オーバーホール

けふ時の記念日にして父生れし

6月10日。

時の記念日である。父の誕生日と重なるので、この日がくると父を思い出す。生きていれば102歳。66のとき亡くなったのでもう36年になる。
今思い起こせばこの日に生まれたせいか、父は時計に凝るところがあった。そのうちの一つをもらったことがあるが、それは薄型でシンプルなアナログ腕時計で気に入っていたが動かぬようになって以来引き出しに眠ったままにいる。
退いてからというもの腕時計というものをしなくなって久しいが、できるならオーバーホールしてこの腕にはめるのも悪くないなと思うのである。

夏の空

峰雲や棚田に水の入りそめて

水が入って一週間。

菜園のまわりは早くも田植が完了したようだ。
今日植えたばかりと見えて苗があちこち傾いている。隅などにはまだ植える余地があったり、余り苗を隅に植えてあるところもある。仕上げは明日にでもやろうというのか。
盆地は今月下旬ごろになるが、信貴山麓の棚田はそれより二週間ほど早いようである。水は信貴山の水を貯水池にためた自前だからろうか。
まだ澄まぬ水の上には夏の空がひろがり、かなた青垣のやまやまの頭上に入道雲が連なっている。湿度もなく過ごしやすい一日だった。

ミニ児雷也

青蛙黄にもなるなりコーン畑

腰から下が黄色っぽい。

青蛙は環境に合わせて灰色になったりして体表の色が変わるが、黄緑色のは見たことがなかった。
菜園にはいつもの場所に必ず青蛙君がいるのだが、そいつは場所が不動なのでペンキ塗り立ての緑色である。
今日のは若々しいトウモロコシの畝に黄色い南瓜の花が同居しているせいか体色が黄緑なのである。下ぶくれの下半身だけが色がちがうので何だかおかしいやら、可愛いやら。
まるでミニ児雷也君のどろん変身がちと間違うたようでもある。

軽便線

麦秋やあれに見ゆるが下ツ道
軽便線いまは県道麦の秋

盆地を北西から南東へ、王寺から桜井にかけて軽便鉄道が敷かれていた。大和鉄道と呼ばれるものだ。奈良県にはこのほかにも何本かあったが、残っているのは生駒山ケーブル、近鉄吉野線だけであとは廃線となっている。
大和鉄道はいま県道14号線として我が町から桜井、飛鳥へはもっとも短いルートとしてよく利用している。もとは電車軌道で基本的には直線だったからいくつもの国道を斜めに横切って渋滞も少なく走りやすいのである。
その横切る国道の一つにかつての下ツ道がある。というか桜井市あたりで合流していると言った方がいいか。その合流点は戒重と言い大津皇子の住まいがあった場所である。
私にとってはそれだけではるか昔のヒーローを思いおこすお気に入りのルートなのである。
中ツ道と下ツ道の間は今ではほとんど稲作だが、それでも往時の麦畑がまだ見ることができる。その麦畑の向こうに大神神社の大鳥居が見えるがそのあたりを下ツ道が走っていたのである。
参考)奈良の軽便鉄道

瑞々しい色

紫陽花に埋もれぬ色の傘買ひに

関東の方が一足先に梅雨入りしたようである。

昨日からの雨は夜になってもしとしと降り続き当地も梅雨入り宣言してもよさそうなものだが、今週はしばらく涼しい日がつづいて天気はまあまあだというからしばらくお預けである。というと梅雨を待ち望んでいるかのように思われるが、実際はあの湿気をふくんで蒸し蒸しする日が来る日も来る日も続くかと思うと憂鬱になるのである。
庭には洋紫陽花が真っ青なものといかにも洋風という派手な色彩のものが咲いているのだが、小さな鉢に育っている小紫陽花はもう時期は過ぎてしまっている。
雨がやまないが紫陽花を見たさに用もなく庭に出る。郵便受けをのぞいたり新聞を確かめたり、そのつど紫陽花を眺める。
雨を十分にふくんだがくや葉や、どれも生き生きとしている。

水配り

雨意はらむ風に震へる茄子の花

夕方からぽつぽつときた。

茄子の葉が打たれてときどき上下する。
胡瓜の大きい葉はひときわ大きく揺れる。
茄子も胡瓜も心待ちにした雨が今夜たっぷり降り出しそうだ。
震えるのは待ちかねた雨に体ごと反応しているにも思える。
周りの田んぼも下から半ばくらいまでは水が配られたようだ。
やり残した作業は今日も終わらず早めに切り上げることにした。

名前を変えて

悪童を泣かせ上手の夏蜜柑
夏蜜柑昔話に花が咲き
夏蜜柑手替へ品かへ名前替え
夏蜜柑新顔名ほど甘くなし
甘きもの飽きてしまうて夏蜜柑

最近はいろんな品種が開発されているようだ。

この春頂き物の八朔にしても昔のあの酸っぱさはずいぶん改善されていて、まるまる一個ぺろりといただけるほどである。
夏蜜柑もさすがに昔のごつごつした、いかにも強面のものは姿を消し、若干名前を変えて新商品が出回っている。
春の頂き物以来、その意外なほどのおいしさにいろいろ手を出しているが、皮を剥くだけで唾がでるというのは昔のこととなったような気がする。
春先に出回る甘い柑橘類は期間が短いが、夏蜜柑の類いは長く、それだけ長く楽しめるのがいい。