棚田風景

落し水向かふところの谷深し

今日は彼岸の入り。

明日香村稲渕の棚田と彼岸花

お寺まで行った帰りにまた飛鳥へ足を伸ばす。
先週に比べ彼岸花の開花がすすみ各所に散っている。とくに稲渕の棚田では村あげての彼岸花まつり、案山子コンテストも行われているとあって大変な人出だ。
一部の田では水を落とし始めていて、水口からあふれた水は深く切れ込んだ飛鳥川にむけて一目散に下ってゆく。早ければ今月末頃から稲刈りが始まるのではないだろうか。

醉い醒めて

酔芙蓉紅の初めを手かざしに
酔芙蓉よべの名残を玉に巻き

再び酔芙蓉である。
八重咲の酔芙蓉
花のピークは9月中旬から10月初めころだろうか。彼岸花と重なるようだが、それよりは花の期間が長いようだ。

朝のうちはそれとは分かりにくいが、さすがに昼頃になると花弁のうらなど目立たない部分がうっすら紅をさしたようになっていて、醉いが回り始めていることが分かる。
花弁の裏から酔い始めた酔芙蓉
一日花と言われるがすぐに落花してしまうわけではないので、翌日はその名残も楽しむことができる。終わったものは花弁をねじるように巻き付け、最後は玉を結ぶように巻いてしまい、落ちるときのポトッという感じが椿の落花に似ているところだ。
名残の酔芙蓉

太陽の高さ

彼岸花日の影著く引きにけり

曼珠沙華が咲き始めた。

別名「彼岸花」とはよく言ったもので、9月半ばから末頃まで実りの秋を彩るコントラストがすばらしい。
気がついてみると太陽の高さも随分低くなって、日の影も尾を引くようになり秋のおとずれを教えている。

天気予報では、当地の日没がいよいよ6時より早まって、釣瓶落としの感を深くする時期になったようである。

瑞雲

鰯雲きょうという日の瑞兆なれ

朝起きたら空気が澄んでいた。

上空を見ると鰯雲がゆっくり広がってきている。瑞雲というものがあるそうだが、そんな大げさなことではなく、心がゆったり洗われるようないい眺めだ。

昨日は手術を憂いていたのに、一夜明ければ瑞兆だと喜ぶ。なんとも心の持ちようが軽すぎると思いつつ。

一年点検

入院の日取り定まり秋愁ひ

術後1年点検の日取りが決まった。

念のための検査と聞いていたので簡単な検査かなと思ってたら、なんと2泊3日の入院検査であるという。今度も手首よりカテーテルを挿入して心臓血管までたどり、造影剤を流しては血流が滞っている部分がないかどうか調べるそうである。
もしも、そのとき新たな縊れや詰まりが見つかると、即座にステント挿入という手術が行われ、入院はさらに1,2日延びるとも。

いやはや、前回は点滴のための静脈確保のとき大変痛い目に遭っているので、今度こそは上手な人にやってもらいたいと願うばかりである。

そう言えば,今日の血液検査は今までに経験のないくらい痛みを感じない、それはそれは見事な腕で、注射というものがこんなに楽であれば子供たちだって泣くことはなくどんなにいいことだろう。

里の秋

竹林の高みに鵙の標を宣る

秋が来たんだとしみじみ思った。

稲淵の棚田を歩いていたら、突然鵙が鳴きだしたのだ。飛鳥川の縁にかかる竹林の一番高いところに止まって、高々と縄張り宣言しているようだ。
鵙の声というのは、ドラマでもそうだが里の秋を表現するには一番効果的のように思う。

鵙はひとしきり鳴いて、また縄張りのどこかに飛び去った。

秋の仏壇

銅の閼伽にこぼるる供華の萩

庭の萩が今年は見事なものだから、どうかとは思ったが仏壇に供えてみた。

今朝扉を開けるとやはりいくつかの花弁がこぼれていて、お水にもこぼれそれがうまい具合に水に浮いているのだった。
白い花弁と閼伽の器とを対比させたらおもしろかろうと詠んでみた。