三月に一度

観念し歯科医の前にマスク取る

チェアにかけるまでマスクしている。

歯科医は無論マスクしたまま。
いよいよマスクを外してチェアに横たおるわれは、何とも無様に大口を開けてなされるままに口の中をかき回されておる。
これが三か月に一回の歯科通い。
今日は点検、掃除、フッ素を塗られて15分ほどで終わり。

選択

ヘリ三機真一文字に音冴ゆる
編隊のヘリの切り裂く風冴ゆる

西の方から生駒を越えて編隊三機が盆地を横切った。

ヘリにしてはいつも見る高さよりはるかに高いところを飛んでいるようだ。
自衛隊の機のように見えるが、東方向だから明野あたりにも向かうのだろうか。
もしかしたら能登への派遣に備えた飛行だろうか。
ただでさえ現地の応援が遅れており、日頃の訓練の成果をみせてもらいたいところである。
支援が届いてないのに半島の道路はがらがらだと聞く。遅れれば遅れるほど災害関連死がふえる。いっこくも猶予ならないはずなのに、政府も県も頼りない。民の命が救われるか見殺しにされるか。どんな政治を選ぶかわれらが選択にかかっている。

地球は生きている

地は震へ沖は遠のき寒昴

この広い宇宙のなかで土がある地球は極めてまれな星であるという。

植物が海から陸上に上がることにより、やがて動物も誕生したのであるが、土は最初の植物「地衣類」が光合成をし菌類を育て、これらがやがて多様な植物を生み長い時間をかけて有機物を地中に蓄えたことによって生まれたのだという。
一般の星の表面はせいぜいが岩石だが、地球はごく薄い土の層におおわれている特殊な星と言える。1センチの土の厚みを作るのに100年と言われるほど気の遠くなるような話しであるが。
その大地の星はコアのマントルの働きによってプレートが動くなど常に変化しており、地殼の圧縮と引っ張りの作用が限界に達するとおおきな地殼変動をもたらす。地震はその微少なもののひとつに過ぎないが、それでも一帯の大地をひっくり返す恐ろしい力をもつ。
能登半島は地下に断層がもぐり込む形となっており、このたび逆断層型といわれる地震があって半島を中心としたエリアが隆起した。
昔「地球は生きている」というような映画を学校から見に行ったような記憶があるが、まさに地球は生きものなのである。
暮らしの基盤を置いている大地であるが、どんなに強固な地盤改良を行おうとも盤石とは言えない。とくに日本は地震国ナンバー4であるが、狭い土地に人口が密集しているという点でそれがもたらす人的あるいは経済的な被害は甚大なものがある。

大地が常に震えている冬の真上には昴が燦然とまたたいている。

400光年はるか先の昴

向こう一か月

能登の地図否でも覚ゆ寒の入

いよいよ厳しくなる被災地。

これから約一か月がいわゆる寒で、それでなくても寒さの厳しい能登地方だけに関連死が増えないことをせつに祈る。

微笑み返し

大年の会釈遠きに交はしけり
大年のホース片手の遠会釈

ふだん滅多に顔を合わせない人と目があった。

大晦日ということで家の前で洗車しておられる。当方からは50メートルほど離れているが、彼もまた玄関を出てきた爺さんに気づいたのであろう、こちらから軽く会釈を送ると同じように返してくれた。彼とは何年も前に同じ自治会の役員として活動したこともあり、知らない仲でないのでお互いに自然にもれたアクションである。
当方はとうとう今年は洗車はせず仕舞い。何度か暖かい日があったのでその気があればできたのであるが、体力とともに気力の方もだんだん衰えてきたようである。
ことしもお世話になりました。だんだん小さい世界のことしか詠めなくなってきましたが、来年もなんとか続けたいと念じています。
よいお年をお迎えください。

ミニマム

十二月冷藏庫よりあふれしめ

あきれるほど物が詰まっている。

ふたりきりの暮らしに昔はこんな大きな冷藏庫は必要でなかったはずなのだが。
ところが、容積があればあったで不思議に物はふえて普段から満員御礼の状態。年の準備に用意した物や、土産物の要冷蔵物がくわわるとたちまちパンクしてしまう。
ここにも普段からミニマムの物で過ごせるよう、暮らしを見つめ直す必要がありそうである。

手が伸びる

みるみると蜜柑減りゆく冬休

あちこちから集まるが、さらにみるみると減ってゆく。

帰省のお土産だったり、いただきものだったり、正月休みのために買ってきたものとか。
ひさしぶりに食卓にみんな集って近況や義父母の様子やら、話題がつきない。卓の真ん中にどっさりと置いた蜜柑も次々と手が伸びて口の中へ入ってゆく。
蜜柑は秋の季語と言うが、酸味が消えしっかり甘みがのってうまいのが今ごろに出回るもの。秋に収穫しても出荷調整はむろんしているだろうが、ここまで甘いと三つや四つくらいぺろりといけるのである。