蝉はまだか

濡れタヲル肩に乗つたる暑さかな

雨が来るのが湿気で分かる日だった。

夕方までは50数パーセント台の湿度で、30度を軽く超える気温で暑くはあったが家の中にいるかぎりはむしろ爽やかな風に恵まれていた。
夕方になって日陰ってきたので収穫に出かけたが、案の定雨がぽちぽちと当たる頃にはもう湿気が体にまとわりついて蒸し暑くてたまらない。昔ながらに冷たいタオルで体を拭き、上半身裸のまま冷房、扇風機に当たる。30分ほどしてようやく人心地ついたのであるが、そう言えば今年はまだ蝉の声を聞いてないことに気づいた。
いつもの夏なら朝からクマゼミがやかましいほど聞こえるのだが、聞こえるのは鶯ばかり。今年は蝉が少ないのだろうか。それともまだ暑さが足りないと言っているのだろうか。
いれば煩くてたまらないのだが、いないとこれもまた寂しいものである。

固い風

ノベルティ団扇はプラの骨にして

あれこれ整理していたら団扇が出てきた。

かつては一家に何本もあって、風を送るだけでなく虫を追いやったり、叩いて喜んだり、さまざまな使い方をしたものだが、扇風機、エアコンの普及とともに一気に姿を消してしまった。
不要品の中から姿を現したプラ骨の団扇は、おそらくそうした家庭内の使用を想定したものでなく、野外の何かのイベントで配られたものと思われる。さらに、プラ製なのでその場で捨てるわけにもいかず持ち帰ったものであろう。
あおってみたが心なしかプラの風は固いように感じた。

再発不安

太鼓判受けし奥歯に胡瓜食む

昨日は歯科健診の日。

先月からずっと左奥歯で固いものが噛みきれなかったので心配していたが、気がつくといつの間にかそれも解消していた。
で、ちょうど噛む力をテストする予定だったらしく、くつわ型をしたものをおもいきり噛んでくださいと言われそのまま踏ん張ると、なんと標準375のところ642あると出た。
およそ標準の倍ある数値で我ながら驚くやら嬉しいやら。先月ずっと悩んでいたあの心細さはなんだったろうかと思うばかりである。
しかし、油断するとまた再発するかもしれず単純に喜んでばかりはいられない。細心の歯磨き、手入れの継続を忘れてはなるまい。

晩生

合歓咲いて峠いくつも伊賀国

つくづく合歓の花の盆地だと思う。

伊賀の峠はどこもいま合歓の花盛りだ。
翁が象潟で詠んだ、
象潟や雨に西施がねぶの花 芭蕉
が合歓の花の代表句である、合歓の花の描写がいっさいなくて唐突に出てくる花が実景かどうか知らないが、単に「ねぶ」に眠るをかけたかっただけじゃないのかと推測している。奥の細道は相当な部分が創作だから、まんざら外れではないだろう。
また、伊賀で身近であった合歓の花が伏線になっていたとも言えるのではないかとも思える。
ところで、合歓の花の盛りを過ぎる頃に豆を蒔けと古くから言われてきた。
この豆とは大豆のことである。日本人は枝豆が好きだから早生タイプの豆を莢の若いうちに収穫するが、枝豆用は4月ごろ蒔くものである。
短日性が強い丹波の黒豆も7月中旬ごろが植えごろだそうである。これは、晩生。

無農薬

泥浴ぶる妻をいたはり田草取

いまどき珍しい光景かもしれない。

農薬によって昔に比べたら田の雑草を取る苦労がかなり緩和されていると聞いたが、ここ無農薬で頑張っている田では一回目の田草取りが行われていた。
二株ほどを束ねた苗もその三倍ほどに増えて(これを分けつという)、まだしばらくは増え続け、五六倍ほどになったらいよいよ出穂の時期を迎える。背はまだ苗の頃と変わらないがこれから一気に背が伸びて植田から青田に変化するときでもある。
機械が使えるようになったので昔のように一日中腰を曲げる必要もなくなったが、それでも苗の間の泥に足を取られながらくまなく歩くので大変な作業に違いない。
二回目は果たしていつ頃になるのだろうか。

火も亦涼し

炎天を来て住職の背の正し

一足早い盆供養。

昨年副住職から住職になられてますますご多忙になられたのであろう。
例年お願いしている盆供養が新盆よりさらに10日も早い日程となった。
いつも思うことだが、この方はいつお出でになっても汗ひとつ見せず、常に涼やかな佇まいでおられる。
毎年冷たい飲み水を差し上げるのだが、いっさい口にされない。何軒も参られるので控え目にされているのであろうが、やはりお山で厳しい修業をされてきたたまものであろうか。
凡人にはとうてい真似できることではない。

手口

熟れたれば烏うかがふトマトかな

各区画で被害が出始めた。

初日は胡瓜、二日目はトマト、そして吾がトウモロコシ。
手口からすると、どうやら子供の烏のように見える。成鳥は熟れたものだけ鮮やかに盗み食いするが、此度はそれほど甘くもない未熟なものに手当たり次第手を付けているようである。

烏の侵入口は天敵がいないことが第一条件で、通路に近い部分が真っ先に狙われる。そこで、昨日中に応急措置を施したので、今日雨の間を縫って検分にいくとどうやら今のところ被害は広がってないように思える。
この前線が離れたらもう少しまともな対策を考えねばならない。