小道具に落ちたか

電気屋の銘が入りたる団扇かな

最近は広告で団扇を配る店も少なくなった。

コストの問題もあるだろうが、それよりも団扇自体があまり使われなくなったせいもあるだろう。
ビルや家はエアコンが完備され、最低でも扇風機が一家に何台もある世となれば、扇子は持ち歩き可能で一定の立ち位置というか用途はあるとしても、団扇は祭のアイテムに過ぎなくなった感が強い。

晩夏の空気

香煙の仏間抜けゆく朝涼し

昨日今日と湿度が低いのに救われている。

梅雨明け宣言したばかりというのは、普通朝から強い日がさして肌で猛暑を予感するものだが、どうしたことか。
暦ではなるほど梅雨が明ければ「晩夏」ということになるのだろうか。
多分この朝の涼しさは長くは続かなくて、蒸し蒸しする日はまたやってくるだろうが、しばらくは恵みの涼しさを享受しよう。

仏壇に供えた線香の煙がどんどん流れていく。涼しいのは湿度だけではなく、乾いた風が家を吹きぬけているせいでもあろうか。

一気に夏だ

梅雨明けやパッキン固き立水栓

立水栓の具合が悪い。

どうやらパッキンが固くなったようで、しっかり締まらなくなった。
これから毎日のように散水しなければならない日が続くので、早めの交換が必要なようだ。

みなとみらいの花

総帆を展げ海の日ドック跡

かつての練習船・日本丸が横浜みなとみらいのドック跡に係留されている。

この日本丸は、海の日はもちろん、祝日など年間10日あまり、多くのボランティアに支えられて「総帆展帆」が披露されている。29枚の帆をすべて人力で展げるという危険を伴う作業なので、ボランティアの人たちも厳しい訓練を受けて当日は百人余りが動員されるというからさぞ雄壮なものだろう。

「ハッピーマンデー制度」のおかげらしいが、7月20日がいつの間にか7月の第三月曜日に変わった「海の日」だが、最近なにかときな臭い匂いの漂う世界の海が穏やかで平和なものであることを願う。

疑うことなく

夏草や軍手とはまた不穏なる

雨が数日続き、晴れ間が出てもそれこそ「辱書」という日が続いている。

ほんの数日のばかりに雑草も我が物顔に伸び放題。空き地もすっかり夏草に覆われている。
夏草、雑草とくれば除草に励まねばならないが、鎌を使うにしろ草刈り機をつかうにせよ重宝するというか必須なのが「軍手」である。
この「軍手」、元の名前は「軍用手袋」。平和な時代になっても、省略語ならば忌まわしい戦争のイメージがつきまとわないためだろうか、誰も疑うことなくすっかり市民權を得て生き延びている。

日常を離れる

新宿発江ノ島行のサングラス

海が恋しい季節。

先週伊勢へ行って久しぶりの海に対面できた。
明日からの連休、天気が良ければ江ノ島・鵠沼あたりは海水浴、水族館を楽しむひとに溢れるだろう。
そうなると小田急はかき入れ時、ロマンスカー客のカラフルで華やかな光景が目に浮かぶ。
とくに、サングラスというのはかけた途端に日常から切り離されるような開放感に包まれるのがいい。

日本一からの都会から、日本一の海水浴場へ。都会の喧噪から解放される喜びで全身が満たされるだけでは物足りなくて、大きなサングラスをかけて日常からの自身を解放しているのだ。

鍾乳洞

滴りの奈落の底に続きけり

石筍の間を縫うように奥へ進む。

壁の電灯だけが頼りの階段をどんどん降りてゆくと、急に広い空間に出た。
垂乳根のような石灰の石柱がかしこに垂れて、なお雫がおびただしく落ち、夏だというのに寒いくらいだ。