桜ふくらむ

野遊の体型似たる親娘かな
野遊のシャトルに風のいたずらす

平日というのに駐車場がいっぱいである。

今朝は遅霜が降りて冷え込んだが、天気がいいこともあって日中はぽかぽかの陽気となったせいか、休校の子供たちを連れて母親や爺婆などお父さんをのぞいたファミリーがいつもの公園にどっと繰り出してきた。
芝生広場ではめいめいにボールやらシャトルやらフライイングディスクなどでくつろいだ光景がまぶしい。
園のあちこちには薄い紅が灯ってどうやら早い桜が咲き出したようだ。染井吉野はかなり芽がふくらんできて、明日から暖かさが戻るというからいつ開花してもおかしくない。
桜の名所は宴会禁止だそうだが、地方では気にせず花見できそうなところは至る所にある。それなりの花見をすればいいじゃないか。

豊かなものがたり

巳神のとぐろと見ゆる山笑ふ

ご神体の山は蛇がとぐろを巻いている形であるとも言われている。

三輪山には古事記に「大物主大神と活玉依姫(いくたまよりひめ)の恋物語」で、姫のところに夜な夜な訪ねてくる若者の衣に糸をつけて後をつけると三輪山の大物主大神だったとか、日本書紀に「大物主神の妻・迹迹日百襲姫(やまとととびももそひめ)」が夜しか顔を見せない大物主神に顔を見たいと言うと、決して驚いてはいけないという条件で姫の櫛箱に入っていることを打ち明けるが姫をこれを開けて悲鳴を上げると大物主神は三輪山へ帰ってしまった。姫をこれを恥じて陰を箸でついて死んだ、など多くの逸話が伝わっている。
このあたりは、三輪山の神語りにあるので、ご覧になると他にも美酒つくり、杉玉など、古代の深層に連なる豊かな物語があることが分かる。

多様な生きもの

茎立の黄色鋤込むトラクター

春耕の季節。

山奥に美しい畑が現れる。
土地に特有の野性種が咲いて一面の花畑。これが種になる頃トラクターで鋤かれて肥料になり、次の作物が育つ。
花は虫を呼び、さまざまな生きものの糧となる豊かな自然。
そういうサイクルが繰り返されて、その土地の風土を形成してゆく。

朝食

一連の目刺値をはる名産地

目刺しも秋刀魚も鯖も出世したものだ。

乱獲がたたったのであろうか漁獲高も落ちて、市場へ行けば昔なら信じられないような値で売られている。しかもどことなく貧弱で立派なのが少ないのだ。
スーパーで売られている浅蜊も蜆も身が薄い。産地も遙か遠くなって地元産というものにはお目にかかれないし、複雑な流通の過程ですっかり痩せてしまっている。ぷっくらと太ったいいものはあるところにはあるのだろうが、当地のスーパーでは望むべくもない。
観光地などでは、へたな魚より値のはる目刺しなどあって、その昔大きな発泡スチロール入りのを山ほど買ってきて全部食べるのに往生したことに比べて隔世の感ありだ。藁を通しただけの素朴で一連の鰯など、ポリで包装されたものよりずっと高いなんてこともあって驚く。
朝食がパンとなって目刺しから遠ざかった食生活で、飲み屋でくらいしか食べる機会が限られてきたのがいいのかどうか。

肩すかし

お目当ての鳥待つ池に亀の鳴く

明日からまた寒さが戻ってくるというが、今日は馬鹿陽気だった。

カワセミが周遊するというので池の四阿で待っていたが、なかなかやってこず生欠伸ばかりが誘われる。
小一時間ばかりぼうっと過ごしたが結局肩すかしに終わった。
今日は地元出身徳勝龍が金星。先場所の神がかった勝ち方といい、初白星が金星とは、また何か「持っている」お相撲さんかもしれない。

日課

店庭の梁に古巣の商家かな

そろそろかなと待っているのだがまだのようである。

つばめを待っている古巣を見つけた。
ここは県内の古民家を集めて開放してしている公園だ。
国中の商家の土間、つまり戸をくぐってすぐの、言わば店として商品を並べたり客と対面する区画の梁に毎年燕がやって来て巣を営む。昼間は戸を開けているので燕君たちは出入り自由になっていて、ここで子育てをするのである。
茅葺きの古商家に燕が出入りする光景を想像してほしい。
見ているだけで心和むので、この公園へ来ると必ず立ち寄る好きな場所だ。
今月中には来てくれるのではないかと、朝起きたら空を眺める毎日である。

復興五輪どこ行った

閖上のこの日虹かけ春時雨

忘れられないこの日、その時刻現地に虹がかかったという。

あれから九年。
東日本沿岸部の映像を見るたび、復興の道は遠すぎると痛感する。