雨の国道

ガソリンを満タンの朝夏至る

台風の影響で大雨が心配だったが、母親の退院を見届けに帰郷した。

名阪国道は天理と亀山を結ぶ自動車専用道路であるが高速道でも優良道でもない。
大半を伊賀盆地を東西に横切る道でほとんどを山地に囲まれて走ることになる。
この時期は緑が大変美しいシーズンで走っていても気持ちいいものがあるが、雨ともなるとさすがにアップダウンの多い道では気を遣うもので句のことなどを考える余裕はない。

来週初めには今後の治療について担当医と話し合う必要があり、これからも帰郷の頻度は高くなりそうだ。

無防備な

水藻編むだけのはかなき浮巣かな

斑鳩の里には大小の溜め池が多く、子育てのためだろうか巣作りで大わらわのカイツブリの夫婦が見られる。

ただ、見ていていかにも不安定なのは、水面に漂う藻をしきりに編んでは巣を作ろうとしているのだが、巣の上や左右をおおうものとてなく360度丸裸同然なのである。これでは、カラスなんぞに襲われたらひとたまりもなさそうなのである。
それに浮き巣自体が藻だけではとても卵をあたためる床などできようもなく、この夫婦はどうやら経験が浅い夫婦ではなかろうかと思うのである。

鳰の浮き巣と言って、彼らの巣は大水が出たりするとすぐに壊されたり流されたりするのでもろい、はかないものの象徴、たとえに用いられるが、なるほど当たっていると思う。
ただ、流されても壊されても懲りずに何度でも作り直す習性があるようで、先週は隣の池で枝のような浮遊物にすがって巣作りしていたカップルがいたが今はもういないところを見ると、あれは今日見たカップルなのではないかと思われる。

しばらくは観察を続けようと思う。

台風銀座の復活

氾濫におののく去年の災禍かな

今日午後、台風4号が近畿地方を足早に駆け抜けていった。

スピードを上げてくれたおかげで、紀伊半島南部のひとたちもほっと胸をなで下ろしたことであろう。まことに昨年は災難の年であった。100年に一度あるかないかの出水で、前回は村を捨て北海道に新天地を求めた人たちがいた。新十津川町である。

すでに次の台風5号も発生しており、今年はなんだか台風が多い年になるような予感がする。去年の傷跡がまだ生々しい地区にとっては、永田町の混迷ぶりよりもずっと心労を煩わせる問題であろう。

本来の味を忘れてないか

形よりトマト臭さの好ましき

当地のトマトはうまい。

関東で売られているトマトというのは、どういうわけか色が浅いしトマト特有の匂いがまったくしないものばかりだ。
それに、囓っても固いし、水っぽい。だいいち種の部分が未発達で全然ジューシーでないのは僕にとってはトマトではないと断言したい。

それにひきかえ、当地のは噛むとすぐにトマト臭さが広がって、肉も軟らかく種のあたりの実に甘いこと。
関東にいるときはトマト入りのサラダを敬遠していたが、当地ではまずはトマトからである。

遠い記憶

蛍狩りあの日の母の若やぎて

今日は雨上がりで蒸し暑い日。

蛍が飛ぶ確率が高いというので、午後7時半から1時間ほどマイファーム近くで探してみました。
間違いなくいましたが、残念なことに数が少なすぎ。光も弱くて撮影には失敗です。
24mmf4 12sec. ISO800.
というデータのものに辛うじて1匹の軌跡が写っていましたが、拡大に耐えないできで再挑戦します。

写真を撮る間、どこの川だったがよく覚えていませんが昔家族で小さな川の土手を歩いた記憶が蘇ってきました。

小宇宙

薔薇三本卓上小さき世界かな

大雨が降るというので咲き始めの薔薇を庭から切ってきた。

益子か何処かの小さくて地味な花瓶に立てただけだが、色つやのいい葉とビロードのような花の組合せが妙にマッチしてしばし眺めるのだった。

小さな花

虫媒も西瓜の花は狭きかな

マイファームでは西瓜の蔓が随分伸びてきた。

西瓜というのは地面で育てるとかなり面積を食うので、先週管理人さんに手伝ってもらって西瓜棚を作った。ここに蔓を誘導するわけだが、ここにきて蔓もぐんぐんと生長のスピードをあげてきて小さな花がぽつぽつと咲くようになってきた。直径5ミリほど、すでに縞模様の実をもった雌花ももうすぐ開花しそうだ。

西瓜の花というのはたとえ大玉であろうが小玉と変わらずまことに小さなもので、虫媒となる蜂君一匹が潜るともうそれだけで余地がなくなるほどだ。それだけ花粉がいっぱい体につくわけで植物の受粉にとってこれほど効率がいいことはない。自然はまことにうまくできているもんだと思う。

聞けば農園近くでは蛍が舞うという。
今日からしばらくは雨予報で蛍が飛ぶチャンスがないが、無風でちょっと蒸し暑い夜が来たらそのときはカメラをもって駆けつけようと思う。