土壌

トラクターの爪の近づくはこべかな

春耕というのだろうか。

水田にトラクターが入って耕し始めた。
よく見ると、田の石垣には牛ハコベが群生していて今にも花開こうとしている。まさに、
はこべらの石を包みて盛り上がる  虚子
この句の通りの状況だ。
ハコベの生える土壌というのは耕作に最高の状態の土であると言われ、このように石垣に埋まった土さえも豊かというのは田そのものも豊穣の土と言うことかもしれない。
しばらく雨が降ってないので、田も乾燥していてトラクターの巻き上げる土煙が風に乗って飛んでくる。
ただでさえ、花粉アレルギー、猫アレルギー気味なので早々と退散となった。

600度の法則

枝垂梅こぞも通りし回り道

久しぶりに通る道だ。

この時期いつも見上げる梅がある。というより、遠くからいやでも目を引く見事さに吸い込まれるようにしてたどりついたのであるが。
そう言えば、前に住んでいた東京西郊の街には堂々とした枝垂れ桜を公開してくれるお宅があったことを思い出した。どこかの有名な桜の子孫を分けてもらった桜だそうで、南側に面した広い庭をすっかり覆うように成長した木であった。枝垂れ桜は普通染井吉野より10日ほど早く咲くので、もうそろそろ咲き始める頃であろうか。
桜開花時期予想の目安は2月1日を起点に最高気温の累積600度の頃であるという。これを桜開花600度の法則と言うらしい。ここ奈良ではすでに400度を超えており、連日温かい日が続く傾向からあと2週間ほどということになろうか。

健康志向

公園のできて四阿あたたかし

屋根の青い四阿が姿を現した。

見たこともない健康器具がすでにいくつか設営されていて、シニア用公園が間もなく完成する。
公園名はヘルスロード公園。いくつかの団地と結ぶ小学校の通学路が整備されたのにともない、歩道をゆったりとって周辺の人たちには格好の散歩道となっていて、公園名からその通りはどうやらヘルスロードと称するらしいが、今までどこにもそんな表記がない。
今まで畑だったところが公園になったのだが、これは通学路とその周辺をセットにした計画道路だったようである。
このあたりは古い団地にも近く健康志向の高い人が多いので、完成のあかつきにはきっと多くの利用者があると思われる。

嗅覚

沈丁や吐いてもあまりある思ひ

匂いが強すぎて嫌うひとは多いと聞く。

粘り着くような甘い香りはときに頭が痛くなるほどだとも。
私はさいわいに鼻が鈍いのか、庭に一株おろしてあって梅に次ぐ花として楽しんでいる。
苦手な人にとっては、この強い香りは放つと言うよりは毒を吐きまくっているような感覚さえしてくるのではなかろうか。
「あまりある思ひ」には触れずにおこう。

二人分

ルアー飛ぶ汀にひとつ土筆の子
草分けていまみどりごのつくしんぼ

行き止まりにある溜池に自転車が止まっていた。

もしや先客かと近づけば、どうやらルアー釣りを楽しむ人だった。
温かい日が続くので今日こそ顔を出しているのではないかと池の周りをチェックする。
いた、いた。生まれたての頭が青々とした土筆の赤ん坊である。ところどころ兄弟で顔を出した子たちもいるがまばらである。あと一週間ほどすれば一面に生まれてくるのではないか。
袴取りが大変だとクレームが出そうだが、二人分だけいただこうと思う。

ウィンドブレーカー

ミクロンとなればうとまし春埃

温度計がぐんぐん上がる。

そこでいつもより薄着で出たものの、やはりちょっと早かったようである。体を動かしている間はそれなりに暖かいのだが、じっとしているとそれなりに三月の気温である。
ウィンドブレーカー自体最新のものはうまく風をシャットアウトしてくれるし、薄物でも意外に温かいので便利である。なおいいのが表面がなめらかにできているので、埃などもつきにくいことである。
これから月末にかけて杉花粉のピークを迎えるが、今年はいつもの10倍飛ぶという予測がされている。花粉を家に持ち込まないためにも都合がいいのだが、それでもゼロというわけにはいかない。
埃を払うのを忘れてうっかりそのまま家に入ると、私より花粉症の症状が強い家人がたちまちくしゃみを連発する。
春ともなるとなにかと埃っぽくなるが、最近は杉花粉のみならずPMいくつかの有害微粒子も混じって油断ならない。
自分も花粉症であることを自覚しているが、ニュースで聞くほど今年は症状があまりでないので首をひねっているところである。
ともあれしばらく辛抱である。

菜花待ち

茎立の兆しありけり蕾は黄

収穫を忘れたわけじゃないが、気がつけば薹が立っていた。

真ん中に菜花の蕾が顔を出している。
いただいた苗をどう育てるかもよく知らぬまま植えたものだが、お隣も同じく薹が立ってきたようである。
タアサイという葉物だが、冬の間葉が地にへばり付いてまるで花のように四方に延びたまま収穫期を逃してしまった。
結局、このまま放置して伸びてきた菜花をいただくほかに仕方ない。