閘門の水の引く間の春寒し
「隅田川」と言えばやはり桜だろう。
これを水上から眺めたらどんな風に見えるだろうか。
昔から有力な交通手段として水上バスが利用されてきたが、最近では観光が目的の水上バス、いわゆる運河クルージングが人気と聞く。
納涼船は古くからあるが、いまでは四季・昼夜を問わずお台場を巡るツアー、スカイツリーを巡るツアー、隅田川にかかる橋を巡るコース、などなどいろいろあるようだ。
この運河クルージングで一度体験してみたいものに「閘門」がある。これは、言わばパナマ運河のようなもので、交差する川の高低差を調節するものである。東京では「扇橋水門」が有名である。なんでも、高度成長時代の地下水汲み上げによって、地盤沈下が著しい江東デルタ地帯の洪水を防ぐため、川を掘り下げたので、隅田川や荒川と行き交う船の便宜をはかる必要が生じ、水位調節するゲートを設けたのだそうだ。
大阪にも「毛間閘門」と呼ばれるものがある。これは明治後期に完成したもので大先輩。こちらは、淀川の水を逃がして市内の洪水を防ぐのが目的のもの。何年か前の吟行コースにもなったところ。
東西奇しくも昔から水運によって発展した歴史をもつが、それは取りも直さず氾濫・洪水に立ち向かう必要に迫られ、知恵の限りを尽くした戦いの歴史でもあったろう。
花の時期にはまだ遠く、隅田川の風はまだまだ寒いことだろう。