空が明るくなった

白南風や飛行機雲のとどまらず
白南風の窓の茜に暮れなずむ

空がいっぺんに明るくなった。

南風が強くて、カーテンを巻き上げている。
雲も真っ白なのが、高いところのものはゆっくり、低いものはどんどん南から北へ流れてゆく。
飛行機雲が割り込んだと思ったら、すぐに太い雲になり他の雲と見分けがつかなくなった。
入道雲でさえ今日は形無し。たちまち形を崩されて浮き雲と化すくらいだ。

暑さといい」、空の明るさといい、実質的に梅雨明けだろう。

夕空は大変美しい茜雲となった。

黄に染まる

黄菅野をなぞるリフトのときに揺れ
リゾートのリフトを借りて黄菅野に
黄菅野へ高原リフト上り来る
黄菅野に一ト日費やす旅程かな

こう暑いと涼しい景色を思い浮かべるのが一番。

盆休みに、猛暑の諏訪から上がった車山高原、霧ヶ峰の爽快感も忘れがたいが、ゲレンデが黄菅野と化した霧降高原も色を伴った記憶として懐かしい。

那須に別荘を構えるI君は今頃黄に染まっているだろうか。

補)リフトは平成22年に廃止されたそうです。遊歩道と天空回廊と呼ばれる1,445段の階段を散策しろということらしいです。

憂気を払う

暑気払昨日誘はれ今日誘ふ
とりあへずジョッキ傾け暑気払

地上の喧噪をよそに屋上のビール。

梅雨明けともなれば10日は暑い日が続く。
定時で仕事を終えてもなかなかまっすぐ帰る気分ではない。
毎日誰かが誘い、みんな抵抗のないまま暑気払いと称して繰り出す。

そんなサラリーマン時代の思い出。風でもあれば別だが、冷房とてないビルの屋上は飲めば飲むほど汗が体にまとわりつく。
しょうもない話に終始し、割り勘で勘定を済ませては散会。
気分的には暑気ならぬ憂気払いであろうか。

小坊主

ふくれっ面すぐに崩れし雲の峰

二階の書斎に上がったら、吉野の上に積乱雲が立ち上っている。

時期的には梅雨明けも間近だが、台風の影響もあってかなかなか明けそうにはない。
今日は予報を裏切って久しぶりの梅雨の晴れ間となり、気温も急上昇。家の中にいても30度超、湿度75%とあっては老骨がついてゆけない。
積乱雲だって本格的な夏の準備が整っていないのか、大きく高くはなれないで、餅が焼けてきてふっくら膨らんできたような可愛い姿だ。同じ入道雲でも小坊主であるようだ。しばらく眺めていると、まもなくその膨らみは相好を崩すかのようにしぼんでしまって、崩れた雲はどんどん西の方へ流れてゆく。

三つの大型台風の行方が気になる。梅雨明けは台風が去ったあとだろうか。それとも、その間にまた台風が生まれて雨に悩まされるのだろうか。

湿度90%

梅雨じめりして座敷箒のだるき

今日も降ったり止んだり。

湿度が異常に高い。
湿度計を見ると85%くらい。
フローリングの室内を歩けば、スリッパがペタペタ言う。
こんなときは和室に逃げ込んで少しでも不快感から脱げ出したくなる。残念なことに、最近の家の壁は特別注文しない限り洋室と同じく石膏ボードの上に壁紙を貼っただけで、乾湿の調整をよくするという漆喰壁ではないのがこういうときつくづく残念に思う。
それでも、板張りにくらべて畳はよく湿り気を吸ってくれるらしく、湿度90%のなか寝転んでも不快感がないのは救われる。

かつてシルクロード

梅雨雲の暗峠颪めく

降ったり止んだりの日が続く。

生駒山はたいして高くもない山だがまわりにもそれ以上高い山がないので、しばしば生駒山を境に天気の様子が異なることが分かるときがある。たとえば、生駒山を吹く風はたいていが大阪の方からで、とくに時雨のときなどが顕著だが雨雲や雪雲は決まって大阪の方からやってくる。そのとき時雨雲が生駒を越えるさまがよく観察でき、今頃はどの辺りが降っているのか、あるいはいつ頃こっちに降りそうかなどがよく分かるのだ。
昨日などは夕方になって梅雨の雨が上がり、生駒頂上の何本かあるテレビ塔が全部はっきり見えるのに、生駒山系の鞍部が一段低くなった暗峠の辺りを低い雲が大阪からせり上がるように流れてきては滑り落ちてくる。さながら暗颪が雲状となった形で、峠の辺りだけがまだ雨に降られている。この雲のスライドしてゆくさまはショーとしても十分楽しめる光景であった。

この暗峠は古代より生駒を越えて大和と難波と結ぶ重要な峠で、今も立派な国道である。ただあまりに勾配がきつく狭いので酷道とも言われ、自転車の激坂チャレンジの舞台として知る人ぞ知るコースになっている。
南へいくと十三峠、これは業平が高安の女のもとに通ったとして知られるが、幹線ではない。ストレートの近道だから利用したにすぎないのである。
幹線という視点で言うとあとは竜田越であろうか。ほかにもいくつかの峠があるが所謂シルクロードではない。

蓮取り行事

心経を捧げ蓮華の池となす

今日七夕は大和高田市で大変珍しい行事がある。

奈良県の無形民俗文化財にも指定された奥田の蓮取り行事のことだが、詳しくはサイトを見ていただくとして、一言で言うと吉野金峯山寺の蓮華会に供される蓮を、開祖である役小角の生誕地とされる地で摘み取る行事である。

蓮華会の供華摘むを見し蓮の池

なんと言っても圧巻は、この奥田という地区に住む人たちの手で大切に育てられてきた蓮の見事さである。雨が大変だったので写真には撮ってきてないので紹介できないのは残念だが、30メートルX40メートルくらいの一画に今まで見たことのないほどの花や蕾の数。

供華にせんと刈りて蓮のあまりある

その数おそらく千をはるかに超え万に届くかという見事な蓮池の中に、法螺を吹き鳴らしつつ吉野の行者が舟で分け入って108本の蓮花を摘むのである。

蓮花はこの日金峯山寺に献じられたのち、さらに大峰頂上にまで届けられるそうな。
スケールの大きく、古式もゆかしい行事の一端に触れ、梅雨の雨にそぼ濡れるのもしばし忘れるほどだった。