寒四の雨

鳥の声絶えてひねもす寒の雨

まるまる一日降る雨だ。

朝から降り始めて夜になっても雨脚が衰えない。
寒に入って九日目の雨を「寒九の雨」といい、その年が豊作になるという言い伝えがあるが、今日はちと早いようである。
ただ、今まで乾いていた土地が潤って豊作の条件が整いつつあるという意味では「寒四の雨」も「寒九の雨」も大差はないのではなかろうか。

土地に恵みをもたらすという雨ではあるが、鳥たちには歓迎されないようである。朝から影も見えず、声も聞かない。

精神統一

寒の水擦りて滲める硯かな

家人は書道をやるが、どうも墨を擦るところを見たことがない。

墨汁を使うようである。
学校で習ったときは、墨を擦るのも書の一貫で、心を澄ます大事な時間であると教わったものだが、今はすっかり変わったようで書道教室でもそうしているらしい。
同じく書をやられるskyblueさんは墨擦り派?それとも墨汁派だろうか。

この時期に書とくれば、硯の海にたっぷり注ぐ寒の水があってこその俳句。
おもむろに構想を練りながら、とっておきの墨を擦るのもいかにも寒稽古らしい。

冬の自治会活動

寒柝の声音夜ごとに異なりて

最近は滅多に聞かなくなった。

あの拍子木を鳴らして町内を巡る夜回りである。
それでも、年末の一時期とか、休日とか期間を区切ってなら、自治会の自主活動などでは行われているようである。
空き巣などが横行して自治会の防犯活動も活発化しているようであり、その一貫で防火を兼ねて呼びかけている。
役員の回り持ちであるらしく、毎夜担当が替わっているらしいことは、声の調子や柝のリズムなどが微妙に違っていることでも分かる。

寒入り

上弦の月は雲間に寒に入る

風呂場にいると僅かの気温差が分かるものだ。

今日は寒入りだが、特別寒さに震えることはなくゆっくり体を洗うことができた。
雲が空気を逃がさないでいてくれるのだろう。
ただ、明朝は冷え込むというから、今夜まだ覆っている雲が晴れて例の放射冷却が起きるんだろう。

新年早々

面白きテレビ始まり湯冷する

新年らしい季語でないのが残念である。

正月早々、湯冷めが原因で風邪を引いてしまった。
それというのも、いざ寝るかという時間になって、これはという番組にチャンネル入れてしまったのだ。
最近のEテレは実に面白い。昔の「教育テレビ」のイメージからはほど遠い企画のものがばんばん放送されて、目が離せなくなってしまった。BS3に加えてEテレの番組表は要チェックだ。

初湿り

御降や天気予報の外れ初

雑煮にもあきて昼は近くの廻る寿司へ。

店を出たらにわか雨、時雨のようだ。例によって葛城に日矢がかかり、まるで一言さんの御降臨でもあるかのようだ。
反して、生駒の枯れた山肌には明るい日差しがあって好対照。

2DKの浴室で

まず嬰を先にあげたる初湯かな

若い父、あるいは母かもしれない。

指を固く握りしめた赤子も、やがて大きな欠伸もしてご機嫌のようす。
一方が赤子を風呂にいれ、他方がそれをバスタオルで受け取る役割。

まずは、平和な年明けである。