高塀に石榴しだるる公舎かな
今月のまほろば句会は登大路の「吉城園」。
南大門前を流れてきた吉城川をはさんで、名園二つ。「依水園」と「吉城園」だが、吉城園は県営で65歳以上は入園無料である。30人も押しかけて誰も入園料を払わぬという、園にとっては災難の客。
元は興福寺の塔頭の一つであったらしいが、その後個人のものとなったり、企業の迎賓施設として使われたりしただけに、大正時代の手作りガラスをはめ込んだ広縁のある豪勢な座敷や離れの大きな茶会ができそうな茶室があるほか、池の庭、苔の庭、茶花の庭が築山などによってうまく配置された立派な庭園である。
広い庭園だけに、季題だらけで他に探す必要もなく、二時間はいただろうか。
いくつか詠めたが、やっぱり植物を詠むのはむずかしいものだとつくづく思わされた一日であった。
掲句は、公園の隣にある県知事公舎のそばを通ったときに見かけた光景。色のコントラストを強調する「白塀」にするか、高さを強調する「高塀」にするか迷ったが、石榴の古木を想像させるにはやはり「高塀」のほうが相応しいと思ったので。