知恵をめぐらす

啓蟄の芝生に嬰のあんよ着け

歩くにはまだ早い児を抱きかかえている。

その足をちょんちょんと地に着けて、早く歩けよとの願いか。
高い、高い、ならぬ「あんよは上手」の親心かも。
お姉ちゃんたちは芝生の広場でボール遊び。
遊ぶ場所が限られる今、庶民はそれなりに知恵をめぐらせている。

万物の命

土佐の名を負ふるみずきの萌葱かな

単なる黄色とは違う。

咲きはじめの土佐ミズキや日向ミズキはやや緑を帯びた、文字通りの「萌える」色の風合いがあり、それがまた初々しい印象を強くさせる。
土佐ミズキは細い枝だが意外に高く伸びるので、見上げる位置に鈴のような花をぶらさげる。葉もまだつけない枝が空に突きだして、そこに瑞々しい萌黄が点滅するのだから、青い空との対比が美しい。
冬に眠っていた大地のあちこちに、黄色を主体とした色が一気に燃え上がってくる、万物の命というものに感動が尽きない季節である。

奥つ城

襲津彦の墳やもしれぬ野に遊ぶ

人混みへは行けないからみんな広大な古墳公園に遊びに来る。

ふだんは高齢者ばかりが目立つ公園だが、このところ行き場を失った子供連れの姿がめっきり増えた。
もともと丘陵地帯だから起伏のあるところのほとんどが芝生広場となっており、それぞれめいめい好きなところでボール遊びをしたり、凧揚げをしたり。
蒲公英は西洋タンポポだと思うが年中咲いてるし、下萌えがとっくに始まっていて芝生広場に寝そべるとそれはいい気持ち。
この春は、雨さえ降らなければ平日といえど人出は途切れないことだろう。
ここの古墳公園でもっとも大きくて、国指定の特別遺跡となっている巣山古墳は全長200メートルほどの立派な前方後円墳。見るだに大王級の墳墓と分かる。この辺り一帯は古代豪族葛城氏の奥つ城に当たる場所で、それだけにこの立派な古墳は伝説の武内宿禰かもしれないという。

細波に

池のべに羽毛漂ふ蘆の角

水鳥が半分ほど帰って静かな池の面がかすかにゆれている。

まだ残っている鴨がひく水脈が細波となって水際まで寄せているのだ。
そこには紛れもなく芦の芽が水面から顔を出していた。細波に洗われていまにも沈みそうであるが、それにも耐えてしっかりとした芽だ。その尖った芽は角芽というのに相応しい。

インドア忌避

ひとところ大星団ありいぬふぐり

足の踏み場もない。

星屑とはいぬふぐりの盛りの様子をいうが、この群がる様は均一ではなく、あちこちに固まりをなすものである。
その様子はまるで大星雲ないしは大星団のごとくで、とても一つ一つ数えられるものではない。
今日は子供連れが多く見られた。
インドアを避けて野原でボール遊びをしたり、満開の河津桜を楽しんだり。

句会中止

これよりの句会中止に二月尽

本降りの雨で閏二月が終わる。

考えてみれば今年は雪のちらつきもまだ見ていない。このままでは春の異変が起きなければ雪なき年となるかもしれない。
いつもなら暮れのうちにスノータイヤに替えるところ、作業も面倒なことからノーマルタイヤで済ませてしまった。
仮に雪が降ったとしても今年は無理に外出することは避けたい事情もあるし、時に応じて行動すればいい。
三月の句会は中止となったし、日々独吟の日が続きそうである。

しょぼしょぼ

すっぴんもまたえじゃないか春の風邪

風邪ではないが杉花粉症にちがいない。

目がしょぼしょぼするし、鼻もぐすぐす。
うっかり咳をしたら、この時期みんなから胡散臭く見られるので外出にはマスクが欠かせない。
春の風邪と言って気取っておるうちはまだいい。新コロナとかいうウィルスを侮らず、外から帰ったら手荒い,うがいの実践でのりきるしかない。