鎮魂花火大会

花火師の影の浮かべる艀かな
開くたび海上染める花火かな
大花火果てて覚悟の渋滞へ

海の上から軌跡を描いて火の柱が登ってゆく。

太平洋の真上に大花火が浮かぶ。
歴史のある熊野鎮魂花火大会である。
昭和30年代の頃は、七里御浜の砂利浜に寝そべってゆっくり見たものだが、今は遠く名古屋、大阪方面からも見物客が押し寄せ、あの狭い町に20万人が集中するらしい。毎年8月17日と決まっているが、浜の予約席は早くから埋まってしまって、当日気楽に見物しようなどと思ったらひどい渋滞でたどりつくのさえ難しいという。

この六月に亡くなった同級生のF君は熊野出身、この日初盆の精霊供養の花火が上がるかもしれない。

夜の秋

二人して朝のうつつのちちろかな

朝方夢うつつのなかでコオロギの涼しい声を聞いた。

妻もまた同じ鳴き声を聞いたらしく、朝の最初の言葉が「鳴いてたね」。
夜、風呂に入っても涼しいコオロギの声が聞こえてきた。

こんな佳句がありました。

一心に鳴くこほろぎと一つ風呂 眞下喜太郞

昔の木桶の風呂を思い起こします。
芭蕉の親不知子不知の句「一家に遊女も寝たり萩と月」を思い浮かべますが、これを真似て、

一家に枕並べてちちろ聞く

昼はいつ終わるかと分からない熱波だが、夜は徐々に秋の色を見せ始めている。

地球の裏側の祭典

広島忌地球の裏は大狂宴
広島忌五輪で埋まる新聞紙

オリンピックを観るというのは、好きな野球チームを応援するのに似ている。

贔屓のチームが勝てばニュースなど何度見ても嬉しいが、そうでないときはあまり見る気がしない。
五輪とて、強い競技でメダルの可能性がある場合ならいくらか感心があるが、それでも何時に行われるかも分からないものまで意識的に観戦しようという気持ちは起きない。
だいたいがスポーツにはそれほど熱狂するほど好きというわけではないので、結果だけ聞けば十分という感じだ。

チームまたは選手がたまにいい結果を出して、大きく取り上げられるとよくやったなと思うが、期待が大きい種目に限って裏切られることも多いので醒めてみているところがある。
というのは、オリンピックにはときに思いがけないスターが誕生したりしてとんでもない記録が出たりするので、前回がよかったからと言って今度もいい成績をとれる保証はないからである。

ともあれ、素晴らしい記録が出れば何処の国の選手であろうと素直に喜びたいと思う。

ところで、今日は多治見で39度超。ヒートアイランドがますます進む四年後の八月東京で五輪って正気の沙汰ではないと思うが。

追補)掲句は一昨日のコメント欄で披露したものです。

毎日が日曜日

年休の余すことなく夏果てぬ

今日が立秋だそうである。

それにしてもえらく暑い秋である。
大阪、京都、関西は灼熱地獄。
若い人たちはこの暑さをものともしないで、海へ山へ。
年休などいくつあっても足りないくらいやりたいことは山ほどあろうか。

毎日が日曜日の人間には、年金が有給制度みたいなものだろうか。

人にしかできないこと

どの国の子供みな無辜原爆忌

理不尽な暴力の前に、いつの時代も犠牲になるのは子供。

地球上から人が殺し合うのがなくなるのは夢なんだろうか。
日本社会にも「不寛容」な気分が今ほど高ぶっている時代はないのではないか。
動物ではなく人にしかできないこと。学び、欲望にとらわれない心を養うことしかないと思うのだが。
脳幹ではなく、大脳が耕されることが大事なのである。

待ち焦がれる

休刊の朝の無聊や秋を待つ

朝刊を取りに行ったが、郵便受けには何も入ってない。

この日が休刊であることをすっかり忘れているのだ。
世間が週休二日制に慣れ親しんでしまっているのに、この業界は今も律儀に新聞の宅配を続けてくれている。たまに休刊日があって当然なのである。
なのにである。
やはり、毎日当たり前のようになっている新聞がないとなると、手持ちぶさたに身を持て余してしまうような感じだ。
仕方なく周りに目をやれば、どことなく朝が涼しくなっている。そう言えば,昨日初めて蜩を聞いたな。
もう秋はそこまで来ているんだろう。

実際には、高校野球の熱の冷める頃でないと朝夕に秋を実感することはないのであるが。

雨雲レーダーアプリ

稲妻に近づきつある家路かな

このところ三日連続で夕立がある。

最初に夕立があった日に、雨雲が近づくと警告を発してくれるアプリがあるとのことで、yahoo無料アプリをインストールしたらその後二日連続で予測は見事に当たった。
昨日も、夕方に外出の予定があって、いつもなら二階の窓は熱を逃がすためいくぶん開けておくのだが、雨雲レーダーではしばらくすると雨だというので、しっかり戸締まりして出かけた。案の定用事が済んで帰路についたら、前方の生駒、平群の方面でしきりに稲妻が走っている。信貴山辺りは雲もなさそうなので、この分では家の辺りは大丈夫かと思っていたのだが、何と家に100メートルもない処まできたら大粒の雨がウィンドウを叩くではないか。
車を駐車場に入れて駆け込むようにして家に飛び込んだが、またたく間にしっかり濡れてしまった。
インストールしたアプリはなかなか優れもののようだ。