関西花の寺十八番

木漏れさす秋日の像の風化せる
石仏の径に木漏れる秋日かな
露けしや閼伽井の小屋のかたぶきて

今日、明日と台風の影響で雨だというので、昨日奈良市白毫寺に行ってきた。

白毫寺の石仏の路 秋日がやさしい

志貴皇子の別邸跡を寺としたと伝えられているが、はっきりとした確証は得られていない。
ただ、ここも鎌倉時代に叡尊が再建した真言律宗の寺の一つで、本尊の阿弥陀如来坐像をはじめ多くの重文の仏像があるほか、境内には多くの石仏が点在し、本堂奥の「石仏の路」といわれる径には癒やされる思いだ。
春日山の南、高円山の麓の小高いところにあり、西側によく開けているので奈良盆地が一望できる景勝地である。大社から新薬師寺、そして白毫寺へと続く道は山辺の道にもなっていて人気コースである。

花の寺としても知られ、関西花の寺二十五ヵ所の第十八番として春には天然記念物の「五色椿」と秋の萩が有名だ。
お寺自身のホームページはないようなので関西花の寺のサイトを紹介しておこう。詳しくは、WIKIのページのほうがよさそうであるが。

またの名を金糸草

水引の糸のもつるることもなく

半日陰でよく育つ野草である。

水引の花

根元の方からすうっと細い糸のような枝をのばし、小さな赤い花をいっぱいつける。何本も伸びているのにちっとも絡まないのは、まるで糊のきいた糸のようでもあり、相当腰の強い枝でもあるんだろうと思われる。

暑い秋

看取る人看取らるる人秋簾

今年の9月は涼しい。

母が亡くなったのは2年前の10月だったが、いよいよ最後の覚悟を決めた9月はずっと暑く、ベッドのある部屋のエアコンを十分効かせていたはずなのに病人はしきりにそれを訴えるのであった。

見えない川

水澄めりもはや木橋もなきあたり

飛鳥川というのは意外に深いV字の谷を形成している。

しかも川幅が極くせまいので、川の姿がようやく見えてくるのが飛鳥板葺宮のあたりだ。ここまでくるともう深い谷の形成はなく普通の小さな川になるのであるが。

その深い谷となっているあたりに稲渕の棚田があり、すぐ下流には天智が皇太子の時住まいしたと言われる稲渕宮跡、つづいて石舞台脇へ流れていく。
いずれも川の近くを歩いて、確かめるようにしないと覗きみることはできない。飛鳥へ行かれるときは石舞台まで行かれたら、ぜひこのあたりまで足を伸ばしていただくと別の魅力を感じることができるだろう。

飛鳥もなかなか広くて一日で歩き回ることはできないが、私は飛鳥でも素朴な風景を見せるこのあたりが一番好きだ。

棚田風景

落し水向かふところの谷深し

今日は彼岸の入り。

明日香村稲渕の棚田と彼岸花

お寺まで行った帰りにまた飛鳥へ足を伸ばす。
先週に比べ彼岸花の開花がすすみ各所に散っている。とくに稲渕の棚田では村あげての彼岸花まつり、案山子コンテストも行われているとあって大変な人出だ。
一部の田では水を落とし始めていて、水口からあふれた水は深く切れ込んだ飛鳥川にむけて一目散に下ってゆく。早ければ今月末頃から稲刈りが始まるのではないだろうか。

醉い醒めて

酔芙蓉紅の初めを手かざしに
酔芙蓉よべの名残を玉に巻き

再び酔芙蓉である。
八重咲の酔芙蓉
花のピークは9月中旬から10月初めころだろうか。彼岸花と重なるようだが、それよりは花の期間が長いようだ。

朝のうちはそれとは分かりにくいが、さすがに昼頃になると花弁のうらなど目立たない部分がうっすら紅をさしたようになっていて、醉いが回り始めていることが分かる。
花弁の裏から酔い始めた酔芙蓉
一日花と言われるがすぐに落花してしまうわけではないので、翌日はその名残も楽しむことができる。終わったものは花弁をねじるように巻き付け、最後は玉を結ぶように巻いてしまい、落ちるときのポトッという感じが椿の落花に似ているところだ。
名残の酔芙蓉

太陽の高さ

彼岸花日の影著く引きにけり

曼珠沙華が咲き始めた。

別名「彼岸花」とはよく言ったもので、9月半ばから末頃まで実りの秋を彩るコントラストがすばらしい。
気がついてみると太陽の高さも随分低くなって、日の影も尾を引くようになり秋のおとずれを教えている。

天気予報では、当地の日没がいよいよ6時より早まって、釣瓶落としの感を深くする時期になったようである。