資源護美

七夕の笹飲み込みて塵芥車

あの竹は後始末に困る。

子供が持ち帰ってきて家族で楽しんだのはいいが、家庭の七夕飾りも追われば用済みである。
折角の願いが書いてあるのだからそのまま捨てるにもいかず、短冊は子供たちがめいめいはぎ取るにしても、残った竹や笹の葉は落ちるし、いつまでも家においておくわけにはいかない。
結局、白日のもと自然ゴミの日に放出するしかないのである。

今日は午後からよく晴れて、いわゆる五月晴れ。夕方になって雲もなくなり、星見ができる空模様である。こんなことは何年ぶりだろうか。

街道染めて

紅葉して大和名の山ことごとく

ちょっとした山にも由緒ありそうな名がついている。

それがことごとく紅葉に彩られて、盆地をどこに行くのも楽しいこと。
大和三山は当然として、桜井に至って左は三輪山、そして右手は鳥見山、さらにその先外鎌山。
やがて初瀬街道狭まりゆくところは朝倉宮跡。長谷の与喜山から吉隠に駆け上がる街道沿いの刈田も、いい色をして飽きさせることはない。
榛原の句会は、その道行きもまた楽しい。

柿どころ

吊し柿送り頃まで三日ほど
ぶらぶらと風の手練れの吊し柿

通りかかった店で立派な柿を見かけたので立ち寄ってみた。

ここはいつも客が入れ替わり立ち替わり出入りしているので、きっと安くていいものを扱っている店だろうと思っていたが、案に違わなかった。野菜、果物専門でどうやら地元産のものばかり扱っているようである。
西吉野の何々農園、すなわち柿どころ五條、からと書いてある吊し柿用柿がざる籠いっぱいに盛られ、とても渋柿とは思えないようないい色を出していたのでその色に釣られて一かご買ってみた。
一個の大きさが拳ほど、これが15個入っていた。

一昨年にもチャレンジしたが、面倒見が悪かったのか、貧相な仕上がりに食べることなく捨ててしまったので、今回はネットで検索して慎重に。
完成まで最低三週間ほどかかるらしい。
軒下の雨のかからないところに干して、ここでも色の変化を楽しむとしよう。
とくに、最初一週間ほどして、全体が薄茶色になった頃合いを見計らってよく揉み込み、種離れをさそうのがこつだという。
家人はあまりドライフルーツの類いは好きでないので、この15個は実際は全部私の胃袋に入るのだ。

冬備へ

田仕舞の煙漂ひ大和川

大和盆地は冬準備。

煙りが田のあちこちに上がっている。もし風がないと、その煙がどこにも飛ばされず、道路と言わず住宅や集落ごと、ところ構わず漂うことになる。さながら霞みか雲か状態。

大合流なった大和川の辺りでは煙りにすっぽり覆われて、対岸の様子はさだかでない。

私が主役

帯解の子に碧い目の注がるる

正遷宮を終えて諸行事が続く春日社は観光客でごったがやしている。

その間隙を縫うようにして着飾った児の手を引いて、爺婆父母の一族揃って砂利の参道を登ってくる。七五三のお詣りだ。
おとなでさえ、あの長い参道を歩くのは大変なのに、着慣れない着物に慣れないこっぽりではさぞ大変だろう。ようやく階段をあがり拝殿前まできたが、子のご機嫌はななめである。
宥めすかされて、回廊前や砂ずりの藤棚前でようやく記念写真となると、通りかかる参拝客、なかでも外人観光客にとっては大変珍しいのだろう、小さな子の着物姿に歓声をあげている。なかには、おすまししている横顔をスマホで撮ったり、一座の人気者である。
いろいろ声を掛けられてご機嫌が直ったところで拝殿へ。
この日の小さな主役にとっては、ことの進行がおそらく何が何やらよく分からないままの、大変な一日であったに違いない。

音たてて

音たてて色佳し香好し走蕎麦

蕎麦の花を見に行った桜井・笠の新蕎麦まではあと少し。

あと一週間ほど待たなくてはならないが、この初物を待つというのも大きな楽しみである。
早いところでは、新蕎麦はすでに10月には出回るので、笠地区の蕎麦は遅い部類に入る。
やはり、味のいいのを収穫するには、冷涼な空気が必要となるのであろうか、奈良でも東山中と呼ばれる地帯は盆地よりさらに気温は低いのだが、信州などに比べて生育環境はまだまだなのかもしれない。

やや青みがかって、香りがいい笠の新蕎麦は、音を立てて一気に飲み込みたいものである。

音たてて、と言えば今日の早朝、博多では大きな音を立てて道路が広く陥没したという。安心して道路も歩けない時代だ。

奈良公園の一日

御物展巡り茶庭に秋惜む

正倉院展の最終日。

これ以上はない日和に恵まれて、国立博物館を出て、昨夜遷宮されたばかりの春日大社に詣でた。

飛火野に伏せる牡鹿の長鳴ける

奈良公園は鹿の恋の季節。執拗に雌を追いかけている雄もいれば、沼田場の泥でまだぬらぬら光ったままの状態でうろつく牡鹿もいる。堂々とした雄はほとんどが角が切り落とされて、男前が台無しだが、長く尾を引くように鳴く声は低音の魅力たっぷり。あれにはくらっとする牝鹿もいるだろう。

春日さんへの参道に並ぶすべての灯籠には奉祝の貼り紙がされ、新春日を祝う行事が目白押しだ。

新しき春日丹に降る秋日かな

秋ばかりの句を並べたが、今日は立冬。
天気が目まぐるしく秋冬を行き来しているが、しばらくはない交ぜての作句が続くと思われる。