珍しい鳥

日時計のぢりと進むよ日向ぼこ

寒い風を避けて日だまりの広場で握り飯を頬張る。

広場の日時計はしっかり作られていて文字盤に影もくっきりと伸びている。冬至の翌日とあって影の長さは盤をらくに越えている。その指す位置は、さっき正午の放送があったばかりなのに、いくらか南中というか中心を過ぎていて、やはり子午線の明石よりも東にある所為なのかと思ったりする。
二つ目のおかか入りのを食べていると、近くの木に珍しい鳥が止まった。双眼鏡でのぞいてみると今までに見たことのない、全体に緑がかった、ホオジロくらいの大きさだ。ずいぶん長い間観察できたが、どうみてもアオジではなさそうだ。
さいわい、今日は日本野鳥の会の人たちが探鳥会をやっているはずなので、しばらくここで体をあたためてから、尋ねてみるのがいいと思った。
しかし、写真に撮れてなく、あれこれ言葉で伝えようと頑張ってみたが、私の情報だけでは何とも分からないと首をひねるばかりだ。家で検索してみると、どうやらノジコではないかと推察。ただ、レッドブックによると準絶滅危惧種だというし、夏の渡りの鳥でたまに残るのがいるらしいが、いまだに真偽のほどは不明である。

醸成

さきがけの臘梅の香に引き寄さる

冷たい風の中につんと刺激する香り。

臘梅が咲き始めたようだ。
ほとんどの芽はまんまるのままだが、一本の木に2、3粒程度開いている。
久しぶりに馬見丘陵を広く歩いたが、おかげでいろいろな句材があって詠みごたえある一日。
いろんな水鳥もいたうえ、斑鳩町のシンボルであるイカル君たちの群れにも遭遇したし、久しぶりにカワセミも見つけて寒い池も苦にならない。
目を上空に転じると猛禽、たぶんチョウゲンボウがかすめ飛んだり、高い木の天辺から風に散らされた木の葉が吹雪のように遠くに流れていったり、足下から身の回りすべてに材料が転がっている。
これらの感触を時間をかけて醸成すれば何とか句にはなりそうである。

火の用心

遠火事の容易ならざる煙かな

サイレンが街に響く。

何度も何度も響くので、相当の数の緊急車が出動しているようである。
気になって外へ出てみると、果たせるかな、火事である。
それも、かなりの距離があるのに真っ黒な煙が二上山を越えるかと思えるくらいの高さに昇っている。
この黒さは住宅の燃えるようなものではなく、なにか工業的な建物、施設に異変があったような感じである。
つい、何日か前の一年前に糸魚川で大火があった。
火の始末、気をつけなければ。

みぃちゃんの渡世

猫なりに適ふ場所ある冬至かな
野良なりに冬至の渡世ありにけり
野良なりに居場所ありける冬至かな

明日は冬至。

みぃちゃんが朝一番に日向ぼっこすると決めている場所になかなか日が届かない。
ビニール温室の屋根がいいらしい。ここは風も弱く、何より朝一番に日が当たるし、温室が温まりはじめると重量でお盆のようにくぼんだ部分が心地いいらしく一時間ほどはまったりできる場所だ。ビニールは昨年一年も保たず破れたので、今年は中に厚めのビニールを敷いて補強。多少居心地に不満があるようだが、それにも慣れてきたようである。
ここんところ家と家のすきまから届く日もしばらくは弱く、なかなかくるくるに寝まる体勢になれないようだ。これから三か月みぃちゃんに試練の日がつづく。

みぃちゃんのご機嫌

寝返りて乳房見す猫冬日向

警戒心を解くにゃん。

目と鼻の先の日向で猫が何度も何度もごろんごろんと腹をみせながらくつろいでいる。
天気もよくて暖かく、猫はご機嫌のようである。
この時期は冬毛に覆われて実際は乳房など見えないはずだが、時期がもう少し進めば孕み猫ならそれとはっきりと分かるくらいになっているだろう。

築地場外

年の市大和野菜に人集り
折り込みのチラシ片手に年の市

あと一週間もすれば店先には正月用品が並ぶようになる。

折り込みチラシの内容もがらっと変わって年末ムード満載。
飾りものはめっきり少なくなったが、海産物、水産物などは海外で獲れたものも加わって賑やかに。
いよいよ押し詰まってくると、築地場外、アメ横の人集りがニュースになる。インバウンドの賑わいも手伝って、通りはいつもに増して押し合いへし合いが予想される。
当地はそこまでのような景色はないが、年の瀬の雰囲気はそれなりにあるものだ。

それにしても、市場が豊洲に移転したとして、場外のお店はいったいどうなるのだろうか。変わらずにいて欲しいものだが。

庶民の口

寄鍋に遅れし人へ蟹の爪
寄鍋の衆みな眼鏡かけしまま
寄鍋の世話する人の赤襷
寄鍋の酒も尽きたる饂飩かな

空はいつからか雪催い。

昼間から灯りをつけて炬燵から出られない。
こんな日は鍋にかぎるというところだが、今年はやたら鍋の出番が多い気がする。
ただ、葉ものが高くて毎日とはいかないらしい。
蛤に蟹など魚介たっぷりの寄せ鍋もいいが、これも自宅でとなると相当ぜいたくな部に入りそうである。
鍋と言っても、せいぜい水炊き、牡蠣鍋くらいが庶民の口に合いそうだ。
さいわい今年は広島の牡蠣がことのほかうまい。奈良のような山ぐにでも新鮮なものが食えるのはありがたいことである。