宅配

ピザ届く家の南天咲きにけり

米粒ほどの蕾が開き始めた。

日曜日の団欒を過ごそうというのか、宅配のピザを頼む家がある。
玄関アプローチの南天の花をこぼしながら配達員が玄関に立つ。

常世の国で

山辺の道てふ坂の花蜜柑

蜜柑畑のイメージはどうしても斜面でなければならない。

それも海に面して光りをいっぱい浴びる図だが、どっこい盆地の大和だって蜜柑畑はあるのだ。
奈良だから柿があるのは当たり前で、蜜柑畑とは貴重な存在だ。山辺の道のなかほど、景行天皇陵あたりの斜面に広がっている。
秋にはちゃんと蜜柑狩りさせてくれるし、商業的にも成り立っているのだろう。
柑橘類の歴史をひもとけば、その昔、垂仁天皇の時代、不老不死の薬を求めて常世の国に田道間守をつかわし、持ち帰ったのが非時香菓(ときじくのかくのみ)、すなわち柑橘の実と枝であった。そういうエピソードをふまえて山辺の道に原種に近い苗を育てているという話もある。
蜜柑の起源は大和にあるというわけだ。

水嫌い?

一声のありて斉唱雨蛙
雨蛙いとふ如雨露の雨なりし
曇天に鳴きみ鳴かずみ雨蛙

雨蛙は不意の雨を嫌うようだ。

庭に居着いているのが、ランなどに水をやろうとすると慌てて姿を見せて逃げ出す様がこっけいである。
いかにも雨など水を喜びそうに見えてそうではないのが何とも可笑しい。
複数の雨蛙がひそんでいるようで、一匹が鳴き出すと相呼応して他のやつも鳴き出す。
秋の虫だけではなく、夏の蛙も合唱するとみえる。

色の記憶

幼稚園バス出払うて花石榴

子供たちの声も聞こえない園。

しっかり閉ざされた門内に大きな姫石榴が花をいっぱいつけていた。
まさに緑と朱色の補色対比に目が留まる。
子供たちの記憶にこの素晴らしい色の思い出が刻まれるだろうか。

くなさかを走る

ローカル線縫い刺す県道麦の秋

伊賀盆地のいまは稔りを迎えた麦田と植田が混じって美しい。

周りの山々も緑をいよいよ濃くし、心が安らぐような安心感を覚える。
ふだんならば盆地を抜けるのに15分もあれば十分足りるのだが、工事渋滞で伊賀から甲賀へぬける道をたどった。今はローカル線格に落ちた感ある関西本線の単線の踏切を越える道は麦穂と植田の間を抜ける道でもある。
知らない道を走る不安を全く感じないのは、自然のゆたかなふところに身をゆだねているからかもしれない。
やがて、目の前に第二名神のコンクリートが現れると、気が引き締まると同時に現実にかえったような気がした。

嫌われ者

雨の朝一夜明くれば蛞蝓
行く当てのどこかありそに蛞蝓

たったひと夜でこんなになめくじが湧いてくるなんて。

朝起きたら雨で空気がすっかり湿っていて、今までどこに隠れていたのかと驚くくらいの数がいる。
最近孵ったばかりとみえてどれもみな小さい。
新聞を取りに行こうとして気づかず踏んづけてしまったようで、あしもとにつぶれた形跡がある。
ちょっと気持ち悪い。

大阪の背骨

生駒越え上町台地の夏霞

ブラタモリじゃないが、なるほど上町台地は大阪の背骨をなしている。

これは生駒トンネルをぬけ市街地へ下降してゆく近鉄奈良線の車両から見るとよく分かる。
昨日は南の方のハルカスはじめ都心の高層ビルが熱い太陽に焙られてかすんでいた。いわゆる夏霞である。
中八だが不思議に違和感はない。

今日は春日井のほうで急な法事があり、予約投稿です。