マイブーム

昃ればすずき色なる鱗雲

いよいよ鵙の高鳴きのシーズンである。

あの特徴的な鋭い声の方を見やれば、大きな鱗雲が南の方から押し寄せてくる。
日を隠すかに雲が多いので、その鈍さはまるでスズキの肌を思い出させる渋い光りを放っている。
鉢の植え替え作業があるので雨がようやく上がって晴れるのを待っていたが、午前中はどんよりとしていて肌寒いので様子を見ていて午後になってようやく望んだ空になったのである。
今日のは軽い鉢だが、それでも3時間くらい屈んで熱中していたら腰に来る。
あとは楓の重い鉢が二つ残っていて、これは落葉を待って植え替える予定だ。
なおざりにしてた庭のものを本腰を上げて整備しようと言うのであるが、土に親しむのもコロナ時代のマイブームと言えようか。

猫の冬仕度

秋の花約をたがへず庭の隅

庭の草が雨に震えている。

聞けば12月の気温だという。
たまらずフリースのジャケットを引っ張り出してきて羽織るが、それでも膝から冷えてきてしまう。
うっかりうたた寝などしたら風邪を引きかねないので、用心に越したことはない一日である。
猫たちも同様とみえ、昼寝もできずうろうろするばかりである。冬用のベッドを出してやったがまだ落ち着かぬようである。人も猫もまだ冬仕度が間に合わないのである。

虫害

あかあかと刈田なめゆく火の走り

田植えが済んだばかりの田に煙が上っている。

火の走った跡は落ち穂や株が黒くなって、ついこの間まで黄金の世界だったとは思えない変わり様である。
先日盆地の田が焼けていると書いたが、実はあれは虫害であることをニュースで知った。うんかの仲間が株元から食い尽くして、これが盆地の広い範囲に及んでいるとのこと。
収穫は例年の半分程度にしかならないとのことで、農家は頭を痛めていることだろう。
早くに田を焼くのは、このような虫に犯された田の消毒をかねているのかもしれないと思った。

長寿の酒

椅子ひとつ空けて旧交温め酒

窓を閉めて湯に浸る季節となった。

窓を閉めるのはもうひとつ理由があって、ひとつ飛んだ空き地を菜園に畑仕舞いの煙だろうか、焦げたような匂いがここ3日も鼻をつくからだ。住宅地の真ん中でものを燃やすのは遠慮してもらいたいものだが、このあたりの元地主の保留地に相違なく昔の感覚で畑で燃しているわけである。
ともあれ、風呂もいつものように長風呂に戻り、浸りながら今日の句を考えるわけだが、とくに季題も思いつかないのである句会の兼題を考えることにする。
重陽の節句というのは9月9日だが、陰曆では10月25日くらい。この日は菊酒を飲むことでも知られるが、健康を願って酒をあたためて飲むという。冬至に南瓜を食うというのと同じようなものである。であるから、「温め酒」というのは単に熱燗や冷や酒と同列のただ温いというだけではない、健康を祈ってという願いも含む季題なのである。
酒を酌むにも三密を避ける意味でも、椅子ひとつあけてカウンターに腰掛けるというのはコロナとの共生のあり方であろうか。
コロナにはご遠慮いただくようお願いする酒もまた本意にかなうことなのでる。

消える光景

近いうち立ち退きの田の藁ぼっち

新しい道路はそこまで来ている。

この田は道路延長上にあるのでいつまでこのような光景が見られるか分からない。
いまどきの稲刈りは稲架に掛けたり、藁塚に積み上げる稲藁を残さないので、もう珍しい風景となっているだけに、複雑な気持ちになる。

ハーブ入り

役場よりクッキーとどく敬老日

頼んでもない宅配便が届いた。

月遅れの敬老の日プレゼントのようである。
町の運営する施設で焼いたクッキーと消毒水を老人ひとりひとりに配ったようである。
いつもなら文化施設ともなっている体育館で、芸人などを招いて敬老の日の行事を行うところ、コロナ禍で中止となって急遽このようなプレゼントになったのである。
我が家は二人だから二つ届いて、いろいろなハーブの入ったクッキーをおやつにいただいた。

ペアとシングルと

はたおりの負ひて虫除網の中

防虫ネットも完璧とはいかないようだ。

昨日間引きの際にネットを巻き上げたその隙を狙って侵入したらしい。
おんぶしたままのペアとシングルのやつと。
むきになることもないが、それでもやはり芽生えたばかりの春菊を食われても困るので何とか退散願った。