歳時記より

名水の他になしとて摂待す
百選の水がせめての門茶かな
手甲のままに門茶を受けにけり

今日も歳時記から。

ホトトギス歳時記によると「供養のため、仏家で門前に湯茶の用意をし、寺巡りの人および往来の人に振る舞うこと。門茶ともいう。陰暦七月初旬から二十四日ごろまで行われたものであるが、今ではほとんど見かけなくなった。湯茶の外に、塵紙や草鞋などの摂待もあり、剃刀摂待といって月代を剃る摂待もあったという。」
四国遍路の接待というのは有名だが、それとの関係はよく分からないが、かつての摂待の精神が今の遍路をもてなす摂待につながっているのかもしれない。

山深い寺あるいは集落で、めぼしい産物もないところではせめてもの百選に指定された名水が唯一の摂待として振る舞われている光景を想像してみた。

氣配

大根蒔く日和に適ふ氣配かな

大根というのは冬の季語。

同じく、「大根洗ふ」「大根漬ける」「大根引」「大根干す」も冬でゆたかな風情を添える季節の顔だ。一方、ときがたち茎だつと「大根の花」で春である。では、その大根の種をいつ蒔くかと言えば秋なのである。
もちろん春蒔き大根もあるが、大根は冬と決まっているので「大根蒔く」は初秋なのである。

歳時記によると、二百十日前後に蒔くもので現在の暦では8月20日から27日くらいになるそうである。今は前線が停滞して近畿・北陸・中部などでは大変な豪雨をもたらしているが、あと1週間もすれば蒔き時がやってくる。朝夕の氣配もだんだんそんな時候に適ってくればいいのだが。

香良洲特産

砂州の梨腕にずしんと宅配便

待ちかねていた梨が届いた。

伊勢湾の櫛田川河口にできた砂州の町・香良洲特産である。
銘柄は幸水。実は大きく、果汁も多くてたいへん甘い。
上流域は台風11号の随分の雨量で田畑が水没した土地も多いと聞くが、果樹園の被害はたいしたことはなかったのだろうか。

この香良洲の特産は他にもあって大変いい海苔が獲れるというのは案外知られていない。梨も海苔も毎夏、毎冬の義姉からの贈り物だ。

送り火

暮れてより風雨おさまり霊送

お盆最終日。

今日は里帰りした仏様たちがまたお帰りになる日。
送り火を焚いたり、そのもっとも大きなものが大文字焼き。
心配していた雨や風がやんだので門先で送り火をくゆらせることができる。

高原の合宿

合宿に西瓜三個の差し入らる
合宿の西瓜三個のまたたく間

夏休みは部活の合宿が盛んに行われる。

冬のスキー場として有名な菅平も学生合宿のメッカ。昼間たっぷり汗をかいたあとの食べっぷりも見事だが、OBなどから差し入れられた西瓜もまたたくまに平らげたりして、若さがはちきれるばかりである。

ここで、学生の遊び人数人がゴルフしていて間近に雷が落ちたけど命拾いした奴が、今でもしぶとく九州で社長やってるのがいる。

十六大角豆

盆野菜間に合ふやうに育ちけり

山村の畑でいろいろな野菜が作られていた。

なかでも目を惹いたのが「十六大角豆(ささげ)」とよばれる長さ30センチ以上はあるかという大角豆である。その名の通り、一本の莢の中に10数個の実が入っているもので、お話をうかがうと盆の棚に供える予定だという。食べたことはないが莢ごと食べられるくらい柔らかいそうである。

間もなく帰省してくる子や孫の食べさせる予定のトウモロコシや西瓜なども立派に育って、盆準備もすっかり整った。