血液検査

夏痩の腕の血を吸ふ注射針
夏痩の静脈探るナースかな

健診を受けてきた。

体重計の針をみてびっくり。
何十年と変わらなかった体重が、思いもよらず急な減り方をしているのだ。そんなことなど何の自覚もなかったので、よけい動揺してしまった。とっさに浮かんだのが、不吉な予感で、かかりつけ医に相談すると、
「食欲もあるようだし、胸の音も全く問題ないし、見た目からして何も心配することはありませんよ」
「そんなに心配なら、血液は採取してありますから一応腫瘍マーカーの検査も追加してみましょう」
と、一笑に付された。
結果は明日にでも出ますので、もしもそうならすぐに連絡しますと言って返された。

それから3日ほどたつが、ドクターからは何の連絡もない。ただの夏痩せなんだろうけど、それにしても3キロ以上も痩せるというのは、熱中症寸前までいったことも考え合わせて、体力ががた落ちしているに違いない。老いるとは、体力のなだらかな衰退、衰弱を意味するのではなく急激に訪れるものらしい。

墓穴を掘る

自堕落な寝姿も見せ暑気中り
暑気中りあはや救急車の世話に
暑気中りすんでのことに熱中症

穴一つ掘っただけでばてたみたいだ。

体が浮いたように感じるし、頭はぼおーっとしてくる。
なにかいつもと違う異変を感じたので、タオルを額に載せて畳に寝そべり、両脇、股を広げて風を送る。
急におかしくなったので暑気中りなどと呑気なものではなく、もしやこれが熱中症の兆候かと、リンパを冷やし体の熱を逃がさねばと思ったのだ。

二、三時間ほど横になっているうちに、あれほど濡らしたはずのタオルが半乾きになっていて、ようやく我に返ることができた。
振り込め詐欺同様、熱中症のニュースを他人事のように聞いていたが、すんでのとこで救急車のお世話になるところで、
ともかくも墓穴を掘らずに済んだのはよかった。

海辺の花

貝拾ふ海桐の花の径かな

海岸地帯に密集している。

低く広がっているが、流木や貝を拾ったりするために浜へ降りるなどして踏み固められるといつの間にか一人分だけ通れるような小径になっている。
車輪梅も海に近いところに見られ間違いやすいが、車輪梅は5月頃、海桐は6月から7月頃にさき、花の色が白から黄に変わる。

緊急避難

子百足虫の窓逃げ回る雨景色

いきなりの大粒の雨だ。

日照り雨でもあったのでたかをくくっていたら、凄まじい音をたてるまでにもなり、怖ささえ感じるほどだ。
この叩きつけるような雨の怖さは虫にとっても同じと見えて、百足が慌てるようにして窓ガラスをのぼってゆく。
その行方を追っている猫どもと僕。
夕立はすぐにやんだが、百足はまだ壁を這っているのかもしれない。

キトラ古墳壁画公開

渡来人よるべの里の花木槿
通り雨走る字の花木槿

キトラ古墳の壁画が公開されている。

事前申込みの必要な今回は、漆喰に描かれた四神のうちの朱雀を目の前で見ることができた。
壁から剥がした絵は、まるで薄い布の上にでも描いたようでとても壁とは思えなかったが、技術の粋をこらして保存に努めている証だろう。
石棺は高松塚古墳に比べるとずいぶん小振りで大人一人が横たわるのがせいいっぱい。内側には四神、十二支の獣頭人身像、そして天井の天文図が描かれているだけである。飛鳥美人の姿は描かれてない。墳丘も小さくて、8世紀初め頃完成した、古墳時代最後期のものということらしい。
盗掘に遇ってるが、埋葬者は残った人骨から50,60歳代の男子だという。藤ノ木古墳などを見ているので、出土品が少ないのは寂しい気がした。
高松塚古墳の主は、描かれた図から、日本書紀編纂の責任者だった舎人親王ではないかとする説が説得力をもつが、はたしてキトラの主は誰なんだろうか。

ラッシュアワー

乗り込んで弱冷車とは知りにけり

危険水域である。

昨日今日と熱射病寸前かと思うようなだるさ。
熱帯夜というのが何日か続くと、エアコンに冷やされ過ぎて、さすがに体がしっかり休めないらしい。
さいわい食欲はあるので、体をいたわりながらこの夏をやり過ごすしかなさそうである。

仕事帰りのラッシュアワー、並んでいたところは弱冷房車だった。嗚呼。

初蝉

遠蝉を女教へる朝餉かな

蝉が遠くで聞こえた。

八幡さんの杜からだろう。耳をすませば、初蝉とは思えぬほどシンシン響いてくる。
蝉の風が思ったより涼しくて、もしかしたら今日が秋の初めなんではないかと思うほどだが、熱さの本番はこれからだろう。
とっくに鳴き始めていたんだろうが、連日の熱さで窓を閉めてエアコンを回していることが多いし、気づかなかっただけにちがいない。たまたま日曜日で往来の車が少ないこともあって、聞こえたというわけだ。

実際のところ、わが家では男が気づき女に教えてやったのだが。