奥駆登山口

登山口行きといふバス小さけり

一度は山に登ってみたいと思いつつ、とうとう果たせずじまいになりそうだ。

だから、登山口までたどりついて周りの景色などを楽しんだら、そのまま登った気になって帰って来るというのもいいのではないかと思う。
高くないとはいえ、奈良の南半分は大峰奥駆の山が深く遙か熊野まで続く。有名な登山口には温泉もあるので、日帰り温泉も楽しめるし。

ビール観戦

ユニフォームのナイターに映え草野球

プロ野球のナイターは大変華があっていいものだ。

いっぽう、素人チームだって、ナイター設備のある球場では昼間見るよりユニフォームが一段と白く見えたりして選手一人一人が浮き上がるように、まるで別人のように見えるから不思議である。
職場対抗の野球やソフトボール大会だったりすると、これに応援団も加わって大騒ぎ。試合が終わった後のビールのうまさは選手たちの特権だが、応援団と一緒に和気藹々と杯を進める夜は格別の夜だ。

新盆

報告の相も変はらず墓洗ふ

家人の実家(高田さん)は新盆だ。

父母の田舎では旧盆だが、今日まとめて墓参してきた。
草をむしったり墓を掃除したりしながら、墓前に報告することは毎年同じようなものばかりだ。特別変わり栄えしないが、この「変わり栄えしない」ことが残されたものにとっては貴重なことのように思う。

ずぶ濡れ

買い物の帰宅遅るる夕立かな

家人がびしょ濡れになって帰ってきた。

宅配便の荷物を受け取るために外に出たとき大粒の雨がバラバラと落ちてきたので、外出している家人が気になる。
明日墓参りにいくことになっているので、あれこれ準備のため寄るところが多いと出かけたのだが、案の定雨の準備は何にもしていなかったので相当降られてしまったらしい。

祇園祭

山鉾の雨粒はじく車軸かな
鉾の名を染め抜くシャツの漢ぶり
鉾の穂の曇天突いて雨と化す
山鉾の月つきぬけて雨の宵

初めて本部吟行句会に参加した。

毎月の吟行句会をよんどころなく欠席して穴埋めのつもりも半分あったのだが、やはり今日の吟行「祇園祭風情」には引かれるものがあったからだ。
ニュースで宵祭が流されるたび、暑くて人ばっかりの祭など行く勇気もなかったのが、準備模様、しかも昼間ならゆとりあるだろうと思ったのが大間違い。日曜日とあってお昼頃からの人出はいやましに増し、もう二度と来ることはないだろうと思うほど。

出句はいつもより多い7句。なにしろ歴史ある祭であるし、その歴史、謂われなど門外漢にとっては気安く詠んではいけないようにも感じて、とても3時間程度では消化しきれない。
そういう意味では、時間をかけて読み直したい句材ではあった。

古座川

鍬ふる手今日は二間の鮎の竿
鋤鍬を竿に持ちかへ鮎を釣る

和歌山県古座川は鮎の名所。

地元では70,80を越えたおばあちゃんでも自ら竿を振る。鮎の友釣りで鮎寿司をつくるのだ。
また、古座川に限らず鮎が豊富なこの地方では「あぶり鮎」といって、釣りたての鮎を火にかけて焼いたものを乾燥させ、これを料理の出汁に使う。絶品は素麺の出汁で最高の贅沢でもあるが、やや甘めの汁に仕立てると鮎自体の甘味がうまく醸し出されて、頭から尻尾までくたくたに柔らかになったものがいただける。
ちょうど、鰊そばのあのニシンの味付けをぐっと抑えめにした感じとでも言おうか、塩焼きや刺身の味からはとても想像できない、それこそ絶妙の味なのだ。

今はとても高価でなかなか手に入らないのが残念だが、昔はどこの家でもハレの日はあぶり鮎の出汁で煮た煮物が膳に上ったものだった。

七転八倒

滴りを受くる竹樋の新しき
霊水の龍の口より滴れる
苔生ゆる龍の口より滴れる

墨坂神社竜王宮の龍の口

簡単なようでなかなか難しい季語である。

句会までには時間があったので墨坂神社に立ち寄った。ここには罔象女神(みつはのめのかみ)をまつる竜王宮があり、名水「墨坂神社の御神水」が湧き出ている。今月の兼題が「滴り」なので、どこかにヒントが得られないかと思ったからである。

掲句の通り、まだ授かったとは言えず、七転八倒の産みの苦しみはまだまだ続く。