半夏生庵主の住まひ給へりて
半夏生尼寺の壁に映えにけり
半夏生葉先の化粧(けわい)残したる
今日は夏至から11日目、半夏生である。
同名の草花・半夏生を調べてみると奈良県では準絶滅危惧種に指定されているとのこと。
三重県境の御杖村の棚田を利用した岡田の谷の半夏生園という景観資産があるが、いかんせん遠いので近くでないか調べると、果たして奈良市内の興福院(こんぶいん)という尼寺の門前にあるという。早速訪ねてみると今がちょうど盛りで、白い穂が伸びて小さな花をつけている。この花を有名にしたのは、どちらかと言えばこの花よりも葉で、上から数枚の表面が根元からだんだん白く変色してついには前面真っ白になることから「化粧花」とも呼ばれる。
すぐ近くにはいっこうに鳴き止まない鶯、そして半夏生の群れが尼寺の白壁と相呼応しているかのようだった。
7,8月は興福院は非公開で門は閉ざされていて鶯の他は何も聞こえない静寂の中にあるが、門前の池には立ち入ることができる。
もうずいぶんな人が見物に来たと見えて、池の周囲は草の踏みしだかれた跡がおびただしい。中には足許に注意を払わなかった人もいたらしく、踏まれたのであろう捩花があわれな姿をさらしていた。