備えあれば

単一の電池あらため野分なか

相当の風が吹くという。

盆地の小高い丘にいると洪水の心配こそないが、停電が起こらぬとも限らない。
最悪を考えて懐中電灯は用意してあるが、電池が何時間保つかはなはだ心許ない。
こういうとき、予備の電池があれば問題ないのだが、荒れ狂う野分のさなかとなれば一抹の不安は否めない。

愛雨の心

雨男ふらりの下駄の昼の虫

朝から雨だ。

台風にさきがけた秋雨前線が刺激されているらしい。
東北や関東の今年は雨年と聞くが、当地は暑さのピークからはやっと解放されたようでほっと一息付けている。
ただ、急に涼しくなったので、窓を閉めるだけでは足らず、昼には長袖シャツを羽織ったり、夜にはあたふたと蒲団をだしたり。
急に寒くなったので、虫たちの天国もさぞ短かかろうと思ったが、庭に出てみると雨に濡れた草の陰でいい声を聞かせてくれている。
愛雨のこころをもって受け容れれば、台風だって無事に過ぎ去ってくれるかもしれない。

刈り入れ近い

曼珠沙華真神原の畦にかな

真神原(まかみがはら)とは飛鳥寺を中心としたエリアをさす。

「真神」とは狼を神格化したもので、WIKIをそのまま転記すると、
『真神(まかみ)は、日本に生息していた狼(ニホンオオカミ)が神格化したもの。大口真神(おおくちのまがみ、おおぐちまかみ)、御神犬とも呼ばれる。
真神は古来より聖獣として崇拝された。大和国(現在の奈良県)にある飛鳥の真神原の老狼は、大勢の人間を食べてきたため、その獰猛さから神格化され、猪や鹿から作物を守護するものとされた。
『万葉集』巻八には「大口の まかみの原に ふる雪は いたくなふりそ 家もあらなくに」(舎人娘子)と記され、少なくとも(大和国風土記の逸文と合わせ)8世紀からみられる。
人語を理解し、人間の性質を見分ける力を有し、善人を守護し、悪人を罰するものと信仰された。また、厄除け、特に火難や盗難から守る力が強いとされ、絵馬などにも描かれてきた。』

刈り入れが近い飛鳥の畦には曼珠沙華が咲き乱れている。
入鹿の首塚に手向けるようでもあるし、入鹿の血潮であるようにも見えてくる。

クールジャパン

水澄むや熊野を落とす筏衆

熊野川上流の北山川を流す観光筏が人気らしい。

全長30メートルに及ぶ筏が激流をうねるように下ってゆく。
客は転落防止の手すりにつかまり立ちのまま、飛沫を浴びるまま1時間ほどのスリルを楽しむ。
従兄弟の子が町から帰ってきて筏の仕事についていると聞いているが、こんな熊野の山奥にも外国人が訪ねてくれたり、探せばどこにも魅力を掘りだせるものだ。
IRかなんだか知らないが、日本人に馴染みのうすい博打リゾートを作って何のクールジャパン、日本再発見、再発掘になろう。

アプリでチェック

国ン中の忘れた頃の秋出水

雨の少ない奈良盆地。

ところが、その滅多に降らない雨がときに大雨になると、たちまち各所で冠水の報が聞かれ、電車も止まる。
古くは海、そして湿地であった土地だから、唯一の雨のはけ口大和川に流れ込む多くの川は小さく底も浅い。
だから、総雨量100ミリ程度でも短時間であればすぐにあふれてしまうのだ。
今朝は雷と猛烈な雨の音で目覚めたが、1時間程度でおさまった。この雨雲が盆地中央部から桜井の初瀬街道沿いに東進したようだ。
最近は雨雲レーダーで雨雲の行方を教えてくれる便利なアプリがあって、状況がすぐにチェックできるのがありがたい。お勧めアプリである。yahoo防災あるいはNHK防災とあるが、yahooの方が操作メニューが浅い分使い安いようである。

うねる絨毯

蕎麦の花山畠うねりゐたりけり
山畑のうねりの谷の蕎麦の花

山を切り開いて作った畑。

見渡して、ずっと1キロ先まで畑が続く。
開墾したと言っても、自然の地形を利用した畑だから高低差があるのは当然だ。
その高低差をたくみに開けば、おのずと波状型のうねりをもった土地になる。
蕎麦の花咲く丘ひとつ越えてその上に立てば、うねりの底もまた畑で、そこも一面白い花の蕎麦畑であった。

蕎麦の茎は赤い。その赤に紛れるように犬蓼が赤い実を付け、赤蜻蛉が群れて飛ぶ。
うねりの底から丘を見上げれば、赤い絨毯に白い花が浮いているようで、それがそのまま丘の上へと空につながっているように見えた。

吸引力

秋の蚊の出会い頭のダイソン禍

掃除をかけていたら、蚊がすっと現れた途端に消えてしまった。

ここ数日家に迷い込んだやつがたまたま低いところを生きていて、流行のトルネードとかいう掃除機のパワーに巻き込まれてしまったようだ。
夏の元気な蚊ならばそんな低空をうろつくこともなし、秋の蚊とはかくももろい。
生前に私の足首を吸わせてやったのが供養となろうか。