ピアノがあれば

赤バイエル聞こえる窓に小鳥来る

ヒッヒッと鳴く鳥声が聞こえた。

あれは間違いなくジョウビタキである。
もうそんな季節かと晩秋の感慨に浸っていると、どこかのお宅からピアノ練習の音がもれてくる。
単純な音がたどたどしく聞こえるので、あれは初心者用バイエルであろうか。
調べてみると、子供の入門用は赤表紙と言って、片手で弾くことから始まる単純な音の連続である。初心者の域を脱すると黄表紙となって、両手で弾かねばならないのでだんだん難しくなる。
わが子も黄表紙までは進んでいたということだが、いつの間にかやめてしまった。
だがしかし、基礎が出来ていたので幼稚園では重宝されているらしい。
この稿を書いていたらたまたまニューヨークの街角ピアノの放送をやっていて、ピアノひとつできればいろんな国の人とも寸時に仲良くなれるのが楽しそうだった。引っ越しのときに古いピアノを廃棄してきたのだが、もし残してあれば呆け防止にピアノ練習できたのにと今さらながら悔やまれる。

憎たらしい

鉢木の寸暇惜しみて黄落す

目をかけているはずなのだが。

鉢植えの柿が一足早く色づいて、しかもばらばら落葉してしまった。
落葉樹の生理からして、これ以上葉を養えないからと早々に今年は店仕舞と言うことだろう。
いっぽう、庭植えのほうはと言えば枝葉ばかり茂らせて実のほうはさっぱりという具合だが、強剪定のため枝葉は隆々としていてまだまだ黄葉する気配はない。実が生らない分、枝葉たちはのうのうと我が世の春(?)を謳歌しているにちがいないのだ。憎たらしいのでこの冬は思い切り枝抜きしてやろうと思う。もちろん、来年ちゃんと実をつけることを期待して。

バルボン

秋の夜阪神負けるニュース追ひ

昨日まででオリックスが二勝一敗。

今年の阪神の強さといったらないので、いいとこ二勝四敗でオリックスが負けと思っていたら、意外な展開。もしかしていい勝負になるのかもしれない。
もともと阪神はファンが煩すぎて好きなチームではなかったが、こちらに移ってきてますます嫌いになった。
テレビも新聞も阪神ばっかり。NHKでさえ阪神びいきの流しようにいい加減うんざりしてしまう。
東京では、巨人、ヤクルト、DeNAなど在京球団があるが、とりたてて地元球団中心の野球ニュースなんてなかった。
当地では民放もNHKも阪神、オリックス(どちらかというと阪神の方が多い)ばっかりで、これは地域政党「維新」の首長、吉本の芸人がやたら跋扈している、というか取り上げられるのと同様正直うんざりしているのである。
オリックスは、昔梶本、バルボンの時代の阪急が好きだったせいか、いまも好印象をもっているので、できれば四勝三敗くらいで優勝してくれたら嬉しい。

ふつふつと青き柚子玉泡だちぬ

去年強剪定したまま放置していた。

そのまま放置していていつ花が咲いたとも気づかずにいたが、近づいてみると青くて小さな実が嚢胞のように生っている。途中いくらかでも摘果していたらもう少しまともな大きさになっていたろうに、小さな実のままではたいした使い道がないようで可哀想である。
たくさん生った年には家人が丁寧にジャムにするのだが、このサイズではなかなか大変そうでこれまた可哀想である。
歳とともに庭の手入れも車の手入れもだんだんおざなりになってきている。菜園の方は比較的こまめにやれているということは、凝り性でもあるいっぽうで飽きやすい質と思われる。
そんな自分だが今さらどうともしようがなく、このまま気分のままに生きさせてもらおうと思う。

源助大根

挟まれて抜き差しならぬ大根引く

間隔がちょっと狭すぎるようだ。

虫の害がひどいのでたくさん蒔いて正面突破を図ろうという作戦で、案外密になってしまったようだ。
なかには、両脇の大きいのに挟まれてずいぶん遠慮深いようで、なかなか太ろうとしないのがある。出来具合を見るためにもまだ大人になりきれてない一本を抜いてみることにした。
太さ6、7センチくらい、長さはもともと短い種類らしくて尻尾まで入れて20センチもあろうか。
大きい大根を作ってもなかなか食べきれないし、源助大根というやつはちょういい食べきりサイズである。おまけに肉質がしまっているので煮物、おでんに合うらしい。
虫の攻撃に耐えて何とか生き残れそうまでに育ってきたのが数本。大事な一本であるので大根汁にでもしてもらおうか。

出入り

秋天やテント居並ぶ文化祭

10月最後の日曜日。

町民ホール前にテントが林立している。
バザーかフリマかと思ったがどうやら違うようである。
町民文化祭で親子姿が目立つ。町内の幼稚園、保育園、学校あるいは町民グループの発表などで関係者も多いのだろう、広い駐車場の出入りも多い。
町特産の販売もあってテントも賑やかである。
穏やかな日曜日がゆっくりと暮れてゆく。

病み上がり

神経の尖る病余のマスクかな

今年の一月以来にお目にかかる。

菜園のオーナーさんが姿を見せなくなって10ヶ月。
病に伏しておられると聞いていたが、このほど外出の許可も出たようでご挨拶にみえた。長い闘病で少しやつれた風に見えたのは、深い帽子に特殊なマスクをしておられるせいかもしれない。
声も抑え気味で、会話の距離もいくぶん保つようにしておられるのは、まだ完全に回復されたわけではなさそうである。雑菌に触れるのを避けるようにしておられるのだが、免疫低下などを心配されているのであろうか。いずれにしてもこれからは近くの散歩など体力回復に努められている様子である。
健康なときにはそれこそ毎日畑に出てこられて、草刈や力仕事などはご主人がサポート役に徹しておられたが、不在中はご主人がひとりでこなすものの、いろいろな種を蒔いたり苗を育てたりという細かい仕事は苦手のようで、同時に育てる種類はせいぜい三つか四つくらい。あんなにたくさん売るほど作ってどうするのだろうかと思うくらい作付けの半分をネギが占めていたりするが、おそらくほとんどを人にお裾分けすることになるのだろう。
あれこれとご主人に指示しながらせっせとお孫さんたちに送る野菜の菜園ライフを楽しむ姿が見られるのは何時になるのだろうか。