救い

まほろばの空の不穏や秋黴雨

いつものようにたかをくくっていた。

雨雲が盆地の南方に進んできたのは分かっていたが、いつものように逸れるだろうという読みが完全に外れて逃げ遅れてしまったのだ。あと一鍬、あと一鍬と思いつつ苗床を均していたところ、急に風が出て逃げる間もなく大粒の雨が全身をたたく。
鍬やらレーキやら畑に打ち捨て這々の体で原付にしがみついたが、急に暗くなったこともあって前がよく見えない。たちまち下着までずぶ濡れで帰るなりシャワーに一直線。
かろうじて最後の西瓜を持ち帰れたのはせめてもの救いか。

程度の問題

晴れたるを厄日の雨となりにけり

かあっと照ったと思ったら突然の大降りとなったり。

台風11号が前線を刺激した影響で広範囲に各地に雨雲がかかっている。
ときに雷鳴が混じり、激しい雨音におどろかされたり、そうかと思うと強い日差しが突然さしてきたり。
今は秋冬野菜の苗作り真っ只中なので、あれこれ気をもむばかり。
渇水よりは雨があったほうがもちろんいいのだが、それも程度の問題である。大きな風水害の少ない盆地だが、用心にこしたことはないだろう。

進路

畔豆の莢のおさなや稲の花

明日九月一日は二百十日にあたる。

台風、野分の風などが多いとされるいわゆる厄日である。
この時期と花期が重ならないよう早稲、晩稲を植えるなど工夫がされているが、当盆地は昔通りの農暦のようで今が花盛りである。
おりしも11号台風が沖縄先島諸島を襲っている。
今後の進路は大変複雑で近畿を襲うかどうかまだ不明だが、お百姓さんたちは行方に目をこらしているに違いない。

新語

身ほとりのものみな軽し風台風

台風11号は小型ながら強力だという。

東から西へ水温の高い海域を横切るように進行しているのでみるみる発達し、風速70メートルの予報。裕次郎も真っ青な速度である。
沖縄あたりで一気に進路を北にとる予報なので、本土にも相当な影響がでるのではなかろうか。
九月と言えば台風の季節。過去にもいくつもの台風が日本を襲った。
近年は気候の激甚化が著しく、台風や集中豪雨などで耳慣れない用語をいくつも聞かされた。線状降雨帯、深層崩壊、バックウォーター、などなどどれも耳新しい言葉である。
これ以上新災害が増えないことを祈るのみである。

ニンニク煮

真鰯を生姜もろとも囓りけり
一週間をかず鰯ののぼる卓

盆地ながらいい鰯が入ることもあるらしい。

今晩のメニューがまたもや鰯の煮たものだったので、鰯がつづくわけを聞いたら理由は簡単。鮮度がよかったからだと。
違いと言えば、今日はいつもの生姜煮にニンニクの欠片がのっかっていること。これを鰯に乗っけたままかじると意外にうまい。いつもより臭みもとれているように感じる。
これからは秋刀魚の季節でもあるが漁獲高が先細りするなか、鰯には昔のまま手に入りやすいものであってほしい。

身近

大陸の空気深々秋の肺

大陸性高気圧が来るからからりとするというのが予報。

蓋を開けてみればなんのことはない。ちっとも晴れないは、空気はじめっとしてるは。
天気を当て込んで予定した仕事に手をつける気がしない。すっかり暑さにいじけてしまった体が言うことを聞かないのだ。
来週は早くも秋雨前線が停滞するという予想なので、それまでにやるべきことは多いのだが何ごともお天気次第という暮らしになれてしまった身としてはそれも止むなし。
菜園仲間の長老がしばらくお顔を見せないなと思っていたら、なんと盆の集まりでコロナに感染されて10日ほど自宅療養されていたと聞いた。御年からすると無事生還されたのはまことに不幸中の幸い。どんどんコロナが身近に迫ってきている現実に恐怖すら覚えるのである。

繰越?

打ち止めの大玉ずんと地区花火
地区花火果てて各戸の拍手かな
ブラタモリさなか始まる地区花火

ブラタモリの境港・米子編を興味深く視ていたら町の花火が始まった。

いつもあっさり終わってしまうので、テレビを気にしつつ窓の外を伺っていたらいっときの連発があり、その後は間遠になったので終わったかと思ったがしばらくしたらまた上がりはじめた。結局いつもの年の二倍か三倍の時間、十五分か二十分くらい続いたろうか。
その間何度かの連発もあり、腹にずんとくる大玉もある。
7月だとばかり勘違いしていたのだろうか、今年は夏休みの最終土曜に行われたことになる。コロナ禍で久しぶりの花火かも知れず、それで特別に予算を繰り越して小さな町としては豪華な夜になったのかもしれない。
打ち止めの一発があって、各戸から拍手が湧いた。
風呂上がりの家人は外に出るのを遠慮して窓からのぞいていたようだ。
子供たちのいい思い出になった夜であった。