春障子学芸員の声洩れて
障子の中では古代雛の展示が行われている。
法華寺では、歴代門跡の雛人形が公開中だ。
普段非公開の座敷は広く、明かりは乏しく障子からのものに依存しているので、それほど明るくはない。柔らかい光が人形の表情に陰影を与えて、雅な印象を深める。
何か聞きたいことがあれば、縁側に正座した学芸員とおぼしき人に聞けばいい。
ここでも、雛の調度が特徴的で、ほかには幼い庵主のために用意されたとおぼしき人形や遊び道具なども展示されていて、普段うかがえない尼寺の暮らしをかいまみることができる。
溜息をついたのち、外に出れば庭園は椿が咲き誇り、囀りが絶えない。
敷地が広いこともあって外からの雑音も届かず、見学の余韻に浸りながらの散策にはちょうどいい。