薬味の香

冷奴あぶりの山の水甘く

昼の温泉を浴びての豆腐づくし料理。

なかでも、湯上がりの火照りの残る体には冷や奴がしみ通る。
大峯の洞川温泉は名水で知られるが、名水あれば豆腐あり。
関東では雨降(あぶり)山の大山の豆腐が知られていようか。急な階段のつづく参道の両脇に、豆腐料理をくわせる店が軒を連ねている。大山詣りと称して江戸の男たちは遊山に繰り出し、帰途は江ノ島に立ち寄りお楽しみであった。
昔から有名なところの豆腐はみなしっかりした食感である。箸でさっくり割って口に運べば薬味の香りも加わって爽快感で満たされる。げに夏の食物である。

やわらぐ

紫陽花や隣家隔てる垣を越え

紫陽花も盛りは過ぎつつあるか。

いくぶん色に翳りが応じてきたようである。
だが梅雨といえば紫陽花。この時期の代表花として欠かせない。
剪り花にはもうできないが、庭にとどめて眺めるだけで鬱陶しさがやわらぐのである。

不気味

これでもかと七夕雨の無情かな

梅雨の後半というのは雨被害が出るものだが今年の長雨にも困ったものだ。

熱海に悲惨な災害をもたらしたかと思うと、今度は山陰の島根、鳥取方面が豪雨だと。
前線の居座りが異常なくらい長いのも不気味である。いったいいつになったら前線が遙か北へ消えてくれるやら。

南行

鈍色の雲にアーチの夏燕

青々としてきた植田の空高く、燕が弧を描いている。

曇り空だが雨の気配を感じないのかかなりの高さである。ゆったりとした飛翔は給餌の必要がないのかもしれない。つい先日には何羽ものグループでせわしく飛んでいたので親子だったにちがいないが、今日見たのはその子供たちも独り立ちしたのだろうか。
燕は大阪から大和川を遡ってやってくるのを目撃したが、すると帰途はやはり大和川かもしれない。子供たちは一息先にでかけたか。

熱海

冷房のテレビ流れる山津波

悲惨な災害である。

不明者が100名近くにのぼるという前代未聞の土石流災害である。
起点あたりは山林を切り開き大量の盛り土が施されていたということだが、水の処理など開発許可時のチェックなども検証されなければならないだろう。
安否不明者のすみやかな解明が待たれる。

這い寄る

裏見せの初きちかうとなりにけり

庭の桔梗が一輪咲いた。

青紫が初々しい。
一度葉っぱが全部虫に食われたが、息を吹き返したようだ。
ただ残念ながらそっぽを向いている。外側に表を見せているのでこちらからは裏見になる。
梅雨明けはまだまだという感じだが、秋の気配がしずかに這い寄ってきている。

励む

冷えすぎて甘露うすれし西瓜かな

冷えすぎると甘さを感じにくくなるものだ。

西瓜が好例である。
井戸水で適度に冷やす、というか火照りを冷ます程度がちょうどいい具合である。
井戸などないから何でも冷蔵庫だが、5度まで冷やしちまったら甘さどころか美味さまで失ってしまうようで残念である。
畑の西瓜はまだ雌花をつけない。つくとなると早朝に受粉にでかけなければならないので毎日チェックはしているのだが。それにしても雨がよく降って元田んぼであった畑の水も簡単には引かないのが気にかかる。
水はけを少しでもよくするため、しばらくは土作りに励まねばなるまい。