季語

紫の実もあり鄙の花畑

散歩していると、住宅や畑の一角を花畑としておられるうちが多い。

わずかなスペースが秋桜だの、鶏頭だの、ダリアなど種類もさまざまなら色もまたさまざまである。これは何の花、これは何の実とひとつひとつ確かめるのもまた楽しい。栽培品種が増えたこともあるせいか、名前の分からないものが結構あるものだ。紫の実がびっしりとついた小株立ちの木は「紫式部」にちがいないが。

「花畑」は秋だが、「お花畑」は夏だという。「お」がつくかないかで区別する季語というものの深淵を垣間見る心地がする。季語をぞんざいに扱ってはしないかどうか、あらためて自分に問いかけるのだった。

明日は個人的な俳句会の一泊吟行。こころをさらにしてこの目でしっかり見たものを詠もうと思う。

ジグザグ・ライン

外海を隔つ島にも稲の秋

淡路島を貫く本四連絡道を走らせていると、高度のある部分を走るせいか瀬戸内や大阪湾がよく見える。

須磨から島の北東端に入るとその後は一旦島を横断する形で西側に向かう。そこは、いわゆる「北淡」で海岸線に沿って南へ「サンセットライン」が続く。明石海峡や瀬戸内が思いの外広く見え、名前の通り夕照は素晴らしいものに違いない。
今度は、そこから逆に折り返し東へ横断する形で洲本市へ。そこからまた、西へ向かい「西淡」地方となる。
このように、西に東にジグザグに、遠く近くに大阪湾、瀬戸内を交互に眺められるすばらしいドライブであるが、そのあいだには畦がよく見えないほど実った棚田があったり、鳶が上昇気流をとらえて輪を描いたりする山際をかすめたりする。

わずか30分足らずだが、変化ゆたかな島の景色にいやされる思いがした。

国産

鉢植えの青き実ひとつ檸檬成る

台風対策のため早めに植木鉢を退避させた。

去年植えたレモンの苗木に今年いくつか実がついたが、収穫までに無事残ったのはわずかひとつ。やや黄味がさしてきたようだが、退避ついでに手でもいでみた。おそらく今夜の食卓にのるだろうが、輸入物と違って自然栽培のものはそのまま丸かじりしても酸っぱくないのが嬉しい。

「レモンは酸っぱい」という固定概念があるのは、安いからだと言うので昔から未成熟なものを収穫して長い時間をかけて寝かせている輸入物に頼っていたからだと思う。
少々値段は高くても、レモンは国産に限る。たとえ形や色つやが悪くてもだ。

秋の潮

海峡の風を捉えて秋の鳶

入舟の遅々と進まず秋の潮

船足を押しとどめたり秋の潮

海峡に留まる船なし秋の潮

鳴門海峡

潮にもまれた鯛を食おうと明石、鳴門大橋を渡った。

15年ものあいだどこへ行くにも足として頑張ってくれたスカGターボを下取りに、燃費のよい大衆車に買い換えることになったので、愛車への感謝をこめて思い出づくりしようということになり、今まで行ったことのない県の一つ、徳島の鳴門までの日帰りドライブとなった。
猫ちゃんたちがいなければもっと遠出ができるのだが、それでも天然鯛の刺身定食はさすがにうまく片道150キロ程度でも十分満足できる旅であった。

旅先でうまいものを食うには地元の人がよく行く店に限る。今日も道行く人に尋ねて魚のうまい店を教えてもらった。あとはナビで確かめるわけだけど、こういう検索は15年も前のナビよりスマホのグーグルマップで調べたほうがよっぽど早い。「鳴門 あらし」と地名と店名を検索しただけで瞬時に候補を見つけてくれるのはさすがだ。

鯛とともに今日の旅で印象に残ったのが淡路には鳶が多いことだった。高速道の先々で鳶が群れで上昇気流にのって舞い上がっていたりする光景は初めて見るものだった。淡路SAや鳴門海峡の展望台に立っていても、海峡をぬける風をうまくとらえて頭のうえをゆったり弧を描いているのを見ると心が和むものだ。

また、鳴門とくれば渦潮だが、観潮船に乗ってみる時間がなくとも展望台からの眺めで大阪湾側に大きく流れる引き潮であることが十分知れるし、それに小さな釣り船が引き潮に逆らって瀬戸内海に入ろうとするもその歩みがあまりに遅いので潮の強さを目の当たりにすることもできた。(写真を拡大して見ると潮の流れがよく分かります)

生食できる

団栗の転がる果てに片寄する

お祭りのあった八幡さんの裏手は団栗が降るほど落ちる。

かなりの急坂なのでどんどん転がってゆくが、一様に山側に吹きたまるように片寄せられていくのが面白い。
昔、団栗をくうと「どもる」とか「おしになる」(いずれも差別用語で使ってはならないとされているが)と言われたものだが、この歳になって初めて団栗にはアク抜きしないで食えるものがあることを知った。そう言えば、昨今里に出没する熊が多いが、餌となる団栗が山で不作だから降りてくるんだとかよく聞くようになった。熊だってアク抜きしないで食える団栗のあることはいいことに違いないが、きっと生食できるものとそうでないものを見分ける能力があるんだろうな。

土地勘

周辺を交通麻痺にダリア園

もう盛りは過ぎたかもしれないが、馬見丘陵のダリア園は見事だ。

シーズンの土曜、日曜などは「花のフェスティバル」を開催していることもあって大勢のひとが押し寄せ、うっかり近所を通ろうものなら駐車場待ちの車が周辺の道路を塞いで渋滞にはまってしまう。
土地勘の一種だろうが、公道を走るうえでこうしたノウハウといったものは、慣れない土地ゆえにゼロから積み上げることになり、短時間ではなかなか身につきそうもない。

山車を曳く

山車を曳く坂の多きや秋祭

坂を曳く山車の歩みや秋祭

龍田大社秋祭り

収穫が一段落し、各地で秋の例大祭が行われる頃。

近所では八幡さんから太鼓台の練りが朝から町中を練っている。また一駅隣にある龍田大社では各地区から太鼓台が引き出され、坂道の多い町を登ったり下ったりしながら曳いてゆく。時折小雨が降る中、久しぶりに一眼カメラを持ちだしてみた。
太鼓台
山車を廻す
山車は地区の特徴があって、なかには「布団太鼓」というユニークなものもある。どの山車にもいなせな格好をさせた小さな子供に曳かせたり、山車のうえから子供がマイクで囃しているのもある。若者が多い山車、ベテランが多い山車。それぞれ地区の特徴がよく出てようだ。
太鼓台の山車

我々のような新住民にとって当事者になるというのは難しい行事だが、こうやって見物しているだけで華やかな気分になるものだ。