季節外れ

鼻をつく雨のいきれの暮の秋

やたら生溫かい匂いがする。

この時期にすれば場違いの暖かい雨である。十一月そうそう季節外れの陽気がつづき、そのフィナーレが今日の雨だという。
明日からは徐々に気温が下がると言うし、気温の乱高下にはたして体がついていけるかどうか。
ここ数日の暖かさで予定は順調に進んだが、これからは風やお日さま、気温と相談して進めることが多くなるに違いない。
ともすればズルを決め込もうとする自らに鞭打ってたゆまずにリズムをきざみたいと思う。

穭田に

屑藁に鳩群れ落ちて冬近し

最近田の近くで鳩の群をよく見るようになった。

今日も電線の鳩たちを見ていると、二三羽の先兵がまず田に降りたって屑藁に嘴を突っ込む。安全とみた他のものもつづいて降りたってくる。
刈田は穭穂の緑が目立つようになっていよいよ秋の深まりの感を濃くしてきた。
鳩たちも冬に備えて落穂を探っているのであろう。ひと月もすれば野は枯れ餌を得るのも難しかろう。
鳩たちは秋の一と日を急いでいるのである。

ピアノがあれば

赤バイエル聞こえる窓に小鳥来る

ヒッヒッと鳴く鳥声が聞こえた。

あれは間違いなくジョウビタキである。
もうそんな季節かと晩秋の感慨に浸っていると、どこかのお宅からピアノ練習の音がもれてくる。
単純な音がたどたどしく聞こえるので、あれは初心者用バイエルであろうか。
調べてみると、子供の入門用は赤表紙と言って、片手で弾くことから始まる単純な音の連続である。初心者の域を脱すると黄表紙となって、両手で弾かねばならないのでだんだん難しくなる。
わが子も黄表紙までは進んでいたということだが、いつの間にかやめてしまった。
だがしかし、基礎が出来ていたので幼稚園では重宝されているらしい。
この稿を書いていたらたまたまニューヨークの街角ピアノの放送をやっていて、ピアノひとつできればいろんな国の人とも寸時に仲良くなれるのが楽しそうだった。引っ越しのときに古いピアノを廃棄してきたのだが、もし残してあれば呆け防止にピアノ練習できたのにと今さらながら悔やまれる。

バルボン

秋の夜阪神負けるニュース追ひ

昨日まででオリックスが二勝一敗。

今年の阪神の強さといったらないので、いいとこ二勝四敗でオリックスが負けと思っていたら、意外な展開。もしかしていい勝負になるのかもしれない。
もともと阪神はファンが煩すぎて好きなチームではなかったが、こちらに移ってきてますます嫌いになった。
テレビも新聞も阪神ばっかり。NHKでさえ阪神びいきの流しようにいい加減うんざりしてしまう。
東京では、巨人、ヤクルト、DeNAなど在京球団があるが、とりたてて地元球団中心の野球ニュースなんてなかった。
当地では民放もNHKも阪神、オリックス(どちらかというと阪神の方が多い)ばっかりで、これは地域政党「維新」の首長、吉本の芸人がやたら跋扈している、というか取り上げられるのと同様正直うんざりしているのである。
オリックスは、昔梶本、バルボンの時代の阪急が好きだったせいか、いまも好印象をもっているので、できれば四勝三敗くらいで優勝してくれたら嬉しい。

ふつふつと青き柚子玉泡だちぬ

去年強剪定したまま放置していた。

そのまま放置していていつ花が咲いたとも気づかずにいたが、近づいてみると青くて小さな実が嚢胞のように生っている。途中いくらかでも摘果していたらもう少しまともな大きさになっていたろうに、小さな実のままではたいした使い道がないようで可哀想である。
たくさん生った年には家人が丁寧にジャムにするのだが、このサイズではなかなか大変そうでこれまた可哀想である。
歳とともに庭の手入れも車の手入れもだんだんおざなりになってきている。菜園の方は比較的こまめにやれているということは、凝り性でもあるいっぽうで飽きやすい質と思われる。
そんな自分だが今さらどうともしようがなく、このまま気分のままに生きさせてもらおうと思う。

出入り

秋天やテント居並ぶ文化祭

10月最後の日曜日。

町民ホール前にテントが林立している。
バザーかフリマかと思ったがどうやら違うようである。
町民文化祭で親子姿が目立つ。町内の幼稚園、保育園、学校あるいは町民グループの発表などで関係者も多いのだろう、広い駐車場の出入りも多い。
町特産の販売もあってテントも賑やかである。
穏やかな日曜日がゆっくりと暮れてゆく。

予想

産みどころ高きに求め蟷螂枯る

古くなった簾に蟷螂が張りついている。

古簾にはもぬけの殻となった干からびた卵嚢がいくつもこびりついている。
これらは毎年のように蟷螂がやってきては卵を産んで巣立っていった名残であるが、今年はいつもより高いところを探っている。
雪の多いところには蟷螂が高いところに卵を産むと大雪という言い伝えがある。雪や水に浸からない、かと言って高ければ鳥たちに狙われるのでその微妙な高さに作ると言われるのもなるほどと思わせるで、もしかしたらこの冬は雨あるいは雪が多いのかもしれない。
さて、予想結果はいかに。半年後に判定されることになる。