二度寝

厠よりもどり初夢忘れけり

夢なんて毎晩のように見るが、ことごとくが朝になると覚えていない。

夢というのはたいていが眠りが浅いときに見るようで、尿意をもよおして目が覚めるときが多い。寒い寒いと震えながら用を足しているうち夢のことなどとうに飛んでいるのである。
やれやれと暖かい蒲団にもどればすぐに二度寝に落ちている。

ながら族

新聞と葉書来ぬ日の初ラヂヲ

休みなく漕ぐ。

エアロバイクが習慣となって3か月くらいたつだろうか。
一日300キロカロリー分以上を目標と決めて、息が上がるペースで毎日漕いでいる。運動不足のせめてもの慰めだが、これもやらないよりはましだろう。
今日は二日。新聞も来なければ、年賀葉書も来ない。たまたまつけたラヂヲで俳句をやっていたので、それを聴きながらひたすら漕ぐ。エアロバイクというのは、当然ながら風も感じなければ鳥の声も聞こえない。道路の凹凸の感触もなければ、アップダウンの楽しさとは無縁の実に単調な「作業」である。
そこで、手足以外に自由なものを使いながら、テレビを見、音楽を聴きなど、「ながら」しながら漕がなければとても30分は保たないのである。
かくして今日も目標をクリアすれば、体もぽかぽかと暖房もしばらく無用のエコ正月になる。

皓々と

あけましておめでとうございます。
今年も奈良から毎日発信してまいります。
どうぞよろしくお願いいたします。

ありがたの峰の峨々たり初明り

東雲がやがて力強い初日に。

思わず両手をあわせて拝む。
初日は素晴らしかったのだが、大峯の山稜は雲に隠れてうかがえない。よく晴れれば、曙光が先端を瞬間に金色に染めて神々しいほどにかがようのだが。

ゆうべ除夜の鐘を聞こうと外に出たら、中天にすばらしく白く輝く月がかかっていた。2日は2018年最初のスーパームーンだとかで、最小の満月に比較して直径が19%も大きく、明るさは30%も明るいとか。「皓々」という言葉がぴったりだ。
力強い初日に先行しての真っ白な月。
今年は天も味方してくれるかな?

サービスに頼る

褻のものを荷にもぐらせて年逝かす

大晦日の渋滞を承知の発送である。

急な事情で帰省できなくなった子供たちにお節を送ると言う。
函のなかをのぞいてみると蜜柑やら、大根やら東京でも買えるものだが、それも親心だろう。
今年一年も家族みんな無事で過ごせた喜びを、ささやかな形にして荷物に託すのだ。

果たして、今日の明日に着くのかと思ったら、大丈夫という。
だから、クロネコヤマトは頼れる。
年末年始の特別手当をたっぷりはずんでくださいね。

今年も下手な俳句にお付き合いいただきありがとうございました。来年も体が言うことをきいて、頭が呆けないかぎり一日一日を精進していきたいと思います。
みなさん、よいお年をお迎えください。

柝を打つ

雨が來て出鼻折らるる夜番かな

昨日は自治会年末恒例の夜回り。

忘年会をかねてすっかり出来上がっているので腰は重いが、ようやく行こうとなって外へ出れば予想外の雨が降りはじめている。予報にもなくみんな驚いたが、間もなく止みそうだと分かっていても、一度萎えた気持ちは再び戻ることはなく、今年は中止となった。
まだ酒は余っている。形だけ一度柝を打ってから、河岸を変えないでの飲み直しとなった。

笑って年越し

年忘一期一会のひと混ぜて

毎日のように忘年会という日々があった。

あそこへ出て、こちらへ顔出して。
同じような面子と何回も同席したりすることもしょっちゅうで、お互いにそれをなんの不思議もなくこなしている。
いっぽうで、忘年会の場が初顔合わせだったりすることもある。
「はじめまして」
「お噂はかねがね」
「どうも、どうも」
てなくらいの挨拶ですぐに溶け合うというのも忘年会ならばこそ。
あれやこれやを笑いで済ませてひと夜楽しく過ごせばそれでよし。
義理の忘年会に出なくてよくなっただけでも、ハッピーな「余生」である。

帽子が似合う人

冬帽の座高の高き男かな
冬帽の黒づくめなる緒形拳
冬帽の影の銀幕よぎりけり
冬帽を脱げば暴るる寝癖髪
退院してからが闘ひ冬帽子

座高の高いひとの後ろの席は迷惑する。

あるいは礼儀正しい人で、威儀を正すように背筋を伸ばしてるのかもしれないが、映画館などでは背もたれにだらしなく凭れていただくほうがむしろ場にふさわしいと思うのだが。
帽子愛用派としては、こういう場合帽子を脱ぐようにこころがけているのだが、なかには帽子を被ったまま平気で座っておられる御仁がおる。室内では男は帽子を脱ぐものとされているが、最近はそれもやかましく言われないようで、それは帽子が紳士のものだけではなく、子供から老人まで、夏だってすっぽりかぶるなどファッションとしても、ふだん着としても広く使われるようになったからでもあろう。

かつて出会った帽子の似合う人として緒形拳をあげる。一流の俳優というのは遠くからオーラを放つもので、新幹線の乗り換え口ですれちがった全身黒づくめの男にただ口をあけて見送るだけだったことがある。
冬帽ではなかったかもしれないが、中折れ帽も黒なら、ジャケットもシャツもズボンも真っ黒。すらっと伸びた長い足に釘付けとなってしまった。同じ俳優で上原謙などもいかにも似合いそうだが、男臭さという点では絶対緒形のほうが魅力的である。
最近の人気俳優で、帽子が似合うと言えばはたして誰なのだろうか。すぐには思いつかない。