尊い行為

ご神水賜り登拝の明けの春
三輪山に登拝の鈴の響き冴ゆ

やはり正月だろうか、多くの人が三輪山を上ってゆく。

ここはご神水の湧く狭井神社で、御朱印所で襷、鈴を受け取り登拝するが、なかには白装束に身を固めた篤い信者もみられる。神社横の登拝口からいきなりの急斜面で、鈴の音がみるみる上の方へは遠ざかるいっぽうで、下山の鈴の音がぐんぐん近づいてくる。
登拝経験のある人に聞けば、途中そうとうの急登もあるようだが、登拝客は取り立ててそれを苦にもしてない風であるのは、参拝という尊い行為にあってはそれすらもありがたいことだとされているのかもしれない。
下山者の靴は、昨日の雨で登拝の道はぬかるみもあるようで泥まみれであるが、顔はうらはらに晴れ晴れとしているようである。

冬うらら

寒晴や双耳著けし二上山

三月の陽気とか。

大神神社吟行は冬うららで厚い上着も要らぬほど。
十日になるので参拝客も少ないだろうと予測していたが、意外にまだまだ。二の鳥居前の駐車場には長い列ができている。
登拝入り口となる狭井神社からは、次々と善男善女が鈴を鳴らして登っては降りてくる。
一通りコースを巡って、やはり最後は盆地を見渡せる小高い丘に登る。
真東から見る二上山の双峰は遠目にもくっきりと晴れた空に突きだしている。

新成人

成人日婆にだんだん似てきたる
振袖の墓前に参る成人日
微笑むと幼さのぞき成人日
改札の晴着吐き出す成人日

昨日、今日と各地で成人式が行われているようである。

成人の日第一世代としては一月十五日が頭にこびりついていて、新制度になってからはニュースでその日を知る次第だが、skyblueさんはじめお孫さんに新成人をもつ方々の喜びは格別なものであろう。

以前の家は市の会場となった体育館、駅にも近かったので、人通りは多く大変賑やかだったことを思い出した。

寒四の雨

鳥の声絶えてひねもす寒の雨

まるまる一日降る雨だ。

朝から降り始めて夜になっても雨脚が衰えない。
寒に入って九日目の雨を「寒九の雨」といい、その年が豊作になるという言い伝えがあるが、今日はちと早いようである。
ただ、今まで乾いていた土地が潤って豊作の条件が整いつつあるという意味では「寒四の雨」も「寒九の雨」も大差はないのではなかろうか。

土地に恵みをもたらすという雨ではあるが、鳥たちには歓迎されないようである。朝から影も見えず、声も聞かない。

精神統一

寒の水擦りて滲める硯かな

家人は書道をやるが、どうも墨を擦るところを見たことがない。

墨汁を使うようである。
学校で習ったときは、墨を擦るのも書の一貫で、心を澄ます大事な時間であると教わったものだが、今はすっかり変わったようで書道教室でもそうしているらしい。
同じく書をやられるskyblueさんは墨擦り派?それとも墨汁派だろうか。

この時期に書とくれば、硯の海にたっぷり注ぐ寒の水があってこその俳句。
おもむろに構想を練りながら、とっておきの墨を擦るのもいかにも寒稽古らしい。

冬の自治会活動

寒柝の声音夜ごとに異なりて

最近は滅多に聞かなくなった。

あの拍子木を鳴らして町内を巡る夜回りである。
それでも、年末の一時期とか、休日とか期間を区切ってなら、自治会の自主活動などでは行われているようである。
空き巣などが横行して自治会の防犯活動も活発化しているようであり、その一貫で防火を兼ねて呼びかけている。
役員の回り持ちであるらしく、毎夜担当が替わっているらしいことは、声の調子や柝のリズムなどが微妙に違っていることでも分かる。

寒入り

上弦の月は雲間に寒に入る

風呂場にいると僅かの気温差が分かるものだ。

今日は寒入りだが、特別寒さに震えることはなくゆっくり体を洗うことができた。
雲が空気を逃がさないでいてくれるのだろう。
ただ、明朝は冷え込むというから、今夜まだ覆っている雲が晴れて例の放射冷却が起きるんだろう。