爽快転じて苦行

爽やかや籾殻一袋抱き余す

一袋20キロくらいの重さになるだろうか。

長さ1メートルちょっと、直径40センチくらいのビニール袋。
この期間だけ営業しているJAの乾燥施設で籾殻をもらってきた。
籾殻なんてあの風袋からして軽いものだと高をくくっていたら大変な目にあった。
昼間は感じなかったが、夜になって床で寝返り打つにも腰が痛い。
合計四袋。これを車から菜園までひとつひとつ移動するのに、それぞれ途中一回の休憩が必要になるほどである。
車に積んだときには新しい籾殻の香りに包まれて気分よかったのだが、これを長駆運ぶ段になると苦行以外何ものでもない苦痛とあいなった。

婚約

爽やかな菊のお家の慶事かな

いろいろあったが、ともかく初心を貫いたことを喜びたい。

NYでの暮らしがお二人の心の安寧につながるように祈りたい。

剝落隠しようなく

バス降りて一ㇳ日の旅の鰯雲
瓶口に牧のミルクの爽やかや
変哲のなきコスモスの寺なりし
コスモスの花の名借りて露の寺

今日のまほろば吟行はコスモス寺の般若寺へ。

平城京の鬼門を守る寺で、例の重衡の南都焼き打ちにあったことでも知られ、鎌倉時代の再建を経て今日に至るが、さしもの古刹もいくばくかの剝落は隠しようがないようである。
それを補うべくと言うことであろうが、境内にコスモスを育てて参拝客を呼ぼうということだが、寺のあちこちのほころびに心なしかあはれを催す。
気分転換は寺の裏、というか寧楽坂の街中にある小さな牧場を見学して味の濃い牛乳をいただいたこと。

天突く神杉

爽やかや金銀胴の鈴振って

室生の龍穴神社の鈴が珍しい。

金銀銅の三種あるのだ。
ためしに鈴の緖を振ってみると、どれもそれぞれ違う音を奏でて目を瞠る。
カメラが不調で紹介できないのが残念だが、それぞれ直径10センチちょっとくらいか。
拝殿のまわりをあらためて振り返ると、天を突くような樹齢数百年の杉がおびただしい。空気もしっとりとして周りよりさらに涼しい。

次はパラリンピック

凱旋のメダル掲げて爽やかに

オリンピックが終わった。

帰国した選手の会見が開かれているが、当然メダルをとった選手たちの表情は明るい。
なかには祖国を10代の頃から離れて孤独なトレーニングを積んだ選手が、思いもかけず銀メダルに輝いたことには感銘を覚える。
自国の甘やかされた環境ではなく、世界に成長のチャンスを求めるチャレンジ精神は賞賛に値するし、このような事例をみるにつけ経済大国だからと言って大選手団を派遣しがちな姿勢には違和感を覚えてしまうのだ。

次はパラリンピック。不屈の闘魂を見せてもらおう。

山岳道路を漕ぎ登る

爽やかに漕ぎ登りたるゴールかな
爽やかにゴールをめざすペダルかな

関西のヒルクライマーの聖地だそうである。

大台ヶ原ヒルクライム。2001年に村おこしのためにと始めた競技が大人気で、定員800名の予約がすぐに埋まるくらい。
上北山村の道の駅を出発して大台ヶ原ビジターセンターまで標高差1,240m、距離28kmを登る苛酷なレース。
車でも4,50分くらいかかりそうな狭くて険しい道をわずか1時間ちょっとで到達するというのだから、柔な自転車こぎにはとても無理。完全な上級者コースである。
帰途、コースに沿って降りてみたが、今まで通ったことがないくらいのワイドな山道。舗装はされているが、1車線分しかない狭い道、対向車がきたら下りの車は100メートルくらいはバックしなければならない。そのうえ、山側に側溝が切られているので、ハンドル操作を誤ったら車は動かなくなる。自転車族に辛いのはパラパラと落石の跡があって、うっかり乗り上げたら転倒というリスクもある。

この日も多くのヒルクライマーたちがゴールを目指して漕いでいるのを何度も追い越したが、ゴールで休んでいると彼らもすぐに到着してくる。何人かと言葉を交わしたが、2時間以上かけて登ってきたという人が多い。レベルとしてはレースにはとても無理だという。それでも、もちろん、ゴールに達した顔はどれも爽やかであった。

サラブレッドの余生

競走馬余生の馬場の秋うらら
競走馬終の住処の秋高し
ギャロップもしてみせ手綱爽やかに
大鋸屑を替へて厩舎の爽やかに
馬銜解かれ鹿毛は厩舎へ秋深し
冷ややかに乗り手見切りし牝馬かな
桜紅葉かつ散るダムのビューホテル

榛原句会の今月は吟行だ。

場所は名張も過ぎて青山高原手前の乗馬倶楽部。
第一線のレースを引退したサラブレッドばかり20頭以上はいようかという立派な倶楽部である。
ここの馬は生涯死ぬまで乗馬用現役を務めるとか。競走馬としてはあまり結果を残せなかったが、気性に問題なさそうなものが選ばれているのだという。最高齢で27歳。平均年齢16,7歳。人間で言えば4を掛けて、我らと大差ないご老体であるが、さすがサラブレッドにしてケアも行き届き、贅肉もなく均整の取れたボディに我らは似るべくもない。

この倶楽部、目に見える句材はと言えば青い秋空、名も知らぬ木の黄葉くらいしかない。
乗馬のレッスン、調教、厩舎の手入れや蹄鉄装蹄の様子など約一時間程度しか取れず青蓮寺湖を見下ろす句会場へと向かうのだが、句帖は真っ白のまま。会場で頭を抱え込んだが、何とか六句が滑り込みセーフで間に合った。
上手い下手は置いといて出句したものの、今日のように季語の斡旋すら及びもつかないときは句友の句が一番の薬になる。
こんな句が好きだ。

すぐ前に馬の顔ある秋日和