八十八夜、夏近し

不織布を敷いて真白き苗代田

八十八夜だそうである。

夏のイメージだけど春の季語。立夏まではほんの数日だ。
調べたけどなぜ「夜」がつくのか、よく分からなかった。
旧暦と新暦を換算することなく、単に立春からの経過日数をいうわけだから分かりやすい雑歴といえるかもしれない。
通常なら五月二日ないし三日のところ、今年は閏なので五月一日になるそうである。なるほど、なるほど。
茶摘みのほかに、田の仕事も忙しくなる時期である。

久しぶりに散歩を兼ねて郵便局へ行ったときのこと。いつも苗代が切られる一角が遠目にも白くて、何だろうかと近づいたら白い不織布で畝を覆っていた。そのうえに鳥除けのテープがキラキラしている。
このあたりの田植は夏至頃だから、こんなに早く種まきをするとは思えないのだが、やっぱり播種を待つているのだろうか。

雑巾にもならない

祝日に国会開き花は葉に

「花は葉に」という季語は比較的新しいそうである。

ホトトギス歳時記にはない。
角川の合本歳時記昭和59年版にもないということだから、平成の季語ということもできるかもしれない。
「葉桜」の傍題として扱われるようだが、「葉桜」は文字通り桜若葉のみずみずしさをいうのに対し、「花は葉に」は誰もが分かるように「うつろい」を詠むものである。
実はとっくに葉桜の季節が来ていて「桜若葉」も色を濃くする季節なのだが、政府のあまりにも緩慢なコロナ対策に業を煮やす思いでこの季語を使ってみた。
このコロナ禍に対するには、連休に入るので政治も休みというわけにはいかない。緊急事態宣言の終了か延期か、医療崩壊をいかに防ぐか、店を閉じなくてはならなかった自営業者、アルバイト口を失った学生やフリーランス、非正規労働の人たち、自己表現の場が失われた文化芸能、アーティストなどの暮らしをどうつなげるのか、新学期になっても学校に通えない児童や生徒たちに授業や指導などにいかに手をさしのべるのか。
小さすぎて雑巾にもならないアベノマスクより、助けてくださいと叫んでる人たちへ、血の通う施策というものを早急に見せてください。お願いします。

晩春の平群谷

農帽の婆紫雲英田に何しやる

平群谷はいよいよ春闌けて、暮の春の趣を濃くしている。

放棄田も目立つが、なかには一面紫雲英の絨毯を敷いたような田もあって、車からも目が奪われそうになる。
つと目にとめたシーンに、紫雲英の田にうずくまっている農婦があった。
子供は一人として見なかったが、農婆は紫雲英を摘んで花輪にするわけでもないだろうし、いったい何をしていたのだろうか、答が得られないまま今も気になって仕方がない。

痕跡隠し

台湾より加油いただく暮の春

BS1とEテレは最近面白い。

今日の夕方、BS1で台湾よりのReal Voice of taiwanという番組を見た。
台北のベッドタウンらしいが人が大勢通りを歩いていて、街なかにおいたマイクに「最近困ること」を勝手にしゃべってゆく番組だった。「駅ピアノ」とか「空港ピアノ」という番組も面白いが、これはさしずめ「街マイク」という感じだろうか。
日本にもかつてあった「街頭録音」のようにアナウンサーが声を拾うのではなく、マイクを見つけた通行人がぶらりマイクに向かって不満をぶつけてゆく。
学生が大学制度の問題を語り、マイホーム志向が強い台湾人からすると住宅価格が高騰して買えないこと、商人が家賃が高いとこぼす。親子が日本のディズニーランドへ行きたいがコロナ禍で我慢している、日本も早くコロナが収まるといいね。
内容からするとコビッド19を克服して街遊びを楽しんでいる今の台湾の様子だということに彼我の差を感じて驚いてしまう。
韓国もコロナ危機を脱したというし、収束の見通しがますます遠いこの国のリーダーたちの無能に加えて、ようやく明かしたマスク取り扱い商社が不正痕跡そのものを示すペーパーカンパニーだとか、未だにオンライン授業の手がかりすらつかめない教育の現状といい、政治以外にももろもろのシステムが完全に機能不全に陥っていることを晒してるわけで、つくづくこの国は失われた20年間以降も後退に次ぐ後退の一途をたどってきて、なにもかも三流国に陥ってしまっているのだ。

街の年齢

花水木新興街の熟れてきて

花水木がまぶしい。

大きく育った街路樹であればあるほど、街の成熟がすすみご多分にもれず高齢化が進んでいるようだ。
街路樹に用いられる樹木としては新しいほうで、花の姿もさることながら樹形も均整がとれているので近年人気となって新興地などでは珍しくなくなった。だから、花水木の成熟度をみればその住宅地の歴史も分かるということだ。

ぱっと炎上

再放送ばかり流れて花は葉に

そろそろ檜花粉も終盤。

本来ならマスクも不要になるころだが、今年ばかりはそうはいかない。
もともと花粉用に買っておいたマスクがこれほど貴重になるとは思いもしなかった春である。
在庫も尽きてきそうだけど簡単には手に入らないらしい。
アベノマスクなど論外で、誰がぱっと消えますよと言ったかしらないが、それこそ「冗談はよしこさん」にしてほしい。まったく困ったことだ。

散歩コースも

耕人のなすべきなして春ゆける

久しぶりに用があるので平群谷を訪れた。

山の桜は葉になり、入れ替わるように藤がうっすら紫を帯びてきたようである。
平群川には大きな鯉幟が強い風に負けず悠揚と泳いでいる。
世の中新コロナウィルスで騒々しいなかでも、気のせいか年々その数を増しているような気がする。
当県でも緊急事態宣言でようやく重い腰を上げ営業自粛を公表したようである。
そのあおりで、散歩コースの県営公園の駐車場が明日から閉鎖だというニュース。ここは行楽地の少ない当県にあって入場料も駐車料も無料とあって、この時期家族連れで大変好評なのだが、いよいよコロナの余波はここまでおよんだかという感を強くする。