芯の強さ

ほつほつと白砂の庭の桔梗かな

庭の白砂がまぶしい。

京都・廬山寺の源氏庭の白浜に浮かぶ島には桔梗が植えられていて、7月から9月までおよそ3か月という長い期間咲き続けるようだ。
桔梗というのは蕾が徐々に風船のようにふくらんでは弾け、青紫の花弁を広げるところが面白い。次から次へと蕾が育つので、毎日のように新しく風船がひらいては目を楽しませてくれる。
花自体にははなやかさから遠いが、直立した桔梗が風にもしなやかに揺れているのを眺めていると、あらためて桔梗の芯の強さというものを感じることができる。

酔い痴れる

介抱に及ばず候酔芙蓉
こんなにも痴れてしまうて酔芙蓉
酔芙蓉知るや知らずや明日のなき

橘寺の酔芙蓉

さながらに白磁玉杯花芙蓉
花芙蓉杯の底まで陰りなく

橘寺の芙蓉
牡丹と芙蓉、ともに花の女王であろう。

両者とも豪華という点では一致するが、芙蓉は一日花であるだけに、一瞬の輝き、陰りをも楽しめればなお趣は深いものがある。
今回は盛りにはまだ早いという時期に訪ねたので、その新鮮さはまた一入であった。掲載の白芙蓉の輝きを見てもらいたい。ちょうど正午頃だったと思うが、強い日差しに負けず花弁はまるで咲き始めたばかりのように瑞々しい。

橘寺

うつすらと実むらさきとはなりにけり
寄りあうて色づきあうて式部の実
実むらさき枝のもとよりあらわれぬ

色づき始めた紫式部の実
暑いのを理由に出不精になってしまっている。

気温は相変わらず33度くらいを指していて暑いことには変わりがないが、いくらか風が秋めいてきたので久しぶりに飛鳥へ行くことにした。
目当ては、少々早いかもと思うが芙蓉の花である。奈良で芙蓉と検索すると飛鳥寺とでてきたが、さらに酔芙蓉で検索すると今度は真っ先に橘寺と出てきた。橘寺は太子ゆかりの寺で生誕地ともされているが今まで行ったことがないので、まずは橘寺を目指すことにしよう。

西門から入るとすぐに目についたのが紅芙蓉だった。
橘寺の紅芙蓉
まだ咲き始めとみえ、境内にはほかに白芙蓉、酔芙蓉があるがほとんとが蕾すら見えない状態で、見頃にはまだ20日ほどあると思われた。
そんななかでお目当ての酔芙蓉はないかと尋ねまわって、やっと見つけたのが境内の奥だった。
橘寺の酔芙蓉
日が高いせいかまだそれほど紅くなってないが、花弁の底の方が心なしか酔いが回り始めたように見える。

時間はたっぷりあるので天武・持統天皇陵、稲渕の棚田をみたり、先ごろ四角いピラミッド型の珍しい古墳としてニュースとなった、蘇我稲目の墓ではないかという説もある都塚古墳、山田寺跡、飛鳥資料館にも立ち寄るなど、飛鳥三昧の一日である。
飛鳥というのは不思議な土地で、一度来てみたらまたすぐに来てみたくなる。
近いうちに時間をみてまた訪ねてみようと思う。今度は盛りの酔芙蓉、棚田の曼珠沙華などが見られればいいなと思う。

歳時記より

名水の他になしとて摂待す
百選の水がせめての門茶かな
手甲のままに門茶を受けにけり

今日も歳時記から。

ホトトギス歳時記によると「供養のため、仏家で門前に湯茶の用意をし、寺巡りの人および往来の人に振る舞うこと。門茶ともいう。陰暦七月初旬から二十四日ごろまで行われたものであるが、今ではほとんど見かけなくなった。湯茶の外に、塵紙や草鞋などの摂待もあり、剃刀摂待といって月代を剃る摂待もあったという。」
四国遍路の接待というのは有名だが、それとの関係はよく分からないが、かつての摂待の精神が今の遍路をもてなす摂待につながっているのかもしれない。

山深い寺あるいは集落で、めぼしい産物もないところではせめてもの百選に指定された名水が唯一の摂待として振る舞われている光景を想像してみた。

氣配

大根蒔く日和に適ふ氣配かな

大根というのは冬の季語。

同じく、「大根洗ふ」「大根漬ける」「大根引」「大根干す」も冬でゆたかな風情を添える季節の顔だ。一方、ときがたち茎だつと「大根の花」で春である。では、その大根の種をいつ蒔くかと言えば秋なのである。
もちろん春蒔き大根もあるが、大根は冬と決まっているので「大根蒔く」は初秋なのである。

歳時記によると、二百十日前後に蒔くもので現在の暦では8月20日から27日くらいになるそうである。今は前線が停滞して近畿・北陸・中部などでは大変な豪雨をもたらしているが、あと1週間もすれば蒔き時がやってくる。朝夕の氣配もだんだんそんな時候に適ってくればいいのだが。

香良洲特産

砂州の梨腕にずしんと宅配便

待ちかねていた梨が届いた。

伊勢湾の櫛田川河口にできた砂州の町・香良洲特産である。
銘柄は幸水。実は大きく、果汁も多くてたいへん甘い。
上流域は台風11号の随分の雨量で田畑が水没した土地も多いと聞くが、果樹園の被害はたいしたことはなかったのだろうか。

この香良洲の特産は他にもあって大変いい海苔が獲れるというのは案外知られていない。梨も海苔も毎夏、毎冬の義姉からの贈り物だ。

送り火

暮れてより風雨おさまり霊送

お盆最終日。

今日は里帰りした仏様たちがまたお帰りになる日。
送り火を焚いたり、そのもっとも大きなものが大文字焼き。
心配していた雨や風がやんだので門先で送り火をくゆらせることができる。