遅ればせながら

水仙の遅参の花の申しわけ

気温が上がっていっぺんに忙しくなった。

本来寒の内にやっておかなければならなかったことをさぼっていたので、作業がとても一日では終わらなかった。それに、一日中とりかかる体力もなくて休み休みやるしかないためでもある。
とは言え、およそ予定の半分ほどを片付けられたのであと一日かければ何とか春の準備が整いそうである。
ひと休みの足もとにはそれまで気づかなかった水仙が芽を出してきていた。あやうく踏みそうになったが、これは昨年球根から育てて二年目のものである。季節的にはちょっと遅い気もするが、この冬が想像以上に寒い日が連続したことが影響しているにちがいない。

雲海

霜置いて大地曇らす靄の朝

予報は晴れなのにのっけから曇り空である。

晴れたらやることがたくさんあるので手ぐすね引いていたら当てが外れた格好だ。
ただ、ベランダで洗濯物を広げていたらこの薄曇りは靄であるらしいことに気がついた。
洗濯をあきらめていた大物を洗う日が来たと急いで二回目の洗濯機を回す。
案の定10時頃になると靄がはれて青空が見えてきた。おまけに久しぶりに外は温かい。
地元写真家によると、この日は盆地の底を雲が覆う、いわゆる雲海が見られたと発信していた。
季語は霜で冬だが、靄晴の春の日であった。

JPCZ

積雪を近江の友に尋ねけり

JPCZと言うそうだ。

「日本海寒帯気団収束帯」はにはかに注目というか気象情報にやたら出てくるようになった用語だが、大陸の長白山脈方向から吹き出す寒気が二手に別れ、それが帯状の長大な対流雲となって山口から北陸方面へ伸び出す。これによって強烈な低気圧が形成されたりして、大雪をもたらすらしい。
福井嶺南地方から伊吹、岐阜へと伸びると時には名古屋、三河地方まで積雪をもたらす。今回の大雪もこれだそうで長浜の句友によると70センチ以上の積雪があったという話だ。夕べのうちに峠は越したようだが、雪国はこの後がまた大変なのである。
俳人はやれ雪解水だの、斑雪だの、風流を気取るが現地に住む人々の苦労までは思いがゆかない。
私が幼い頃住んだ北陸では、母はいつも雪解けの季節が嫌いだとこぼしていた記憶がある。いま思えば子供にとってはソリ遊びなどまだまだ魅力ある季節でそんなことは一ミリも感じた覚えはないが。

横殴り

雨柱走るを身たり遠時雨

今日の午後、寒くて重苦しい空には低い雲が盆地南部を覆っている。

三輪山のある桜井のあたりは横殴りの雨柱が何本もたって雪時雨が通っているようだ。さいわい当地はめったに時雨の通り道に当たらない、不思議と雨や雪の少ないエリアである。
日中の気温は6度に届くか届かないかという真冬のもの。
春と呼べるものは今のところ目には入ってこない。

上機嫌

節分や副木の解けてリハビリへ

今日からリハビリが始まった。

手術から約二十日。順調に次のステージに進んでいるようだ。
先生によるとかなり大変な手術だったらしく、経過状況も想像以上によかったらしく上機嫌だったという。
ふだんの生活に戻るべく、これからまた数ヶ月つづくリハビリの日々である。

北から東から

またたいて星とまがふる機影冴ゆ

北から東からはるか遠くの星が揺れている。

いや、星と見えて近づけば航行ランプがまたたく機影のようだ。関西方面へ向かうとみえて低空だからまたたきが冴ゆる時期である。
身を切るような大気に思わず首をひっこめドアを閉じた。
明日は節分と言うに春は遠い。

ひきもきらず

風ぬける待合室の寒さかな

3回目の接種を受けてきた。

地方では中規模程度のクリニックで、待合室にはもう昼に近いというのに20人弱ほどの人が座っていた。
そのうちの半数ほどがコロナワクチン接種のためにきている人たちらしい。
受付を終えて待合室の全体を見渡し、通風が一番よさそうな窓側を選んで待つことにした。窓が少し開いているので風通しはいいが、やはりちょっと寒い。
順番が来てすぐに注射となったが、針を刺すときちくっとするだけであっけなく終了した。15分の待機を終了して外へ出ると駐車場で引きもきりなしにPCR検査をしているようだった。用心のため検査に来ている人たちだろうが、やはり相当程度蔓延していると思った方がいいと思った。
なにしろ人口一万の町で毎日10人前後の感染者が出ているのだ。