感触

蛞蝓にふれし指先いとひけり

箱をもった瞬間ひんやりしたものに触れた。

ぬめっとした感触はかたつむりのものである。
すぐに洗い流したが、その気味悪さはなかなか去らなかった。

来年も

飽きもせで来る日くる日の豆の飯

どの皿にも豆がはいっている。

この時期だからエンドウ豆だが、はじめてチャレンジしたわりには豊作で、食べても食べても減らないというくらい。
豆飯はもちろん、サラダにも肉料理にも甘い豆がたっぷり入って来年もまた作らねばと思う。

目論見

晩酌のあてのつもりの豆を植う

「おろす」とも言う。

一般的には「蒔く」である。
何の話かと言えば「種」のことである。
花の種に用いることは聞かないので野菜の種にかぎられるようである。
カボチャは広い畝が必要と昨日書いたが、素人菜園、それも猫の額の庭につくったものならばもう少し有効に使いたい。ということで、カボチャの隣の畝にトウモロコシをおろした。背の高いものなら畝に侵入されても問題ないからである。ついでにトウモロコシと枝豆も相性がいいらしいので枝豆もちゃっかり。
この畝は今年たてたばかりで土も出来上がってないので、土深く根を張るトウモロコシと土に窒素をためこむ豆類で改善しようという目論見である。
雨を見越して種をおろしたが、午後はしっかり降ってくれているので一安心。あとは発芽を待つばかり。

誘惑

瓜苗のつかまり立ちのつる伸ばす

キュウリ苗、カボチャ苗ともに老化が始まっている。

双葉が黄色くなってきたのがそのサイン。
ようやく畝の準備が整った今日、無事に土におろして一息ついたところだ。
カボチャは一昨年だったか、親戚からもらったのがやたらうまくて調べたら「宿儺南瓜(すくなかぼちゃ)」という品種らしい。そこで種を取り寄せて苗作りから始めたのだが、なかなかいい苗に仕上がってくれた。
糸瓜のような形をしていて、ずっしりと重い。岐阜県で昔からつくられてきて今や高価なブランド野菜である。種は門外不出だから種苗会社が育てたものしか手に入らない。
難点は育てるのが難しく実がたくさん生らないらしい。
カボチャは四方に蔓を伸ばすので広い場所が必要だから、ほかの野菜を犠牲にしてでも食べてみたい誘惑には勝てない。キュウリが庭の隅っこで小さくなっている。

弾んで転ぶ

青梅の固き音して落ちにけり

麦わら帽がうっかり触れた。

そしたら若い梅の実がことりと落ちた。
ちょっと弾んで転がった。

いい汗

汗かいて風ここちよき五月かな

飲んでも飲んでも喉が渇く。

小一時間動いただけで額から汗が流れる。
風があるうえ、空気が乾いているからいいようなものだが、これが間もなくじめじめとしたこの国特有の夏がやってくるとこんな暢気なことを言ってられない。
いまのうちに精々いい汗をかいておきたい。
季語重なりは承知の句となった。

割り箸で

青棘のまだやはらかき柚子の花

甘酸っぱい匂いが鼻をついた。

青虫である。
揚羽蝶はじめいろいろな蝶がきては柚子や山椒に卵を産みつけてゆく。気がつけばあの数の子のような黄色い卵を摘むようにしているが、やはりもれはあるもので頭をふって愛嬌をふりまくまで成長したのを見るとつぶすにはしのびなくなる。
そこで実をつけたり来年の結果枝になりそうもない枝を選んではお移りいただく。割り箸でつまむとふたたび強烈な甘酸っぱいあの匂い。どうしているかと今日見てみたがすでに羽化したのかどうか姿を確認できなかった。
ついでに、柚子の棘は固くなると剪定とか実を採るとき痛い目にあうので、今年伸びたのを柔らかいうちに摘んでおくことにした。