花粉の宝庫

蜀黍の穂を飽食の蜂重し

畑のトウモロコシに穂が出てきた。
玉蜀黍の雄しべに飛ぶ蜂

てっぺんに出来るのが雄しべで、ここからミクロのような細かな花粉がこぼれ出て茎から出てくる実のひげ、つまり雌しべに降りかけると受粉する。髭の一本一本が一つの実につながっているから、雄しべの粉が少ないと当然実入りが悪いということになる。

雄しべは一つ一つの実を十分に育てるだけの量が必要なため、写真のように一本の茎にいくつも固まってできるので、花粉を集める蜂にとっては膨大な宝庫であるし、集蜜の効率がいい。見る間に蜜団子を膨らませてどこかへ飛んでいっては、すぐに仲間の蜂が寄ってくる。

旬の鳥

きりきりと渡る目白や眠る里

人影のみられない集落のはずれ、頭上で「きりきり」と鳴く声がする。

見るまでもなく目白だ。
目白の季語は秋だが、私には冬のイメージの方が強い。なぜなら、夏などは高い山にいるが寒さがつのってくるに従い里に下りてくるからだ。最近は郊外の住宅地などで一年中見られるようになることも多いが、やはり旬は冬なのだ。

入会地

山柿やここはかつての入会地

山柿というのだろうか、雑木林のなかに朱色に熟した実が鈴なりになった柿の木を見ることがある。

ここはかつては入会地で人の手がきちんと入っていた山かもしれない。それが後継者難で放置されたまま、ただの雑木林として埋もれようとしているのではないか。でなければ、雑木の中に柿の木が一本今も立派に実をつけるというのはどうみても不自然だからである。

銀杏黄葉

黄落の色に染めらる遠回り

お気に入りの道。

長い坂の両側に見事な銀杏並木。このブログに何回も出てくる隣町の住宅街だ。ずいぶん早く前に黄葉が始まり、昨日の風雨で散ってしまったかと思ったがまだまだ目を楽しませてくれる。

秘め事

山梔子の色に出にける思ひかな

紅葉真っ盛りの春日大社万葉植物園を訪れた。

さすが規模日本一とあって短時間ではとてもすべて頭に入りきれないほどの種類とそれぞれに因んだ歌の数々。多くの植物が冬支度でシーズンを終えようとしていたが、この山梔子は艶やかな葉に対抗するかのように実を橙色に染めていた。このあと気温がさらに下がるとともに赤に染めてゆくのだろう。

立冬

常よりは長湯してゐる冬立つ日

別に寒いからというわけではない。

浴槽内で苦吟するからである。作句の時間というのはだいたい決まっていて食後1時間ほどしてからだ。おかげで夜のテレビはあんまり見なくなったし、10時頃にはもうやることもなくなって寝付くまではネットサーフィン(古い!)などして過ごす。

衣を染める

山の辺のもみぢの寺や衣染む

四十九日法要をお願いに三輪の平等寺さんに。

山門を入ってすぐに林房雄揮毫の万葉歌碑があった。

わが衣 色にそめなむ うま酒三室の山は もみぢしにけり 柿本人麿 巻7ー1094

境内の楓も紅葉が始まっていた。山辺の道と云われるこのあたりは狭くて車が一台通るのがやっと。山門前の道標に「右はつせ いせ」「左三わ明神へすく」とあった。