起こした風がめぐり苛酷な夏の作業を緩和することができる。最近は菜園ファンの間でもこれが人気で、風で膨らむので一見暑そうに見えるが意外に涼しいのだという。これも動力源はリチウムバッテリーである。
電池仕掛けだから時間はもって4時間くらいだろうか。真冬ならば予備のバッテリーも持っていかねばならないだろう。
自然とともに暮らしているので暑いときは避け、寒いときは休む私には不要だが、どうしてもという場合は薄いものを重ね着することで耐えられるのも優秀な新素材が増えてきた恩恵であろう。
そういう観点からするとモンベル製品はやはり最強であろうか。デザイン、カラーはもう少し何とかならぬかとは思うが。

抵抗力

あたたかき冬に限りのけふの雨

夕方雨が止む頃になって急に空気が変わったように寒気がさした。

予報通りに寒冷前線の雨が去って、冷えた大気が流れ込んできたのであろう。
十一月に入っても二十度を超える日が続いて、冬という実感はなかったのでこれでようやく冬らしくなってきた。
こんなときに油断すると風邪をひくのだろう。さいわいうたた寝していてぞくっとするので目が覚めたのはさいわいだった。
こう考えると健康なうちは危険を前にすると、体が自然に反応して防御体制を整えてくれるのだと分かる。これが本当に体の抵抗力が弱っていたら、季節の変わり目などにもすぐに体に異変が起きるところである。
それにしてもアレルギーらしい水洟がとまらず鼻が痛くなってきた。

粘膜

往来に誰はばからん大くさめ

この時期のアレルギーは何だろうか。

おもわず出てしまったくしゃみ。
たまたま周りにはだれもいず、作法も何もあったものじゃない。おもいきりのハックションもすぐに吸い込まれて誰のおとがめもなし。
しかし、家に戻ったら今度は水洟。そう言えば日に何遍も鼻をかむので、どうやらこれは飼い猫アレルギーかもしれないと思う。
玄関の柊がそこはかとなく香りだしてきて、いよいよ鼻の粘膜にはとっては刺激が強くなってきて忙しくなったようである。

日常

庭の葱抜きて夕餉の汁たらん

近くに葱などがあればこういうとき便利である。

命ぜられるまま懐中電灯を照らして葱を採りに行く。
昼間摘んできた間引き春菊と合わせれば即席の鍋の具となる。
少々暖かい十一月なので格別鍋が恋しいわけではないが、おあつらえ向きに人参、椎茸、白菜、糸コンの買い置きがある。
いつものように老い二人が向かい合って、たいした話題もないまま鍋をつつく時間が流れてゆく。
終われば誰が言うまでもなく一人が食器の後片付け、洗いに向かえば、もう一人は風呂の湯を張りにゆく。
だいたいは家人が風呂に入っているあいだノートパソコンに向かって今日の一句を考えている。
そして、そのあと風呂から出れば一時間ほどで床に入る。これがいつもの日常である。