威風堂々

大和棟辺りを払ひ鯉幟

学園前というのは奈良でも一二を争う高級住宅街。

帝塚山大学が駅の南にあり、その周囲に伸びている住宅街である。
電車からは豪壮な家が立ち並ぶのが見えるが、近代的な住宅街にこれぞ大和棟という立派なお屋敷があることに今さら気づいた。折しも、屋敷に負けないような大きな鯉幟が泳いでいる。
構えは大和の伝統的な古民家風であるが、比較的新しい建築だから家の中は意外にモダンなのかもしれないが、まわりは今風の住宅ばかりであり、異彩を放っている。

袋角はおとなしい?

袋角鹿の子模様のうっすらと

奈良の鹿は相変わらず観光客に大人気。

ちょうどこの時期袋角が出始めて二段目までを形成中。なかには二段目の先が分岐し始めて三叉になりそうなのもあって、最低でも4才と分かる。聞くところによると、鹿の角の分岐は四叉までだそうで、そうなると5才以上の証明となるらしい。
なかには、まだ幼い袋角で、体側をみるとどことなく鹿の子模様が残っていそうなものもいた。
袋角の時期の鹿は、秋の繁殖期に比べると心なしかおとなしいような気がする。体をぽんぽんとたたいてみても何の反応もない。煎餅を持つひとを追う仕草もどこかのんびりとしているようだった。
ただ、袋角を触わられるのはさすがに嫌がるみたいで、するりと逃げられてしまった。

100時間/月?

メーデーの列を落伍の銀座かな

ハイキングにでも来たような気分と言おうか。

そんな人たちが多くを占めるようになって、家族連れで参加する人は多い。
私はと言えば、員数合わせの動員をかけられて参加したものの、生来のノンポリ派だから、シュプレヒコールという前時代的なものや、あのメーデー歌に始まる胡散臭さには馴染めずに、式典が終わって都心の行進に出たのを幸いにこっそり抜け出したのだ。
のちに、労組専従役員となって先導する立場になっても、恒例の祭だからと言って割り切ることはできず仕舞いで、どうしてもあの行事には馴染むことができなかった。
今は、労働組合もずいぶんおとなしくなって、月100時間までの残業ならかまわないとするらしい。これは、月に四回休日出勤して32時間、毎日残業3Hして66時間、そういう働き方になる。
それでなくても、正規雇用、つまり労働組合に守られているはずの人々がおかしいと思わないのがどうかしている。

いつかリターン

行春の乗らぬバイクを診たりけり

素晴らしいマフラー音。

お向かいさんから大型バイクが引き出されて、今日もエンジンを回しているようだ。
子供さんが小さいうちは乗らないと決めたかのように、ただ調子を見るだけに終始すること月に一二度ほどあろうか。
このように、多くのライダーにとってツーリングというのは子供さんから手が離れるまでは我慢を強いられるのが普通だ。
50才くらいになってから再びハンドルを持つのを「リターンライダー」と呼んで、大型バイクの需要はそこそこあるようだ。

夏の籾まき

水を引く手筈整ひ苗代田

田植えの遅い地域だけど、苗代田の準備だけは万端整っている。

水口を囲むように、田の2,3坪ほどの部分に見事な畦塗りがほどこしてあり、畝も平らに均されている。いつでも籾を蒔ける状態なのだが、この地区の水は山の水を溜めた池から一斉に放たれるまで水は来ない。いつになったら蒔くのかと興味あるのだが、毎日通りかかるわけでもないので、気がついたら苗が育っていたという風である。
6月中旬田植から逆算すると、播種は5月も下旬というところだろうか。
苗代というのは歳時記に採録されているのは春だから、相当遅いと言える。

竹取の里より

名の知れぬ古墳すっぽり竹の秋

見るからに古墳と分かる丘である。

その丘全体が竹に覆われていて、どれも黄金色、いわゆる竹の秋である。
盆地にはこんな光景がどこでも見られ、とくに盆地周縁部に多い。
人手も入らぬままと見えて、茂り放題というものがおおかたで、林というより藪というのが似合う。ちゃんと手を入れてやれば、今頃が美味しい筍がいっぱい獲れるだろうに惜しいことだ。

くしくも、定例の句会では句友で孟宗の竹林主が何本もクルマに載せてみんなに大盤振る舞い。盆地には竹取物語ゆかりという里がいくつかあって、そのうちの一つからの到来物だ。
いただいてきたのは家の鍋には入りきれないほどの大きなもので、これが数本あるのでしばらくは筍料理が続きそう。これを書いているうちにも筍をゆがく香しい匂いが立ちこめてきて、いよいよ腹が減った感が増す。

ベビーブーム

建売の軒という軒つばくらめ
鎌使ふ背に聞こゆるつばくらめ

どうやら、雛が孵ったらしい。

親鳥が巣の近くに来ると、いちだんと賑やかな声が聞こえてくる。今が燕のベビーブーム第一波らしい。あと、一二度繰り返しては初秋に帰ってゆくのだろう。
そう言えば、今朝隣の空き地に雲雀の番が遊んでいた。何日か前に、雲雀たちがよく降りる、数軒離れた畑にシャベルカーが入って工事が始まったので、もういなくなるのかとがっかりしていたので嬉しい光景だ。もともと住宅街の真ん中に雲雀が出没すること自体無理があるので、いずれ頭の上で揚げひばりの声を聞くことは望めないとは思うが。