神杉の渓に傾げて霧深し
屋久島杉など、およそ大杉というのは、どんな斜面でも普通直立しているものだ。
ところが、ここ丹生川上神社の千年杉は社前の丹生川に向かって傾いているのだ。
光の向きや、脊山からの風向きなどの影響かと思われるが、30メートル以上はあろうかという大杉が、まるでピサの斜塔のように真っ直ぐなまま傾いている光景はちょっと他に見ない。
奥吉野の水が豊富な場所であり、雨でも降ればさぞ幻想的なシーンに生まれ変わりそうだが、罔像女を祭神とするだけに、朝霧などであたりが白く烟るといっそう神さびた趣に包まれることだろう。