束の間の平穏なりし夏の蝶
田植えが終わった田に静寂が戻った。
蝶がきたかと思うと、シオカラトンボものんびり飛んでくる。
暑い暑い夏に向けてやることといえば雑草取りくらいで、暫くはこの里で人の姿を見ることは少ないだろう。
(写真)田の奥にある白いビニールハウスで苺「飛鳥ルビー改古都香(ことか)」が生産される。前に書いたが、これは大きくて抜群に甘い。奥中央が斑鳩神社。そのすぐ右横がカイツブリの池だ。

めざせ5000句。1年365句として15年。。。
青鷺のけだるく田の辺に降りにけり
大和盆地のカイツブリはすでに書いたが、青鷺もまたよく見ることが多い。
へたすると大鷺よりも数は多いのかもしれない。
あの洒落た藍灰色をした翼を広げた舞い姿というのは実に粋でダンディでいつ見てもほれぼれする。
マイファームの数段上の田がお気に入りらしく、必ず数羽(多分ファミリー)できては優雅に舞い降りるのだが、たまには降りずにそのまま悠然と滑空している時もある。そんなときはいかにもけだるげに見えるのだが、もしかすると若鳥の調教中かもしれない。
息子たち巣立ちひとりの田植かな
大雨が去った今日は徐々に天気も回復してきた。
周りの田は大方田植えも済んでいるというのに、誰も手伝う人がいないのだろうか、老人ひとりが泥田のなかで重い田植機と格闘していた。
息子や娘たちが都会に出て、田を守るのは今はもう老夫婦だけの毎日なんだろう。
この姿は自分にも重なって見え、今も妙に残像がちらつく。
ガソリンを満タンの朝夏至る
台風の影響で大雨が心配だったが、母親の退院を見届けに帰郷した。
名阪国道は天理と亀山を結ぶ自動車専用道路であるが高速道でも優良道でもない。
大半を伊賀盆地を東西に横切る道でほとんどを山地に囲まれて走ることになる。
この時期は緑が大変美しいシーズンで走っていても気持ちいいものがあるが、雨ともなるとさすがにアップダウンの多い道では気を遣うもので句のことなどを考える余裕はない。
来週初めには今後の治療について担当医と話し合う必要があり、これからも帰郷の頻度は高くなりそうだ。
水藻編むだけのはかなき浮巣かな
斑鳩の里には大小の溜め池が多く、子育てのためだろうか巣作りで大わらわのカイツブリの夫婦が見られる。
ただ、見ていていかにも不安定なのは、水面に漂う藻をしきりに編んでは巣を作ろうとしているのだが、巣の上や左右をおおうものとてなく360度丸裸同然なのである。これでは、カラスなんぞに襲われたらひとたまりもなさそうなのである。
それに浮き巣自体が藻だけではとても卵をあたためる床などできようもなく、この夫婦はどうやら経験が浅い夫婦ではなかろうかと思うのである。
鳰の浮き巣と言って、彼らの巣は大水が出たりするとすぐに壊されたり流されたりするのでもろい、はかないものの象徴、たとえに用いられるが、なるほど当たっていると思う。
ただ、流されても壊されても懲りずに何度でも作り直す習性があるようで、先週は隣の池で枝のような浮遊物にすがって巣作りしていたカップルがいたが今はもういないところを見ると、あれは今日見たカップルなのではないかと思われる。
しばらくは観察を続けようと思う。