虫害

あかあかと刈田なめゆく火の走り

田植えが済んだばかりの田に煙が上っている。

火の走った跡は落ち穂や株が黒くなって、ついこの間まで黄金の世界だったとは思えない変わり様である。
先日盆地の田が焼けていると書いたが、実はあれは虫害であることをニュースで知った。うんかの仲間が株元から食い尽くして、これが盆地の広い範囲に及んでいるとのこと。
収穫は例年の半分程度にしかならないとのことで、農家は頭を痛めていることだろう。
早くに田を焼くのは、このような虫に犯された田の消毒をかねているのかもしれないと思った。

長寿の酒

椅子ひとつ空けて旧交温め酒

窓を閉めて湯に浸る季節となった。

窓を閉めるのはもうひとつ理由があって、ひとつ飛んだ空き地を菜園に畑仕舞いの煙だろうか、焦げたような匂いがここ3日も鼻をつくからだ。住宅地の真ん中でものを燃やすのは遠慮してもらいたいものだが、このあたりの元地主の保留地に相違なく昔の感覚で畑で燃しているわけである。
ともあれ、風呂もいつものように長風呂に戻り、浸りながら今日の句を考えるわけだが、とくに季題も思いつかないのである句会の兼題を考えることにする。
重陽の節句というのは9月9日だが、陰曆では10月25日くらい。この日は菊酒を飲むことでも知られるが、健康を願って酒をあたためて飲むという。冬至に南瓜を食うというのと同じようなものである。であるから、「温め酒」というのは単に熱燗や冷や酒と同列のただ温いというだけではない、健康を祈ってという願いも含む季題なのである。
酒を酌むにも三密を避ける意味でも、椅子ひとつあけてカウンターに腰掛けるというのはコロナとの共生のあり方であろうか。
コロナにはご遠慮いただくようお願いする酒もまた本意にかなうことなのでる。

消える光景

近いうち立ち退きの田の藁ぼっち

新しい道路はそこまで来ている。

この田は道路延長上にあるのでいつまでこのような光景が見られるか分からない。
いまどきの稲刈りは稲架に掛けたり、藁塚に積み上げる稲藁を残さないので、もう珍しい風景となっているだけに、複雑な気持ちになる。

ハーブ入り

役場よりクッキーとどく敬老日

頼んでもない宅配便が届いた。

月遅れの敬老の日プレゼントのようである。
町の運営する施設で焼いたクッキーと消毒水を老人ひとりひとりに配ったようである。
いつもなら文化施設ともなっている体育館で、芸人などを招いて敬老の日の行事を行うところ、コロナ禍で中止となって急遽このようなプレゼントになったのである。
我が家は二人だから二つ届いて、いろいろなハーブの入ったクッキーをおやつにいただいた。

ペアとシングルと

はたおりの負ひて虫除網の中

防虫ネットも完璧とはいかないようだ。

昨日間引きの際にネットを巻き上げたその隙を狙って侵入したらしい。
おんぶしたままのペアとシングルのやつと。
むきになることもないが、それでもやはり芽生えたばかりの春菊を食われても困るので何とか退散願った。

ブーム

摘菜のいのちうかべて御御御付

雨が止んだので大根の間引きを。

双葉が半分以上食われたからやっぱり虫除け対策のネットを張って、ようやく立ち直ってきたが思った以上食われているみたいで期待の数の半分くらいしか残ってない。
それでも、ひとつまみ程度は摘まむことができて夕餉の味噌汁へ。
顔を近づけるとほのかに大根の香りがして、ささやかな収穫の喜びにひたる。
雨の直前に蒔いた春菊も小さな芽を出したようで、これも今後が楽しみ。
コロナ禍でちょっとしたグリーンブームだそうだが、まさに我が家もブームに乗っているというわけだ。

配布回収

国勢調査回収遅々と秋の暮

回収率が悪くて期間延長されたとか。

国勢調査は回答義務が課される基幹的統計調査で、各種政策などの基礎データとして活用されることになっている。
コロナの影響もあって、オンラインでも回答できるようになったが、それでも回答率は70%に満たないという。
国政選挙の投票だって五割もいけばいいほうだから、国勢調査がいくぶん上回っているとはいえ、国勢調査に対する国民の関心度の低下はやはり気になる。これも国民のお上に対する関心度合いが薄れてしまっているということだろうか。
民生委員のかたなどがいちいち調査用紙を配ったり、回収したりしているが、いつ訪問しても留守とか、いろいろな家庭があって苦労されているにちがいない。
オンラインで回答すれば五分とかからないのでたいした手間じゃないのだが、個人情報漏洩を気にする方も増えていることだし、ますますこういった調査は難しくなるにちがいない。