立退の決まりし垣の灸花
なんと可愛い花なんだろう。
ただ、その名を聞くだに目をそむけたくなるのが気の毒である。
「へくそかづら」。
枝や葉をさわると臭いからといって名付けられたそうだが、そういう性格だろうか、荒れ地に生いるイメージがあって俳徒からは数奇な目で見られる季題である。
平群町へ抜ける県道をよく使うのだが、大型は通行禁止の道路で両側には古い住宅地が迫っていて大変狭い。そのわりに交通量が多いので、随分長い時間をかけて拡幅される計画があるようで、ところどころ廃屋のまま、あるいは更地になったままで立ち退きを待つばかりの風情である。
そんな一区画の垣に白い花に紅い紅をさしたような灸花が垂れていたのであった。
