つきあう

自転車を曳く影ふたつ春の宵

仕事を終えて駅に向かうのだろう。

一人は原付バイクを押し、ひとりはその横で並んで話しながら家の前を通り過ぎてゆく。
下りの坂だからできることで、これが平坦な道ならば原付バイクを押すことはきつい。
原付バイクは二人乗りできないから、徒歩で通うひとに途中まで付き合っているのである。坂の上には大きな病院や老人施設などがあり比較的若い人がよく通る。
ようやく夜の厳しさがぬけてきた春ともなると、徒歩に付き合うのも苦ではなくなったのである。

遭遇

春闌けて着たきり雀どこへでも

ジェットコースターのような気温差。

いまだ冬とも春ともつかぬ格好で毎日を過ごしている。
断熱の効いた室内と室外との落差も大きく、今日のように外気温が20度を超えても室内はひんやりしたままである。服装は室内用が基本だから、たとえ夏日になろうといまだ春先のような上下に身を固めているので、ごみ出しでご近所の方と顔を合わせるのも恥ずかしくなる。
今日木曜日は燃えるゴミの日だから、どの家庭からもゴミが出る日で案の定お二人と鉢合わせ。天気がいいので町長さんも早朝の庭の草むしりのシーンに遭遇。いやはや。

春行くも

抜け道へつづくたんぽぽ誘導灯

踏み固まれた径の両側に蒲公英が群れている。

道なき原に自然にできた径である。
近道として近隣の人が踏み固めたと思われる。
まるで、滑走路の誘導灯のようである。
在来タンポポは早くも姿を消したが、西洋タンポポはたくましいので夏にかけても咲き続けるのである。春惜しむ感傷はとうてい生まれてはこない。

気まぐれ

春の雷惰眠の床に落ちにけり

一昨日だったか睡眠中の真上に雷があった。

びっくりするくらいの大きな音だったが、その後はぱったりと止んでそれっきり。
たいした雨も降らせずずいぶん気まぐれな雷もあるもので、それが春の雷というものかもしれない。
眠りの途中だからすぐに戻れたのだが、朝になっても腹に来る一発の記憶は残っていた。
当地では今夜からあすにかけて雷予報がでている。どうか眠りをじゃましないようお願いします。

先取り

春陰や目詰りの如雨露もてあます

曇かつ寒い日であった。

ときどきはお日様が顔を出すのではと期待していたが。結局一日中北西風が吹いてようやく厚着からおさらばした肉体が震える。
明日は昼から雨、ゴールデンウィークも雨の連続らしい。
GW並の暖かさ、暑さをすでにいただいているので文句は言えないが、当てが外れそうな人の嘆きも聞こえそうである。ただ、連休を先取りして今は東北の長旅を続けている、当ブログにコメントをいただく渓山さんの高笑いは止まらないだろう。

柔らかい

約束の筍とどくチャイムかな

チャイムが鳴ったので自治会費の集金かと思いきや。

恒例の生駒山地の筍である。
聞けば、年々収穫が不安定になっているらしいが、今年も辛うじて収穫できたもののうちから何本かいただいた。ありがたいことである。家人曰く、掘りたての筍は包丁がさくっと入るということである。
さっそく今晩のメニューは筍ご飯に、筍入り春巻き。畑のサラダ玉ねぎも口に溶けるように柔らかい。

窓枠

矮犬の主人したがへ春疾風

風の強い一日だった。

夕方窓を閉めようとしたら、窓枠に土埃が厚く積もっている。しまったと思った。
そう言えば、黄砂もあるとか言ってたような。うっかりしていた。
目がちょっと飛びだしたような小さな犬がリードを長く引いていたが、今日みたいな日は土埃が舞い上がってさぞ困ったのではないか。それでも元気よく先導していたのでとくに困らなかったのか。