適量

雨乞ふは汝のみにあらず雨蛙

夜になっても蛙の声が聞こえてくる。

近くの田圃からのようである。
そのせいだろうか、ここ数日雨のよく降ることと言ったら。梅雨本番というところか。
田植えが終わってたっぷりの水が欲しい田圃にとっても、雨は望むところ。
首都の水瓶も雨が欲しいだろうし、出水の被害が出るような雨は困るが、欲しいところに欲しい量だけ降るのが理想だろう。

宗旨替え

二の腕の包みやうなく五月晴
梅雨晴やマーズムーンのランデブー
梅雨晴の月にかかりし大火星

頭上のオゾンホールが消えかかってるのではないのか。

そんなことすら思い浮かぶような日差しの強さである。
一年で最も紫外線の強い時期にはちがいないので、当たり前かも知れないが、それにしても度が過ぎているのではないか。
Tシャツ一枚で過ごせる季節だが、紫外線、赤外線は生地を貫いて肌を焼いているようで、先日などは10分ほど直射日光の下で動かずにいたら、その日の風呂ではタオルが肌にいたかった。

Tシャツは綿でと決めていたが、この分なら合繊でも何でもUV仕様なら良しとしなければならない。
火星が大接近とか。南に月がかかると、火星と並ぶ様子がよく見える。

甘い香り

漬ける気のなき梅の実の落ちゐたる

気がつけば根元にいくつも梅の実が落ちている。

今年はいつもより剪定がうまくいったのか、花もたくさん咲いて、実もいっぱいつけていた。
当初は、もし梅干しとか梅ジュースに使うほどの量が期待できるなら頑張ってみようかなと思っていたが、葉が茂るとともに梅の実が隠れてしまい、すっかりそのことを忘れていたのだった。

五、六個ほどをもいで台所に置いておいたら、二日、三日とたつうちに甘い香りがどんどん増してきて、あらためて梅とは酸っぱいのではなく甘いということを知った。
次はもう少し剪定をうまくすれば、一瓶に足りる程度は採れるかも知れない。

雨の功罪

梅雨深し外装工事さらに伸び
リフォームのネットうたてき梅雨曇

今年はよく降る梅雨に当たっているのだろう。

しかも、降るか晴れるかが割合にはっきりとして、降ったり止んだりのいつもの梅雨空とは少し違うようだ。
今日も朝からの本降りが夕方になってもやまない。
一方の関東では取水制限が始まったそうだが、そんなに降ってないのだろうか。

斜め向かいのお宅の外装工事が始まったのが梅雨入り前で、いまだに足場が外されていない。これも不順な天気のせいかもしれない。

痺れる頭

大潮の礁の沖まで蟹を追ふ
沢蟹のバケツ見せ合ふ川遊び
飼ひたしと蟹見せに来る幼かな
片爪のもげたる蟹を放ちけり
沢蟹の不揃ひなるも鄙の饗

兼題「蟹」。

なかなか難しい。
想像力を目一杯働かせなければ納得できるものは生まれてこない。
嘱目吟詠ならなんとか詠めても、場に居合わさないで「詠む」のは苦手。克服しなきゃね。

長い花期

朝に掃き夕に掃きして花南天
築地塀の瓦に零れ花南天

南天の花期は長いようだ。

六弁の花が開くまでも随分時間をかけるが、花が咲いてから散るまでの時間も長いのだ。
しかも、桜のように一斉に咲いて一斉に散るという感じではなく、ばらばらに咲いてまたばらばらに散ってゆく。
この一週間ほど玄関先に散ったのを毎日のように掃いているが、まるで散るのを惜しむかのようにまだまだたくさんの花弁が枝に残っている。この分では全部散るまでにさらに一週間ほどかかるのではないだろうか。

今年はとくに花を多くつけたせいか、そんな感想をもつにいたった。