冬眠覚め

耕心のこよなく晴れて初蛙

雲ひとつない明るい春の昼、突然蛙を聞いた。

となりの空き地かあるいは我が家の庭か判然とはしないが、いずれにしても冬眠から覚めての第一声ではないだろうか。今年も無事に冬を越したのは何よりで、そのうち蘭の棚で顔合わせすることになるのを楽しみにしている。

球春

あたたかや泉下の人と夢にあひ

今日は彼岸の入り。

寒い寒いと言っていたのがつい昨日のような感覚で、もうお彼岸である。
いつもの服装のまま外に出て少し動いただけで汗ばむような陽気である。明日もいい天気だという。
春の選抜野球も二年ぶりで開催されるのももうすぐ。
春である。

焦燥感

冠木門見越しに闌ける白木蓮

旧家の中庭に立派な白木蓮がたけなはのときを迎えている。

と言うか、部分的には錆が出てはや盛りを過ぎているようでもある。
振り返ってみるほど立派な木蓮だが、それ以上に驚いたのはときの速さで、家に籠もっている間にどんどんときに置いて行かれるような焦燥感に襲われている自分を発見したことだった。
町民農園には耕人の姿もちらほらと見られ、暮から捨て置かれた畑には菜の花の黄が目立つ。
蝶の姿はどういうわけかあまり見ない。虫たちだってときに置いていかれているのではないかもしれない。

忙しい

約束のものの芽出たり雨はれて

いろいろ芽が出てきた。

植えてからずいぶん時間がかかったが、じゃがいもの芽が吹いたようだ。一部先端が霜に焼けたものがあるが、ものともせずに濃い緑の芽をのぞかせている。
この暖かさでセルに蒔いたネギも髭のように細い芽を出してきたし、いまのところ茄子、トマトの苗も順調に育っているようである。ブルーベリーの芽も動き出した。
今週中にも桜開花があろうかという時分、なかなか忙しい気分になってきた。

小鉢

わが庭の我が目疑ふつくづくし

買い物から帰って気付いた。

駐車場脇の芝生部分に土筆が頭を出しているのを。
よく見ればほらここに、あ、ここにも、という具合に見つかり、そのうち10本くらいを摘んでみて土筆料理を所望。
夕食には小鉢にちょこんとおすましした土筆煮の甘辛いのを、季節を慈しむようにおいしくいただくことができた

無観客

火の粉浴ぶ声ぞなかりき御水取

今年は雑音のない御水取りである。

今日から三日間は観光客を入れないので、連行衆登壇の松明の爆ぜる音、童子の声、廊下を走る音、堂内の連行衆の沓尾とまでもが生々しく聞こえる。
ありがたいことに今年はNHKBSで生中継をしているので、松明の灯影にゆらめくシルエットが映し出され厳かな雰囲気が伝わってくる。

けなげ

枕投知らざるままに卒業す

修学旅行が中止となったまま卒業の日を迎えたニュースを見た。

インタビューに出るのは模範児童だろうから愚痴ることもなく進学や未来へ向けて抱負を語る。言うことがけなげで我知らず頑張れと心の中で呼びかけた。