鴉はほんとに賢いか

カムフラージュ見透かされたる鴉の巣

枝などを加えては目指す巣のある場所に飛んで行く。

たまたま見かけたのは、佐保川堤の桜で、枝を慎重に選ぶとあらぬ方向へ飛んでゆくが、10秒もすると戻ってきて巣へと持って行くのだ。
毎回同じ繰り返しをしているとところを見ると、どうやらダイレクトには運ばず、いったん「方違え」してから目指す場所に向かうらしい。
おそらく番の二羽が同じ行動をとるので、この見立てには間違いがあるまい。

鴉は頭がいいと言われているが、このように簡単に見破られようでは意外に抜けているところもあるらしい。

眼中になし

春昼の古墳の墓と思はれず

のどかな春の日。

こんもり盛り上がった墳丘がむき出しになって、単なる草の丘となってみれば、ハイキングのお弁当を広げたり、ボール遊びに興じたり、段ボールのすべり台となったり。
家族連れ、グループにはかっこうの遊び場である。
古代、ここが豪族の墓であったことなどまるで眼中にないようである。

ボールで遊ぶ

野遊の墳丘転がるボールかな

馬見丘陵公園はチューリップフェア開催中。

県内には遊園地が少ないせいか、週末の天気が多い日は若い家族連れで大変賑わう。
いつもの駐車場は満員札止め。第3、4と回ってようやく確保できた。

幾つもある墳丘にはどれも必ず一組以上は登っていて、弁当を広げたり、子供たちが駆け回ったり。
下から幾度もサッカーボールを蹴り上げては追いかけたり、ビーチボールで親子のバレーボール、等々思い思いの休日を過ごしている。家族の野遊びにはボールがよく似合う。
きっと、それら一つ一つが思い出につながっていくのだろう。

桜を煮詰めた色

ワイパーに拭きむらのあり桜蘂

花が終わろうとしている。

馬見丘陵の桜蘂

葉桜となりつつあるものもあるが、葉まだ芽吹かず蘂だけの桜の美しさに心を打たれた。
淡い桜色の花がいくらか残るなか、その散った花の色を煮詰めたように一段と濃くなった蘂の鮮やかさにだ。
この蘂を何とか句にしようともがいたが、「桜蘂」だけでは季語にならず、したがって主役にはなれないのだ。その蘂を主役にするには、「降る」さまを読むことが求められるのである。
花が終わって葉が出初めるまでの、ほんの短い間の蘂の見事さをどう詠んだらいいんだろう。
そんな答えが出ないうちに時間切れである。

せめて、あの鮮やかな濃桜色を胸の中に思い浮かべながら、「桜蘂積もった」句に仕立ててみた。

オリックスバファローズ頑張れ

暮かぬるドーム球場延長戦

阪神がやはり出てきた。

僕はどちらかと言えば巨人ファンなので、面白いわけがない。
ただでさえ、こちらのマスコミは阪神一辺倒、あの中立をモットーとするNHKでさえ偏向報道するのには辟易してしまう。
同じ関西チームでもオリックスなどは付け足しのようなものである。このチームがもう少し強ければ、オリックス報道が増えて、阪神に割かれる時間も減ろうというものだが。
アニキの引っ張るチームの今年はちょっと違うようだ。

古木の風格

樹脂埋めし洞の古木に蘖ゆる

佐保川堤の桜というのは大変古い歴史があって、幕末に奈良奉行が植えたのが始まりだとされる。

そのうちの数本がまだ健在で、多くの支柱に支えられて堤に覆いかぶさるように咲いているものがある。
なかには、樹脂の修復跡がなまなましい古木もあって、その根元からは若い枝が伸びたり、蘖さえ吹き出している。
その蘖にも、枝に咲くものとなんら遜色ない形や色の花がびっしりついている。
老いてなお蘖を伸ばそうとする生命力。古木の風格、ここにあり。

川筋の影

川筋を足をとめては花雪洞
誓願文鎮魂の文花行灯

佐保川の雪洞およそ150基。

四面に市民から寄せられた絵やメッセージが書かれている。
県内あるいは県外から募集したものだが、桜まつり燈火会の雪洞だ。
ビニールでしっかり囲われ期間中の雨対策も施してある。

吟行は昼間だったので、掲句は想像で作ったもの。
ニュースでは県外からの花見客が多かったようで、昼におとらず賑やかな光景を思い描いてみた。