吸着盤

引きはがすやうに椅子引く梅雨湿り

湿度80%超。

猫のトイレの砂も心なしか湿っぽい。
何十年来とつきあってきた古ぼけた食堂の椅子の、まるで吸着盤のように床にぺったり張り付くようになる癖も知り尽くしているが、まずは、上へ持ち上げるようにして引きはがすのがコツだ。

勇み足

蛇口能く水あふれしめ戻り梅雨

明らかに勇み足であろう。

関東が梅雨明けするのなら、近畿だってそれより早く梅雨明け同然だったのだ。
案の定、今週は前線が全国を縦断し、各地で送り梅雨の様相を呈している。
あまりに早い梅雨明けに水の心配をされていた人は多いだろうが、いくらかは緩和されるかもしれない。
散水するにも遠慮気味に控えていた水も、今日は思い切り蛇口を捻ったことであろう。

アイドリングストップ

発車待つバスの冷房ありがたく

今日のキーワードは「冷房」。

もう冷房なしではいられない猛暑だ。
幹事役と言うこともあって、いつもなら車で行くところを私鉄、バスを乗り継いで、わずか500メートルを歩くにも汗しとど。
炎天にバスを待つ間にも汗が流れ落ちる。
昨今はアイドリングストップ励行する会社が多いなかで、始発バスが早めに来てくれたうえ、アイドリングストップもせずにクーラーを効かせてくれたのは会社の配慮かも知れない。運転手の健康もあるから、たとえば気温30度以上なら規定外とかあるのかも。

もうひとつのキーワードは「扇子」だ。
若い人たちは使わないようだが、熟年以上には必須アイテム。あちこちで大活躍してもらった。

同志

やり過ごす軒なき街の夕立かな

久しぶりに夕立らしい夕立に遭った。

だが、新興団地では雨宿りしたくても軒を貸してくれるような家はない。
道路とは門や塀、生け垣でへだてられ、ちょいの間だけ軒先借り受けるというわけにはいかないからだ。
市街地でも土地いっぱいに家を建てたりして、なかなか軒のある家というのは少なくなった。
ひとつの軒で数人がひととき同志でいられる、あの昔ながらの「雨宿り」というものは、もはや死語に近い言葉かも知れない。

それにしても、今日の夕立は短かすぎて、その後いちだんと蒸し暑さがましたようである。

七月

穴ひとつ空いて虫食う茄子かな

茄子が毎日のように収穫できている。

ただ、葉擦れで傷ついたり、虫が食ったりで、店先に並ぶようなきれいな茄子はなかなか難しい。
ましてここ数日は暑さのせいで値が弱ったのかどうか、新しい花をつけないようだ。
秋茄子に切り替えるかどうか、それにはちょっと早いような気もするが、関東の梅雨明けだって異例の早さだ。残念なことだ。

育て苔よ

養殖の型のまちまち囮鮎

釣り人が何人か竿を振る河原に降りてみた。

テントにはだれもおらず、一尾五百円のおとり鮎泳ぐ水槽と銭箱があるだけ。
休憩に上がってきた鮎師に聞くと、ごたぶんにもれず吉野川も昔に比べ鮎が激減だそうだ。尺の鮎がばんばん釣れた話など、同年齢とおぼしき人と昔話の花を咲かせる。
去年などは度重なる大水で苔がさらわれて、散々だったという。
今年は、もうしばらく晴天が続けばいい苔が期待できそうだというが、今日はたいして釣果はあがってないとこぼしていた。

目を留める

向日葵の役場人來てひとの去る

花いっぱい運動推進中。

そういうポスターや標識が町内のあちこちに。
年二回パンジーなどの草花を無償で町民に配るなど町は熱心である。
今の役場の入り口には、鉢植えの向日葵がずらりと並んでいる。
車を停めて庁舎に入ればおのずと目に止まるが、しばらく見ていると誰も気に留めないようにも思える。
暑すぎてか、あるいは切羽詰まった相談事でもあるのか、見事に咲いた花を見る余裕さえもないのか。