肩過ぐる丈にひとむら薄生ゆ
今日も在原神社の話。
この神社の「ひとむら薄」とは謡曲「井筒」の地謡、
名ばかりハ
在原寺の跡古りて 在原寺の跡古りて
松も老いたる塚の草
これこそそれよ亡き跡の
一叢ずゝきの穂に出づるハ
いつの名殘なるらん
草茫々として露深々と古塚乃
まことなるかないにしへの
跡なつかしき氣色かな 跡なつかしき氣色かな
に謡われる「一叢ずすき」からとられたもので、業平の魂があらわれたものだと解釈されるが、いっぽうでこの節からは相当以前からこの寺が荒れていたことが想像できる。
実際今植えられている薄は背が高く、まるで葦にまがえるほどだが、正真正銘薄でこの時期ようよう穂を出しはじめていた。
句意は全くの言葉遊びで、
筒井筒井筒にかけしまろが丈過ぎにけらしな妹見ざるまに
くらべこし振り分け髪も肩過ぎぬ君ならずしてたれか上ぐべき
をもじったにすぎないのであるが。