実感

放棄田のさして荒れずに下萌ゆる

イヌフグリがぽちぽち顔を出してきた。

ホトケノザなどはすでに前年から咲いているが、ハコベ、ナズナなどもぼちぼち見られるようになった。こうなると春の草がつぎつぎに踊り出してきて野山は賑やかになる。
耕作放棄されているがセイダカアワダチソウなど猛々しい草もなく、いつでも耕作再開できそうな田のあちこちに草の若い芽を吹いてゆたかな土であることを示している。
寒い日が続くが着実に季節は動いていることを実感する。

再挑戦

あれこれと悩むもよけれ種選び

春巻き野菜の種第一陣を注文した。

とりおいてある種袋を見て不足するもの、新たに挑戦するものなど、あれこれ考えるのも楽しいものだ。
去年なかなかうまくいかなかったのは苗作り、あるいは植え時を間違ったことなどに原因があるので、捲土重来の種が多い。
昨年いくつかの種類は種を採ったのがあるので、本格的に種をまく前に試し蒔きしたのが今年最初の種まきとなった。とは言ってもこの寒い時期だ。普通に蒔いただけでは発芽しない。そこで人肌温室である。
キッチンペーパーなどを水に浸して種をはさみ、それをジップロックなどにいれてポケットで温める。
種類によって発芽日数はちがうが、早いものでは二三日で芽を出すものがある。
少しでも根がでたりしたらもうそれでオーケー。ピンセットなどでつまんでポットなどに移す。
今回はテストなので根が出ればオーケー。
三月上旬あたりがほんとのスタートになる。

雲海

霜置いて大地曇らす靄の朝

予報は晴れなのにのっけから曇り空である。

晴れたらやることがたくさんあるので手ぐすね引いていたら当てが外れた格好だ。
ただ、ベランダで洗濯物を広げていたらこの薄曇りは靄であるらしいことに気がついた。
洗濯をあきらめていた大物を洗う日が来たと急いで二回目の洗濯機を回す。
案の定10時頃になると靄がはれて青空が見えてきた。おまけに久しぶりに外は温かい。
地元写真家によると、この日は盆地の底を雲が覆う、いわゆる雲海が見られたと発信していた。
季語は霜で冬だが、靄晴の春の日であった。

動け

陽だまりに日数かさねて梅ふふむ

庭の白梅がふくらみ始めた。

今年はたいした手入れもしなかったのにけなげである。隣地に家が建って、半日は日が当たらないハンデを乗り越えていつも通りに咲いてくれそうである。
またどの木もまだ寒の剪定をしてなくて、12、3度くらいの暖かい日がきたら手をつけようと思っていているまに今日に至っている。
少しでも季節が動いてくれたらありがたいんだけど。

JPCZ

積雪を近江の友に尋ねけり

JPCZと言うそうだ。

「日本海寒帯気団収束帯」はにはかに注目というか気象情報にやたら出てくるようになった用語だが、大陸の長白山脈方向から吹き出す寒気が二手に別れ、それが帯状の長大な対流雲となって山口から北陸方面へ伸び出す。これによって強烈な低気圧が形成されたりして、大雪をもたらすらしい。
福井嶺南地方から伊吹、岐阜へと伸びると時には名古屋、三河地方まで積雪をもたらす。今回の大雪もこれだそうで長浜の句友によると70センチ以上の積雪があったという話だ。夕べのうちに峠は越したようだが、雪国はこの後がまた大変なのである。
俳人はやれ雪解水だの、斑雪だの、風流を気取るが現地に住む人々の苦労までは思いがゆかない。
私が幼い頃住んだ北陸では、母はいつも雪解けの季節が嫌いだとこぼしていた記憶がある。いま思えば子供にとってはソリ遊びなどまだまだ魅力ある季節でそんなことは一ミリも感じた覚えはないが。

多事多端

春浅し接種をへての憂きこころ

春とは名のみ。

いっこうに春の気配をみせない毎日である。
暖かい日がくればやりたいことは山ほどあるのに、いっかな始められそうもない。
コロナもその勢いが鈍りつつあると言うが、感染者は増加中。PCR検査薬不足で一般診療の足を引っ張っていると聞く。こうしている間も重症者はどんどんふえていくようすに、ワクチン接種したとてどれほどの効果があるのもしれず不安が募るばかりである。

横殴り

雨柱走るを身たり遠時雨

今日の午後、寒くて重苦しい空には低い雲が盆地南部を覆っている。

三輪山のある桜井のあたりは横殴りの雨柱が何本もたって雪時雨が通っているようだ。さいわい当地はめったに時雨の通り道に当たらない、不思議と雨や雪の少ないエリアである。
日中の気温は6度に届くか届かないかという真冬のもの。
春と呼べるものは今のところ目には入ってこない。